それから
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舞台袖からホールを見渡す。
咲の居る位置からだと小牧の姿が見えた。
各部署から無線に異常がないことを伝える定時報告が順に入ってくる。
副館長のSPをしている堂上と目を合わせ、頷き合う。
それから堂上が副館長に向き直った。
「館内異常ありません。」
副館長も頷く。
「始めよう。」
開演のブザーが鳴る。
辺りが薄暗くなり、司会が話し始めた。
無線に耳を澄ますが、異常を伝える報告は入ってこない。
咲と堂上はもう一度頷きあった。
「どうぞ。」
堂上が副館長に声をかけると、彼は微笑んで頷き登壇する。
会場から拍手が聞こえてくる。
「みなさん、こんにちは。」
相変わらずの爽やかな挨拶だが、咲はその声を聞きつつも辺りの様子に気を配り、無線の音声に集中する。
いつも通りの講演会だ。
だがまだ気を抜くのは早い。
堂上は見回りのため席をはずした。
次は30分後に舞台袖にくる予定だ。
副館長の話は進んで行く。
始まって20分ほどたった辺りだった。
「本館西出入口にて以前発見されたものと同様の手紙発見!
内容も同じで、銃殺してやる、とのこと!」
無線の内容にどきりとする。
(狙いは副館長?)
今日の主役を考えるとそうなるし、銃殺にこだわっているところを見ても濃厚だ。
しばらくしてまた無線が入った。
「中庭にも同様の手紙あり!」
誰を殺すとは書かれていないその手紙。
それでも嫌な予感は募る。
「3階のトイレにもありました!」
咲は携帯を手に取り、発信する。
慧の手がポケットに入り、呼び出し音が途切れた。
慧は耳にワイヤレスのイヤホンをつけており、緊急時には咲が連絡することになっていた。
「例の手紙と同様の手紙が、館内で3通発見されました。」
咲の言葉が確かに聞こえたのだろう。
慧はポケットから手を出し、それから親指をたてた。
講演会続行の意思だ。
「了解いたしました。」
咲はそう言うと、無線を手に取る。
「講演会は続行とのことです。」
慧は話を続けながら、ワイヤレスイヤホンに意識をやる。
事前に決めていた手信号を送ると、微かに溜息が聞こえた気がして、耳に呼吸がかかるような錯覚に陥る。
『了解いたしました。』
小さいがはっきりとした聞き取りやすい声が聞こえた。
『講演会は続行とのことです。』
無線に向けて話しているであろう声がする。
本気で自分を殺しに来る者は、予告状なんて出さない。
以前のように突然襲いかかってくるはずだ。
(以前咲が刺されたときのように。)
あとは部下達の働きを信用するのみ。
『必ず守ります。』
一言耳に残して切られた通話。
(君のそんなところが私を苦しめる。)
「結局何もなかったですね。」
山戸がため息混じりに言った。
聴衆が帰ったホールは広くがらんとしている。
「ただのいたずらにしたら質が悪い。
続行する副館長にも肝が冷えたが。」
土方も疲れた顔をしている。
彼の視線の先には、秘書課の課長と予定の調整をしている副館長の姿があった。
「本当ですね
一般人にはその心情は分かりかねます。」
山戸がうなずいたとき、ホールの入口に人が現れた。
咲と進藤だ。
「特に怪しい奴も見かけなかったらしいからなあ。
なんとも言いがたい。
監視カメラの方はどうだったんだ?」
「前回とは違った背格好の人物が映っていたので、犯人は複数人か、協力者がいるのではないかと。
また確認の上データをお渡しします。」
「ああ頼む。
引き続き特殊部隊(うち)の方でも警戒はしてみる。」
「よろしくお願いします。」
「おう。」
ぽんと頭を撫でる進藤の手を、ぽんと咲が払う。
一瞬あっけにとられてから、進藤は苦笑した。
「そっか、もう特殊部隊(うち)の部下じゃねぇもんな。」
その寂しげな様子に、咲は首を振る。
「というより、もういい年なのでやめてください。
恥ずかしい。」
そう言われた進藤の方は目を瞬かせてから嬉しそうに笑った。
「俺にとっちゃお前なんていつまでたってもがきんちょだ。」
そして今度は頭をかいぐるので、ぱしんと手を叩き落とされた。
「その認識改めてください!」
怒られているのにトムとジェリーのトムの様な笑い方をしながら進藤はホールから出ていく。
妙に親しげな二人の様子に見入っていた二人を咲が振り返り、恥ずかしそうに髪を整えた。
それから近づいてきてから目を反らしながら口早に言った。
「彼は私の叔父なんです。
いつまでも子ども扱いするので困っているんです。」
普段見られないその表情に、山戸と土方は楽しげに笑った。
「そうなんだ。」
「なるほどな。」
情報通の山戸はふと、進藤の姉の事を思い出していた。
(日野の悪夢・・・生残った赤ん坊がいたな・・・
ちょっと調べてみるか。)
個人的な興味
