それから
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「こんにちは。」
「こんにちは。
今日も朝早いですね。」
「妊娠中は規則正しい生活が良いと聞いたので。」
花が綻ぶような笑顔につられて笑顔になる。
最近開館時間になると千鶴をよく見かける。
何となくお互い挨拶をしているうちに、親しくなってしまった。
「そういえば、千鶴さんがお好きなシリーズの続き、入りましたよ。」
「本当ですか?
早く来て良かった!」
にこにこと笑う姿に、土方が取り置きでもしてあげたら良いのにと思ってしまう。
もちろん、本来身内のために取り置きなどしてはいけないのだが。
(気持ちだ気持ち。
こんな素敵な奥さんなのに!)
妻の存在をお首にも出さない彼には首をかしげてしまう。
「ではまた。」
「はい、また!」
咲は執務室に向かうため図書館の入り口で千鶴と別れる。
図書館の中に入る千鶴を見届け、咲は隣の建物の最上階を見上げた。
情報部の執務室があるその階の窓に、今日も人影が見えた気がした。
「おい。」
「はい。」
「来い。」
「はい。」
簡素なやり取りの後、土方の席の隣に立つ。
いつか呼ばれるだろうと思っていた。
「なぜ毎朝会っている?」
千鶴のことであるとすぐに分かった。
切れ長の瞳が睨みを効かせて、嘘は許さないと言っている。
彼は有能な上司で、情報部の一員としてそれは活躍している。
つまりは敵に回すと厄介なのだ。
そして彼は今、咲に疑念の目を向けている。
「何度か偶然お会いしてから、何となく流れでお会いするようになりました。」
「何となくだと?」
柳眉を寄せる上司に、なんの文句があるのかと咲も眉を寄せる。
(こちらには何ら問題はないはずだ。
千鶴さんから声をかけてくるくらいだから、嫌がられているわけでもないのだろうし。)
黙りこむ上司に首をかしげる。
「今日もお元気そうでしたよ。」
体調のことが気にかかっているのだろうかと言ってみるが。
「・・・そうか。」
体調が気になっているのではないらしい。
無愛想な彼を見ても、何が引っ掛かっているのかさっぱり分からない。
そんな咲をみて、土方は溜息をついた。
「お前に限って、ないか。」
「何がですか?」
「いや、何でもない。
次会った時に無理しないよう言っておいてくれ。」
咲はまた眉を寄せる。
「ご自分でお伝えになってはいかがですか。」
相手は咲の言葉を聞こえていないことにするようだ。
どうやらあくまで言葉にして伝える気持ちはないらしい。
(夫婦なんだから一緒に住んでいるだろうに・・・
ずいぶんとややこしい間に入ってしまったものだ・・・。)
深追いはするべきではないし、口を出すことではない上相手は上司だ。
咲は口をつぐみ、自席へ戻った。
「夫がそう言っていたんですか。」
どこか怒った様子の千鶴に咲は溜息をつく。
「あの、話聞きます。
解決しましょう。」
この板挟みはたまったもんじゃない。
上司の方は手がつけられないが、千鶴の方なら話を聞き出しやすそうだ。
「あの人いつもそうなんです。
私の事、職場では無視し通し。」
はぁ、とつくため息は深い。
「前の職場で、女性関係でもめたことがあって。
その時に私に危害が出たからか、図書館ではとにかく他人の振りをしろと言って聞かないんです。」
土方が咲と千鶴の関係を疑っていた理由はそこにあったのだろう。
自意識過剰もいいところだと言いたいところだが、あり得ないはなしではないから笑い事ではない。
(まるで手塚夫妻だな。
美男美女夫婦も大変だ。)
「でも私、そんなに弱くない。」
膨れ面をして見せる千鶴の愛らしさに咲はくすりと笑った。
「それに大事なことはいつも言わないの。
結論ばっかり言って相談はなし。
もうっ。」
ぷりぷりと怒る様子は怒っていても可愛らしく、土方が惚れ込む理由も納得だ。
こんなにかわいい奥さんが傷つけられてはたまらないだろう。
守られてばかりであることをいやがるところは、鞠江を思い出させた。
「愛されているんですね。」
「そうかもしれませんけれど・・・」
煮え切らない表情に咲は微笑む。
自分が土方でも同じようにしただろうなとぼんやりと思う。
多少他人の振りをするだけで避けられるリスクは当然避けたい。
相手がなんと言おうと、だ。
鞠江を見てもいつも思う。
(私とは立場が逆なんだ。)
「貴女の意思を聞くこともなく、守ることしか考えられないくらい、貴女が愛おしいんですよ。」
そう言うと千鶴はほんのり頬を染めた。
「でも・・・」
「私の友人も同じように守られるばかりじゃ嫌だと、渦中に飛び込んだ事があります。
今思えば肝が冷える話です。
ご無理なさるのは良くないでしょうね。」
咲は苦笑する。
「でも、あの人はどうなの?
黙ってばかりで、気になるもの!
あんなに綺麗な人と一緒に仕事をし・・・」
そこまで言ってから失言に気づいたのか、千鶴は慌てて口を閉じた。
「・・・もしかして長いストレートの髪の女性のことですか?」
思い当たるのは麻子ただ一人だ。
「だって・・・あまりにお似合いだからっ・・・」
今にも泣き出しそうな様子にこれは土方は罪深いと唸ってしまう。
「私彼女とは親しいんです。
かれこれ10年以上の付き合いで、彼女の旦那さんとも同じくらいの付き合いなんです。
職場恋愛で結婚されていて、同期でも抜きん出て良く出来る美男美女夫婦で有名なんですよ。
誰かが間に入る隙もないくらい。」
そう言うと千鶴は恥ずかしそうに俯いた。
「土方さんは私が千鶴さんとお会いしていることを知って、貴女を傷つけるんじゃないかと探りを入れてくるくらいです。
心配ないと思いますよ。」
そう言っても千鶴は俯いたままだった。
「でも・・・。」
咲は苦笑する。
「でも、と言いたいお気持ちはわかります。」
千鶴ほ顔をあげた。
「土方さんは近くにいるんです。
話してみてください。」
おもいとおもい
「こんにちは。
今日も朝早いですね。」
「妊娠中は規則正しい生活が良いと聞いたので。」
花が綻ぶような笑顔につられて笑顔になる。
最近開館時間になると千鶴をよく見かける。
何となくお互い挨拶をしているうちに、親しくなってしまった。
「そういえば、千鶴さんがお好きなシリーズの続き、入りましたよ。」
「本当ですか?
早く来て良かった!」
にこにこと笑う姿に、土方が取り置きでもしてあげたら良いのにと思ってしまう。
もちろん、本来身内のために取り置きなどしてはいけないのだが。
(気持ちだ気持ち。
こんな素敵な奥さんなのに!)
妻の存在をお首にも出さない彼には首をかしげてしまう。
「ではまた。」
「はい、また!」
咲は執務室に向かうため図書館の入り口で千鶴と別れる。
図書館の中に入る千鶴を見届け、咲は隣の建物の最上階を見上げた。
情報部の執務室があるその階の窓に、今日も人影が見えた気がした。
「おい。」
「はい。」
「来い。」
「はい。」
簡素なやり取りの後、土方の席の隣に立つ。
いつか呼ばれるだろうと思っていた。
「なぜ毎朝会っている?」
千鶴のことであるとすぐに分かった。
切れ長の瞳が睨みを効かせて、嘘は許さないと言っている。
彼は有能な上司で、情報部の一員としてそれは活躍している。
つまりは敵に回すと厄介なのだ。
そして彼は今、咲に疑念の目を向けている。
「何度か偶然お会いしてから、何となく流れでお会いするようになりました。」
「何となくだと?」
柳眉を寄せる上司に、なんの文句があるのかと咲も眉を寄せる。
(こちらには何ら問題はないはずだ。
千鶴さんから声をかけてくるくらいだから、嫌がられているわけでもないのだろうし。)
黙りこむ上司に首をかしげる。
「今日もお元気そうでしたよ。」
体調のことが気にかかっているのだろうかと言ってみるが。
「・・・そうか。」
体調が気になっているのではないらしい。
無愛想な彼を見ても、何が引っ掛かっているのかさっぱり分からない。
そんな咲をみて、土方は溜息をついた。
「お前に限って、ないか。」
「何がですか?」
「いや、何でもない。
次会った時に無理しないよう言っておいてくれ。」
咲はまた眉を寄せる。
「ご自分でお伝えになってはいかがですか。」
相手は咲の言葉を聞こえていないことにするようだ。
どうやらあくまで言葉にして伝える気持ちはないらしい。
(夫婦なんだから一緒に住んでいるだろうに・・・
ずいぶんとややこしい間に入ってしまったものだ・・・。)
深追いはするべきではないし、口を出すことではない上相手は上司だ。
咲は口をつぐみ、自席へ戻った。
「夫がそう言っていたんですか。」
どこか怒った様子の千鶴に咲は溜息をつく。
「あの、話聞きます。
解決しましょう。」
この板挟みはたまったもんじゃない。
上司の方は手がつけられないが、千鶴の方なら話を聞き出しやすそうだ。
「あの人いつもそうなんです。
私の事、職場では無視し通し。」
はぁ、とつくため息は深い。
「前の職場で、女性関係でもめたことがあって。
その時に私に危害が出たからか、図書館ではとにかく他人の振りをしろと言って聞かないんです。」
土方が咲と千鶴の関係を疑っていた理由はそこにあったのだろう。
自意識過剰もいいところだと言いたいところだが、あり得ないはなしではないから笑い事ではない。
(まるで手塚夫妻だな。
美男美女夫婦も大変だ。)
「でも私、そんなに弱くない。」
膨れ面をして見せる千鶴の愛らしさに咲はくすりと笑った。
「それに大事なことはいつも言わないの。
結論ばっかり言って相談はなし。
もうっ。」
ぷりぷりと怒る様子は怒っていても可愛らしく、土方が惚れ込む理由も納得だ。
こんなにかわいい奥さんが傷つけられてはたまらないだろう。
守られてばかりであることをいやがるところは、鞠江を思い出させた。
「愛されているんですね。」
「そうかもしれませんけれど・・・」
煮え切らない表情に咲は微笑む。
自分が土方でも同じようにしただろうなとぼんやりと思う。
多少他人の振りをするだけで避けられるリスクは当然避けたい。
相手がなんと言おうと、だ。
鞠江を見てもいつも思う。
(私とは立場が逆なんだ。)
「貴女の意思を聞くこともなく、守ることしか考えられないくらい、貴女が愛おしいんですよ。」
そう言うと千鶴はほんのり頬を染めた。
「でも・・・」
「私の友人も同じように守られるばかりじゃ嫌だと、渦中に飛び込んだ事があります。
今思えば肝が冷える話です。
ご無理なさるのは良くないでしょうね。」
咲は苦笑する。
「でも、あの人はどうなの?
黙ってばかりで、気になるもの!
あんなに綺麗な人と一緒に仕事をし・・・」
そこまで言ってから失言に気づいたのか、千鶴は慌てて口を閉じた。
「・・・もしかして長いストレートの髪の女性のことですか?」
思い当たるのは麻子ただ一人だ。
「だって・・・あまりにお似合いだからっ・・・」
今にも泣き出しそうな様子にこれは土方は罪深いと唸ってしまう。
「私彼女とは親しいんです。
かれこれ10年以上の付き合いで、彼女の旦那さんとも同じくらいの付き合いなんです。
職場恋愛で結婚されていて、同期でも抜きん出て良く出来る美男美女夫婦で有名なんですよ。
誰かが間に入る隙もないくらい。」
そう言うと千鶴は恥ずかしそうに俯いた。
「土方さんは私が千鶴さんとお会いしていることを知って、貴女を傷つけるんじゃないかと探りを入れてくるくらいです。
心配ないと思いますよ。」
そう言っても千鶴は俯いたままだった。
「でも・・・。」
咲は苦笑する。
「でも、と言いたいお気持ちはわかります。」
千鶴ほ顔をあげた。
「土方さんは近くにいるんです。
話してみてください。」
おもいとおもい
