それから
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「おはようございます。」
「おはよう。」
土方の朝は早い。
事務室には咲が来るのが一番で、次が土方だ。
咲が移動してくる前は、彼が一番早かったのだろう。
華やかな顔立をし、凄腕を期待されるエリートだが、その影には努力の二文字があるのだと咲は感じていた。
「おい。」
応接室に活ける花の支度をしていると声をかけられた。
大抵黙って仕事にかかる土方にしては珍しい。
「はい。」
声をかけておきながら、一瞬戸惑ったように目をそらし、それからずいぶんと凄みの効いた顔で改めて睨んできた。
「昨日、あいつと何を話した?」
「はい?」
昨日と言われて思い出すのはひとりしかいない。
土方が千鶴と読んだ女性だ。
千鶴は土方を夫だと言った。
ならば。
「奥様に聞かれてはいかがでしょう?」
「あいつが妻だと言ったのか?」
「といいますか、土方さんのことを夫と呼んでおられましたので。」
土方は溜め息をついた。
「口外無用。
手塚にも言うんじゃねぇぞ。」
何をそこまで知られるのが嫌なのか咲に分からないが、本人が嫌ならば余計なことは言うまい。
「わかりました。」
土方は何事もなかったかのような顔をして仕事に戻った。
咲も彼に背中を向け、花を生ける。
いつも通りの朝に戻った。
「こんにちは、空太刀さん。」
その人と初めて会った中庭でかけられた声に驚く。
「ち、千鶴さん。」
振り返ると千鶴は嬉しそうに微笑んだ。
「この前はありがとうございました。」
ぺこりとお辞儀をするので首を振る。
「とんでもないです。
体調はよろしいんですか?」
「はい、今日は比較的好調で。」
幸せそうな様子に、咲も心が穏やかになる。
「今日はもしかして本を借りに?」
「はい。
育児の本とか、少しみたくて。」
「なるほど。」
そういえば、と1つイベントを思い出す。
「図書館で、妊婦さん向けのイベントもしているんですよ。」
「そうなんですか?」
中庭から図書館に入ってすぐのちらし置き場から見慣れた桜色を取る。
「もしよろしければ。」
差し出すと千鶴は嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます。」
幸せそうな姿に、自分の母も幸せだったのだろうかとふと思った。
とある秘密
