それから
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「それはおめでとう。
細かいことに気を遣わなければならないうちの仕事は、少し辛いかな?」
相変わらず表情をかえることのない上司と、そんな彼を見てもやはり表情をかえることのない部下の間で、柴崎はつきたくなる溜息を堪えた。
「いいえ、そんなことは。
ただ、前にお伝えした通り、2カ月しましたら産休に入らせていただきます。
以降空太刀が私の代わりを勤めるよう、今から教育いたします。」
副館長は楽しげに笑う。
情報部は秘書課と情報課で構成されており、そのトップは何を隠そう副館長なのだ。
「それは頼もしい。
彼女のしごきには耐えられそうかい?」
彼が部下に見せる、一番優しい顔だと思う。
だからだろうか。
咲も一番良い作り笑いをしていた。
頑固すぎるこの二人の扱いの面倒くささに、これからを思うと柴崎ですら頭を抱えたくなる。
「手塚二正はいつも適切なご指示を与えてくださります。
期待に添えるよう、鋭意努力いたします。」
咲は彼を真っ直ぐ見上げた。
「ほう。」
副館長は目を閉じて微笑んだ。
再び開かれた瞳は、柴崎を映していた。
「良い部下を持ったね。」
「はい。」
(この転機、どうなることやら。)
とりあえず情報部の部屋へ咲を連れていこうと、頭を下げる。
「ではこれで失礼いたします。」
咲も従って頭を下げ、くるりと振り返り、柴崎のあとをついてくる。
大切な大切な笠原の危機を放置したチビちゃんは、いつの間にか後を担う存在だと思わせるまでになっていた。
柴崎が部屋を出たときだった。
声後追いかけてきた。
「期待しているよ。」
「ありがとうございます。」
ありきたりな受け答えだった。
それでも、いつもと違うなにかが自分の見えないところであってほしいと、思わず願ってしまった。
「ようこそ情報部へ。
と言ってもお馴染みか。」
眼鏡をかけた七三分けのいかにも秘書らしい課長の笑顔に、咲も笑って見せる。
「お世話になります。」
「基本は今までとそう大きくは変わらないが、情報集めとSPを兼ねてもらおうと思っている。
法律についてはちょっと勉強してもらうことになるだろう。」
「はい。」
「席はとりあえず手塚君と兼用で、必要に応じて向こうの机を使っていいよ。」
彼の示す先には資料を広げたり打ち合わせのための机があった。
「スケジュールはできたかい?」
「はい、ご確認いただこうと思って持ってきました。」
印刷したスケジュールを渡すと、課長はさっと目を通してから明るく笑った。
「なるほど。
特殊部隊はなかなか君を離してくれそうにないな。」
書物の運搬やイベントの警備等が目立つ。
急な調整の結果、部隊に咲が必要なものを残したのだが、課長が思っていたよりも多かったらしい。
「いえ、今少々人員不足でして。」
恐縮する様子に首を振る。
「これでいこう。
こちらの予定はまた手塚君に聞いてくれ。
そっちの手塚二正にもよろしく伝えておいてくれ。」
「はい。」
「にしても、上司が夫婦とは後にも先にもお前だけだろうな。」
気さくに笑うので、やはり咲も笑った。
「なんか思っていたよりもそっちの仕事が多かったんだけど。」
妻の言葉に、シャワーで濡れた髪を拭きながら光は頷く。
「だろうな。」
「誰?
あんたじゃないでしょ?
あの子が戦うことを望んでいる人の方が少ないはずなのに。」
ソファの手すりに頬杖をついて、麻子は眉をひそめる。
それもそれで様になるのが彼女だ。
光はその隣に腰かけて笑った。
「お前にも分からないことがあるんだな。」
「その言い方むかつく。」
光はくすりと笑う。
そんなしぐさが兄に似ているといつか言ってやろうと麻子は思っていた。
「残念だがその人はきっと知られたくない。」
その意思を尊重する時点で、彼の兄では無いことだけはわかった。
「なら自分で答えを探すわ。」
夕食の用意をするために麻子は立った。
「俺何したらいい?」
その肩を労るようにそっと、光が支える。
「じゃあ鍋温めるから、それ見ててくれる?」
「了解。」
ご挨拶
細かいことに気を遣わなければならないうちの仕事は、少し辛いかな?」
相変わらず表情をかえることのない上司と、そんな彼を見てもやはり表情をかえることのない部下の間で、柴崎はつきたくなる溜息を堪えた。
「いいえ、そんなことは。
ただ、前にお伝えした通り、2カ月しましたら産休に入らせていただきます。
以降空太刀が私の代わりを勤めるよう、今から教育いたします。」
副館長は楽しげに笑う。
情報部は秘書課と情報課で構成されており、そのトップは何を隠そう副館長なのだ。
「それは頼もしい。
彼女のしごきには耐えられそうかい?」
彼が部下に見せる、一番優しい顔だと思う。
だからだろうか。
咲も一番良い作り笑いをしていた。
頑固すぎるこの二人の扱いの面倒くささに、これからを思うと柴崎ですら頭を抱えたくなる。
「手塚二正はいつも適切なご指示を与えてくださります。
期待に添えるよう、鋭意努力いたします。」
咲は彼を真っ直ぐ見上げた。
「ほう。」
副館長は目を閉じて微笑んだ。
再び開かれた瞳は、柴崎を映していた。
「良い部下を持ったね。」
「はい。」
(この転機、どうなることやら。)
とりあえず情報部の部屋へ咲を連れていこうと、頭を下げる。
「ではこれで失礼いたします。」
咲も従って頭を下げ、くるりと振り返り、柴崎のあとをついてくる。
大切な大切な笠原の危機を放置したチビちゃんは、いつの間にか後を担う存在だと思わせるまでになっていた。
柴崎が部屋を出たときだった。
声後追いかけてきた。
「期待しているよ。」
「ありがとうございます。」
ありきたりな受け答えだった。
それでも、いつもと違うなにかが自分の見えないところであってほしいと、思わず願ってしまった。
「ようこそ情報部へ。
と言ってもお馴染みか。」
眼鏡をかけた七三分けのいかにも秘書らしい課長の笑顔に、咲も笑って見せる。
「お世話になります。」
「基本は今までとそう大きくは変わらないが、情報集めとSPを兼ねてもらおうと思っている。
法律についてはちょっと勉強してもらうことになるだろう。」
「はい。」
「席はとりあえず手塚君と兼用で、必要に応じて向こうの机を使っていいよ。」
彼の示す先には資料を広げたり打ち合わせのための机があった。
「スケジュールはできたかい?」
「はい、ご確認いただこうと思って持ってきました。」
印刷したスケジュールを渡すと、課長はさっと目を通してから明るく笑った。
「なるほど。
特殊部隊はなかなか君を離してくれそうにないな。」
書物の運搬やイベントの警備等が目立つ。
急な調整の結果、部隊に咲が必要なものを残したのだが、課長が思っていたよりも多かったらしい。
「いえ、今少々人員不足でして。」
恐縮する様子に首を振る。
「これでいこう。
こちらの予定はまた手塚君に聞いてくれ。
そっちの手塚二正にもよろしく伝えておいてくれ。」
「はい。」
「にしても、上司が夫婦とは後にも先にもお前だけだろうな。」
気さくに笑うので、やはり咲も笑った。
「なんか思っていたよりもそっちの仕事が多かったんだけど。」
妻の言葉に、シャワーで濡れた髪を拭きながら光は頷く。
「だろうな。」
「誰?
あんたじゃないでしょ?
あの子が戦うことを望んでいる人の方が少ないはずなのに。」
ソファの手すりに頬杖をついて、麻子は眉をひそめる。
それもそれで様になるのが彼女だ。
光はその隣に腰かけて笑った。
「お前にも分からないことがあるんだな。」
「その言い方むかつく。」
光はくすりと笑う。
そんなしぐさが兄に似ているといつか言ってやろうと麻子は思っていた。
「残念だがその人はきっと知られたくない。」
その意思を尊重する時点で、彼の兄では無いことだけはわかった。
「なら自分で答えを探すわ。」
夕食の用意をするために麻子は立った。
「俺何したらいい?」
その肩を労るようにそっと、光が支える。
「じゃあ鍋温めるから、それ見ててくれる?」
「了解。」
ご挨拶
