それから
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「何もねえぞって顔してるな。」
かけられた声に咲は書類から顔をあげた。
「そういうときは大抵何かあるんだ。」
山本がニヤリと笑って咲を見下ろしていた。
信頼のできる同期は壁時計を親指で示して昼休みに入ったのを教える。
「たまには外に食べに行くか。」
彼は数年前、郁が担当した安達という隊士としばらく付き合っていたらしいが、別れてから色めいた噂は途切れていた。
気遣いの要らない相手はありがたい存在で。
「うん、ありがとう。
すみません、行ってきます。」
「ゆっくりしてきて。」
咲も席を立った。
連れだって行く姿をぼんやりと郁は見送る。
「山本って今フリーだっけ?」
「・・・俺はそう思っているが。」
手塚がいぶかしげに返す。
「ふぅん。
何て言うかさ、ずいぶん前から思ってたんだけど、あの二人って付き合ってないんだよね。」
「ずいぶんっていつからだ?」
「うちに入隊してから。」
「正確にはわからん。」
「手塚ならそういうと思った。」
「だが、ただの同期ではないよな。」
「そうだね。
どうなの、手塚としてはやっぱりお兄ちゃんとくっついてほしい?」
そう耳打ちすると、手塚は顔をしかめた。
「やめろ気持ち悪い。」
「それは言い過ぎ。」
手塚は少し、考えるようなそぶりをしてから、やや声を落として答えた。
「そうも思わない。
どちらかというとお勧めしないな。
兄貴は頑固だし、自分が考えることが正しいと思っている。
・・・それを相手が嫌がろうとな。」
「あのお兄さんの性格だとそうかもね。」
「ただ、あいつがそう決めるなら、俺は何も言わない。」
「むしろ大歓迎?」
「勝手に言ってろ。」
「何食いに行く?
パスタか?
定食か?」
「山本はなにがいい?」
「んー、どうすっかなー。」
のんびりと廊下を歩く。
それがなんだか嬉しくて、ほっとして、咲は自然と微笑んだ。
そんな様子を見て、山本が目を細める。
「何か変なこと言った?」
「いや、何でもねぇよ。」
「じゃあなに?」
「だからなんでもねぇって。」
そう言って楽しげに笑う山本が、ふと正面を見る。
そしてにやりと笑った。
咲がその視線を追うと。
「お疲れ様です、副館長。」
山本が敬礼する。
咲もそれに倣った。
「お疲れ様。
楽しそうだな、お昼かい?」
優しく目を細めて、慧が山本に問いかける。
「はい。
駅前においしい店が多いんで、いいっすよ。」
山本も愛想よく応じる。
「そうか。
今度私にも教えて欲しいな。」
「はいぜひ。」
そして彼は咲とは一言も会話をすることなく、通り過ぎた。
咲は小さく拳を握りしめる。
山本はまた、小さく微笑んだ。
きみときみと
