それから
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「偶然見かけたの。
ほら、あの特殊部隊の女の子と副館長が一緒に閉館後の図書館にいるところ!」
「え?!
何それどういうこと?」
食堂でひょっこり耳に入ってきた言葉に、郁は反射的に振り返りそうになり、柴崎の鋭い視線を感じてぐっと踏みとどまる。
「別に何かどうとかいうことでもなかったけれど、なんか知り合いみたいに話していたの。
びっくりしちゃった。」
「そう言えばあの子、数年前に副館長を庇って暴漢に刺されたんでしょ?
その時の関係で何か話していただけじゃない?」
「うーん、そうかも。
すごく短時間だったし。」
後ろの女性陣が席を立ち、食堂から出て行ったところで、郁は隣の席の柴崎を見た。
「えーっと・・・なんかやばそう?」
「鈍いアンタでもわかるんだから相当ね。」
「う・・・否定できない・・・。」
深いため息が柴崎から洩れた。
「まぁこの辺のことを分かっていたから、あの二人も会わなかったのかもね。」
「そういうもんかなぁ。」
「そうねぇ。
ここからがあいつの腕の見せ所、って感じだと思うんだけど。」
「あいつって・・・言い方。」
「そんなもんでいいのよ。」
再び柴崎から深いため息が漏れた。
「どうするのかしら・・・。」
「あの、空太刀さん。」
咲は足を止めて振り返った。
「何かありましたか。」
業務的な口調で応えると、そこにいた女性たちは首を振った。
「ちょっと聞きたいことがあって。」
「昨日閉館後の図書館で、副館長と何を話していたか、ですか。」
淡々とそう答えると、女性たちはうろたえたようだ。
(よかった。
さっきよりも気の強い人じゃなくて。)
「数年前に暴漢に襲われそうになられたのをお助けしたことを覚えていてくださったようです。」
「ええっと、」
「それだけです。
副館長もお忙しい方ですから。」
咲は営業スマイルを浮かべた。
「では私はこれで。」
「ええ・・・引き留めてごめんなさい。」
咲は背を向けて執務室へと向かう。
「そうよ、そんなこと、あるわけないわ。」
「それもそうね。
歳も、立場も、違いすぎるもの。」
「それはあんたも一緒でしょー。」
女性たちの小声の会話を背中で聞きながら。
(仕事中なのに、みんな何考えてるんだか。)
今日だけでもう3度目だ。
明日も続くのだろうか、と思うと気が重くなる。
ふと、中庭を挟んだ向こう側の棟の廊下を歩く横顔に、足を止めた。
向こうも不思議と足を止めたようだ。
彼もこっちを見る。
軽く30メートルはあるだろう。
彼はその先で淡く笑った。
昨日一瞬見せてくれたのと同じ、無邪気な笑顔だ。
咲も同じく淡く笑って見せる。
それは一瞬で、互いにすぐに足を動かし始めた。
(遠くにいた方が、近かった。)
ーこれまでよりも会いにくくなる。
・・・すまない。ー
夕暮れの図書館で彼が浮かべた、苦しそうな表情が胸を締め付ける。
(でも貴方に近づく術を、私は知らない。)
このキョリ
