それから
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どこかで会うだろうと思っていた。
例えば図書館内で。
例えば執務室で。
例えば廊下で。
例えば、例えば・・・
「まだ会ってないの?」
郁が驚いたのは、着任してから3日目のことだった。
「まだ着任してからすぐで、お忙しいですよ。」
「そりゃそうだけど・・・。」
納得していないような顔で郁は黙った。
「まだ会ってないのか?」
手塚が驚いたのは1週間ほどしてからだった。
「まだ1週間です。
お忙しいですよ。」
「いやいや、連絡もないのか?」
「ですからお忙しいですって。」
涼しい咲の横顔に、手塚は黙った。
じっと見つめられ、咲は隣を見上げる。
「・・・なにか?」
「あいつに言いたいこととかないのか?
黙っていても伝わらないんだぞ。
言いたいことはガツンと言ってやらないと。」
やけに必死に訴えてくるのがおかしくて、咲は思わず笑った。
「ありがとうございます。
大丈夫ですよ、いつもこんな感じですから。」
「それもそれで不安なんだが。」
頭を掻く姿に、咲はまた笑った。
どこかで会うだろうと思っていた。
例えば図書館内で。
例えば執務室で。
例えば廊下で。
例えば、例えば・・・
「副館長!
おはようございまーす!」
「おはようございます、副館長!」
黄色い歓声というか、それにやや近い声に咲の足は止まった。
今日は分館への書物の搬出があり、咲はその配送に当たっていた。
大きな段ボールを抱えた作業着の咲の視線の先には、軽い人だかりがある。
「おはよう。
朝から元気だね。」
「もちろんです!」
「副館長、いつもこのお時間なんですか?」
「いや、日によるかな。」
若い女性職員達の中に、その人はいた。
咲は背筋を伸ばし、段ボールを抱え直す。
そしてその人だかりの横を、軽く目礼をして通り過ぎた。
楽しげな女性たちの笑い声が、冷たく追いかけてきた。
冷たい壁
