それから
名前変換
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「いってきます!!」
「粗相のないようにな。」
旦那に送り出され、郁は家から駆け出した。
堂上班は解散された。
昨年度末、そう、昨日のことだ。
昨年度末に特殊部隊創立以来隊を率いてきた年代層が数名防衛部へと異動した。
それに伴って班の編成が変わったのだ。
たとえば進藤班は高島が防衛部に異動し、再編成の対象となった。
また職場内で結婚すればどちらかは別の部署に変えられると言うのが当たり前である。
これを期にと、堂上夫婦は別の班に変えられることとなった。
結果、進藤班という名前で進藤の下に堂上、小牧、別班にいた宮島が配属され、
手塚班という名前で手塚の下に郁、山本、咲が配属された。
ちなみに副班長は進藤班は宮島、手塚班は郁である。
(副館長ってどんな人かな。)
走りながら郁は青い空を見上げる。
雲ひとつない快晴で、道沿いに植えられた桜の花びらが美しく舞う。
実にいい日だ。
思わず足を止めて桜の枝に手を伸ばす。
指先に触れる、薄く破れそうな、でも生命力の溢れる花弁に、郁は微笑んだ。
(今日昇進して副館長になれるなんて、ついてる人。
どんな人かな。)
風が吹いた。
濃紺の車が車道を滑る様に走って行ったのだ。
今CMでも話題のハイブリット車で、乗り物に詳しくない郁でもその名前は見たら分かった。
(あんな車に乗っているかも。)
その車は郁の立っているところから15メートルほど先の角を曲がった。
曲がるときにちらりと見えた顔に、郁は目を見開く。
「おい。」
「わっ!」
急に後ろからかけられた声に、郁は更に目を大きく見開いた。
振り返ればそこには夫が怪訝そうな顔をして立っている。
「お前、急ぐからって先に家をでたんだろ?
いいのか?」
「あ!
やばっ!!」
郁は慌てて再び走り出した。
その背中を見て堂上は溜息をつく。
「・・・すまんな、手塚。」
思わずこぼれたのは、部下への謝罪だった。
「ギリギリセーフ。」
「言っておくが、うちの班ではギリギリセーフのことをアウトと呼ぶ。
集合時間の5分前には来いと言っただろう。
副班長になったばかりというのに。」
手塚が腕を組んで郁を睨む。
「ごめん!
明日から気をつけます!」
両手を合わせる郁。
その視界に新しい班員である咲が入ってくる。
「手塚二正、お花の設置は終わりました。
警備室への連絡も済みました。」
「分かった。
山本は?」
「副館長が到着され、先に館長や部長に挨拶されるとのことで、その連絡をしに執務室へ戻りました。」
「よし。」
手塚はどこか満足そうに頷く。
彼はどうも咲がお気に入りのようだと、いつからか郁は気づいていた。
(やっぱりお兄ちゃんの彼女ってなると、気にいるもんなのかなぁ・・・。
義理の妹になるかもしれないわけだし。)
そこでふと、車に乗っていた人物を思い出し、郁は手を打った。
「そういえばさっきね、」
「お前と俺は今から館長室の前へ行く。
時間だ。」
郁の言葉を遮って手塚が指示を出す。
時計を確認すれば彼の言うとおり、郁が館長や部長、そして新しく来た副館長を迎えに行く時間となっていた。
「空太刀は他職員の誘導の方に加わってくれ。」
「はい。」
咲は二人に背を向け、ホールの入口へと行ってしまった。
「あ・・・。」
郁は呼びとめようとしたが、仕事を思い出して止める。
「どうした?」
「・・・なんでもない。」
彼だけに教えるのもよくないと、郁は1人納得し頷く。
「いこっか。」
(思いすごしかもしれないもの。
そろそろ確認せずに物事を言うの、止めなきゃ。
副班長になったわけだし。)
やけにきりりとした顔をしている郁に、手塚は小さく笑う。
柴崎と結婚して、彼には笑顔が増えたと郁は思う。
「副館長、いい人だといいね。」
「お前のいい人の基準がどうかはわからんが、副館長に抜擢されるお方だ。
きっと図書館のために尽力してくださる方だろう。」
だがこんなところは相変わらずだ、と思う。
(そんな相変わらずなところが、まあいいところでもあるんだけど。)
桜吹雪と
