別冊 ー5thー
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「すみません。」
男子寮の廊下。
聞こえるはずのない女子の声に、群がっていた男達は肩をすくませる。
「何で!」
「それはこっちの台詞です。」
そんなことねーよ、とみんなが心の中で突っ込む。
口に出せないのは、隣に三正の手塚が眉をひそめて立っていたからだ。
「没収します。
手塚三正、お部屋お借りしてもよろしいですか。」
「ああ。」
今にも殺されかねないような手塚のどすの利いた声に、男達はすごすごと従った。
手塚に妙な頼みごとをしてきたのは咲だった。
「男子寮、ちょっと入れさせてもらえませんか。」
「何考えてるんだ?」
「詳しくは言えませんが、手塚三正にとっても大切なことですので。」
何かを見透かしたような瞳に、手塚が戸惑いながらも頷いたのは一昨日の夜だった。
結果、咲の手の中にあるのは、柴崎写真を用いたコラージュ。
それも、見ていて冷静でいられる代物ではない。
殴るのを踏みとどまれたのは、自分の前に立つ咲の手が白くなるほど強く握りしめられ、小さく震えていたからだろう。
部屋につくと一番奥に咲が座り、机の上に何かを広げ始めた。
手塚は先に連れてきた後輩達を中に入れ、部屋の入り口に腕を組んで立ちはだかる。
「写真を提出した方はバツをつけてください。
持っている方に見せてもらった方や、話を聞いて知っていた方は三角印を。
後でバレて手塚三正にボコボコにされたくなければ、正直にお願いします。」
机の上には隊員名簿が広げられていて、正座させられた男性隊員3人の前、ちょうど真ん中に赤色のボールペンが据えられている。
ごくりと唾を飲む音が聞こえた気がした。
「部屋に帰ったら隣の部屋の方にもこちらに来ていただけるようにお伝え願えますか?
写真所持者はそれも持ってきて下さるように併せてお願いします。」
咲の言葉は丁寧だが、その目が恐い。
彼女は今、きっと自分と同じ怒りを感じているのだ。
それだけが唯一、救いだった。
大切な人