別冊 ー5thー
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「おめでとうございます。
堂上三正。」
真っ直ぐ黒い瞳が見上げてきた。
だから郁は、胸を張った。
ほしくてほしくてたまらなかったカミツレが、よく見えるように。
きっと自分と同じくらい欲しくて、それをつけることにもっと重い意味を感じている、彼女の前だからこそ。
「ありがとう。
咲のおかげだよ。」
むしろここにいることさえ、彼女のおかげかもしれない。
ともに死線をくぐってきたのだ。
彼女は静かに首を振った。
「私も、まだカミツレはないですが、精一杯頑張ります。
・・・いつかカミツレにふさわしい隊士となれるように。」
ふさわしいかどうかと聞かれれば、自分よりもずっとこの子の方がふさわしいだろうと思う。
疑問は残る。
残るけれど、それにかまうよりも、自分は先輩として真っ直ぐ前を向いて、目の前の後輩が後ろを歩いてこれるようにしなければ。
かつて、自分の夫であるその人が、自分にとっての目標であり、王子様であったように。
今やっと、追いかけてきた背中に並べたから。
「うん。
早く追いかけてきてね。」
そう言えば彼女は笑った。
いつのまにか、綺麗に笑うようになったと思う。
もしかしたら、もう心配はいらないのかもしれない。
彼女は強い。
「柴崎三正、手塚三正も、おめでとうございます。」
他の二人は郁ほど苦労したわけでもないせいか、いつも通りの顔だ。
(そうだ、二人は士長になった時もそうだった。)
これだから嫌になる。
「ま、あんたもせいぜい頑張ることね。」
そういいつつも柴崎もどこか嬉しそうに見えた。
階級の差は広がった。
でもそんなことは関係のないままでいたい。
事実、いまだに咲を見習えと夫に怒られることもある郁なのだ。
そして同時に、気遣ってやれともいわれる。
(よくできる後輩を持つ先輩も、大変なんだから。)
ふと視線を感じてあたりを見回すと、向こうの方で女子隊員達が何人か話していた。
そのうちの一人が、こっちをじっと見ている。
(・・・あの子、水島・・・?)
視線の先には柴崎と、そして。
視線の行方