別冊 ー5thー
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「すみませんっ!」
柴崎と、最近彼女に何かと付きまとっている来館者奥村の間に、本の雪崩れが起きたのは突然だった。
「またお前っ!」
奥村が目をくわっと見開いた。
「す、すみません、たまにするとどうも。」
頭を掻く咲。
「分かったから、はやく戻して。
すみません、この辺りでよろしいですか。」
「・・・分かったよ。」
柴崎が直すのを手伝うため、奥村はすごすごと帰って行った。
「作業が増えるんだけど。」
「他に仕方ないじゃないですか。
広瀬三正の案です。」
「ったく。」
ちらりと咲の顔をのぞけば、不機嫌そうなのが分かる。
郁達のようにあからさまにそんな顔はしないけれど、微かに眉が寄っているのだ。
そんなことに気づけるようになったのも。
(長年の付き合い、ってなところかしら。)
今までいろんな付き合いがあった。
男とも、女とも。
でも、郁のような友達ができたのは初めてだし、咲のような後輩ができたのも、手塚のような同僚も、堂上や小牧のような容姿に捕らわれず自分を見てくれる上司も、みんなみんな初めてだ。
(・・・恵まれている・・・か。)
らしくないことを、と小さく笑う。
「何笑っているんですか。」
いつも通り感情は表に出ていないけれど、それでもどこかぶっきらぼうに聞こえる声に、柴崎は笑みを浮かべる。
(・・・かわいい子。)
「別に?」
そう言えば溜息をつく。
それまでもが嬉しいなんて、なんだかおかしい。
咲が立ちあがるのにしたがって柴崎も立つ。
「ありがとうございました。」
綺麗に頭を下げて、咲はラックに手をかける。
それから、思い出したように柴崎を少しだけ振り返った。
「もう隠す必要も、我慢する必要もありません。
・・・頼ってください。」
虚を突かれたような柴崎を置いて、咲はしっかりとした足取りで歩んでいく。
自分とは違って、銃を握る彼女。
身体能力も自分より上で、細いように見える背中にもしっかりと筋肉がついていることを知っている。
人を殴るし、人を撃つ。
人に殴られるし、人に撃たれる。
それでもこうして真っ直ぐ前を見て立っていられる彼女は、心が強い。
「・・・馬鹿じゃないの。」
小さな呟きは誰の耳に届くこともない。
今