別冊 ー5thー
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「・・・本当に?」
あまりのことに間が開いてしまって、電話の向こうで慧が笑った。
『本当さ。
検閲抗争での火器の使用禁止が決まった。
まだ公に公表されていないから、あまり言うなよ。』
そんな話をしてくれることがまず嬉しい。
最近忙しいと言っていたのはこのことだったのか、とひとり納得する。
ただ、火器の使用が禁止されるということは、狙撃の進藤親子と呼ばれる自分たちの狙撃の腕がいらなくなるということ。
進藤の方はもともと身体能力も高いから特殊部隊に居続けることもできるだろうが。
(・・・私は・・・。)
小さな寂しさに首を振る。
火器の使用が禁止されれば、死傷者が減る。
もう玄田もハチの巣になることはない。
進藤ももう撃たれないし、郁も吐いてまで人を撃たなくて済む。
素晴らしいことなのに、自分は何を考えているのだろうと。
(元より、特殊部隊・・・図書館隊は、平和とともに消えるべき組織だ。)
守る必要がない世の中を作るために、自分達は血を被っているのだから。
再び電話に声をかける。
「・・・ありがとう、本当に。」
電話の向こうでまたくすりと優しい笑い声がした。
『これ以上、お前に怪我されたらたまらんからな。
・・・俺なりの方法で守らせてもらう。』
囁き声に虚を突かれて、それから咲はきゅっと拳を握った。
彼はやはり何でもお見通しなのだ。
咲が感じる小さな寂しさも、それからきっと、高鳴る鼓動も。
『それから・・・何かあったか。』
小さな子をあやすような声色に、咲はふっと表情を緩めた。
その声を聞くだけで、胸が軽くなる。
ころんと布団に倒れた。
本当に、彼は何でもお見通しなのだ。
でも私は答えるわけにいかない。
山本が離れていくのが辛いなんて。
「なんでもない。」
ぶっきらぼうにそう答えた。
『そうか。』
優しい声が返事をする。
こんなところが大人だと悔しくなるところであり、ほっとするところだ。
『・・・次の休み、遠出でもするか。』
「お祝いに?」
彼はくすりと笑う。
こんな風にゆっくり電話をするなんて、ずいぶんと久し振りな気がするし、遠出するなんて初めてだ。
『そうだな。』
耳元で嬉しそうに囁く彼に私は目を閉じた。
時は流れた。
高校生だった自分はいつしか酒が飲めるようになった。
郁と堂上は結婚した市、毬江と小牧さんも近々式場を見に行くらしい。
柴崎と手塚はまだ相変わらずだが。
『また、な。』
彼とまた、いや、前よりもずっと、距離が近くなった気がする。
それが嬉しくて