別冊 ー5thー
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「うん、かわいいよ。」
そつなく褒める小牧が手を差し出すと、
毬江も手を添えた。
あらまお似合い
小声で呟いてふっと視線を自分の前に戻し、咲は目を見開いた。
式服に身を包んだ山本が、目を見開いていたのだ。
あほ面だが、不覚にもかっこいいと思ってしまった自分が悔しい。
「い・・・いいよ、笑っても。」
ふいっと顔をそらして、咲は何とかそれだけ言った。
「ちがっそういう意味じゃねぇって。
雰囲気が、いつもと全然違って。」
咲が頬を染めているところなんて、めったに見られるものでもない。
濃い目のメイクも、こんなかわいいワンピース姿も、ハイヒール姿も。
「でも、すっげえ似合ってる。」
そう言えば、咲はかぁっと耳まで真っ赤にした。
山本はそのかわいらしさに目を細める。
「行こうか。」
と言えば。
「・・・うん。」
と小さな返事が返ってきた。
それを遠目に見ていた毬江が、ほっと溜息をついた。
「私と同い年なのに、恋らしい恋をしていないんだもん。」
小牧はそんな彼女の友人に目を向ける。
咲と手塚慧の親交が、友人の域を超えているのではないかという思いは、前々から持っていた。
ただそれを認めるにはあまりに痛々しかった。
そう、毬江が自分に抱いていたような、恋という感情とは呼べないかもしれない。
今でこそ爆弾のような関係ではなくなったが、それでも咲が寂しい思いをしているであろうことは、考えればすぐにわかる。
「山本はいい子だ。
しっかりしているし、彼女を大切にしてくれるだろう。」
「すっごくお似合いだと思うの。
ほら、みんな振り返るわ。」
毬江の言うとおりだ。
ーあの二人素敵ね。ー
そんな声がちらほらと聞こえてくる。
「でも。」
毬江は困った顔をした。
「あの子は山本さんを選ばない・・・でしょ。」
目の前にある幸せな恋は、きっと選ばれない。
それは二人ともよくわかっていた。
だからこそ、周りの人たちが思わず振り返るようなお似合いな二人の後ろ姿から目をそらした。
知っているから、辛い