別冊 ー5thー
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今日も今日で、雄大は秘密基地を作るために館内にもぐりこんだようだった。
巻き込まれてしまった郁は仕方なく館内を探し回る。
ずいぶんと面倒なかくれんぼだ。
そんな思いが現れてしまったのかもしれない。
ようやく探していた姿を見つけた時に、思わず声をあげてしまったのだ。
「こらっ雄大!」
まさかそれがこんな事態を呼ぶだなんて、誰が思っただろう。
「ごめんなさい、ぶたないでー!!イヤァァッ!!」
火のついたように泣き叫ぶ少年。
それはいつも郁に見せる姿からは程遠かった。
一緒にいた堂上も流石に動揺したようだ。
一瞬固まってしまったが、すぐに少年の傍に座って話しかける。
「大丈夫だ、俺たちはお前をぶったりしない。」
しかしその声は少年には届かないようだ。
背後から足音がかけてくる。
「雄大・・・」
小さな声に振り返れば、そこには息を切らした咲がいた。
「雄大っ!」
雄大の泣き声に負けないほどの声で、咲が叫ぶ。
雄大はその声に彼女の存在に気付いたのだろう。
泣くのをやめた。
「・・・咲・・・。」
ぽろりと口からこぼれた声は、迷路の出口を見つけたかのような、
救いを求める響きがあった。
咲が駆け寄ってくるのを見ると、雄大は自分から物入れから出てきた。
そして咲に大人しく抱きしめられた。
「雄大のばーか、探したんだから・・・。」
「バカじゃねーもん。」
「馬鹿だよ。」
「バカっていう方がバカだもん。」
そうだ、いつも雄大を探すのは咲だった。
みんなで探しても、見つけるのはいつも、咲だった。
だから、誰も知らなかったのだ。
見つけられるとき、雄大がどんな顔をしているのか、なんて。
咲は立ち上がると雄大と手をつないだ。
それから、笑顔を向けた。
今にも泣き出しそうな笑顔だった。
「お二人は、業務部フロア小会議室2番で一度柴崎さんに合流してください。
私は雄大君とおやつ食べてきますね。」
「あ・・・ああ。」
なんとか堂上が返事をすると、
いこうか、そう声をかける咲の腹部を、雄大が殴る。
その手はあくまで優しく、じゃれつくようだった。
「咲ー、なに泣きそうな顔してんだよ。」
大人がいえないことを、子どもはさらっと言ってしまう。
郁も、そして堂上さえも、ドキッとしてしまった。
「さっきまで泣いてた雄大が言うなよ。」
くしゃくしゃと頭をなでて、彼女はその手を差し出した。
雄大は元気よくその手をとって、歩き出す。
「俺、もう泣かないから、咲も泣くな!」
立ちつくす二人の耳に、雄大のそんな声が聞こえた。
涙とそれから
巻き込まれてしまった郁は仕方なく館内を探し回る。
ずいぶんと面倒なかくれんぼだ。
そんな思いが現れてしまったのかもしれない。
ようやく探していた姿を見つけた時に、思わず声をあげてしまったのだ。
「こらっ雄大!」
まさかそれがこんな事態を呼ぶだなんて、誰が思っただろう。
「ごめんなさい、ぶたないでー!!イヤァァッ!!」
火のついたように泣き叫ぶ少年。
それはいつも郁に見せる姿からは程遠かった。
一緒にいた堂上も流石に動揺したようだ。
一瞬固まってしまったが、すぐに少年の傍に座って話しかける。
「大丈夫だ、俺たちはお前をぶったりしない。」
しかしその声は少年には届かないようだ。
背後から足音がかけてくる。
「雄大・・・」
小さな声に振り返れば、そこには息を切らした咲がいた。
「雄大っ!」
雄大の泣き声に負けないほどの声で、咲が叫ぶ。
雄大はその声に彼女の存在に気付いたのだろう。
泣くのをやめた。
「・・・咲・・・。」
ぽろりと口からこぼれた声は、迷路の出口を見つけたかのような、
救いを求める響きがあった。
咲が駆け寄ってくるのを見ると、雄大は自分から物入れから出てきた。
そして咲に大人しく抱きしめられた。
「雄大のばーか、探したんだから・・・。」
「バカじゃねーもん。」
「馬鹿だよ。」
「バカっていう方がバカだもん。」
そうだ、いつも雄大を探すのは咲だった。
みんなで探しても、見つけるのはいつも、咲だった。
だから、誰も知らなかったのだ。
見つけられるとき、雄大がどんな顔をしているのか、なんて。
咲は立ち上がると雄大と手をつないだ。
それから、笑顔を向けた。
今にも泣き出しそうな笑顔だった。
「お二人は、業務部フロア小会議室2番で一度柴崎さんに合流してください。
私は雄大君とおやつ食べてきますね。」
「あ・・・ああ。」
なんとか堂上が返事をすると、
いこうか、そう声をかける咲の腹部を、雄大が殴る。
その手はあくまで優しく、じゃれつくようだった。
「咲ー、なに泣きそうな顔してんだよ。」
大人がいえないことを、子どもはさらっと言ってしまう。
郁も、そして堂上さえも、ドキッとしてしまった。
「さっきまで泣いてた雄大が言うなよ。」
くしゃくしゃと頭をなでて、彼女はその手を差し出した。
雄大は元気よくその手をとって、歩き出す。
「俺、もう泣かないから、咲も泣くな!」
立ちつくす二人の耳に、雄大のそんな声が聞こえた。
涙とそれから