本編 ー4thー
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「調子はどう?」
「ご無沙汰しています」
病室に入ると、堂上は読みかけの本をベットの上に置いた。
「お前らか。
何、どうと言うこともない」
「まだ笠原さん来てないの?」
「それを言うか」
渋い顔に小牧が小さく笑う。
「差しいれ。
しょっぱいものがいいんじゃないかっていう話になって」
小袋包装のおせんべいになった。
置いておいて、誰か来たときでも食べれるように。
「服はここに置いておくよ。
あと、紙皿とかの類は、ここでいい?」
「お前たちは分かってるから助かる」
咲はお茶をマグカップに入れて堂上の傍に置く。
「助かる。
だが、わざわざ新しいのを買わなくてもよかっただろう」
堂上の言葉に、小牧がにっこりとほほ笑む。
「それね、空太刀さんが選んでくれたんだ」
意味が分からないと言いたげな堂上に、咲が小さな箱からもうひとつ取り出す。
それを見た堂上は、はっとしてマグカップを改めて見直す。
小牧が爆笑したのは言うまでもない。
ちなみにもうひとつのマグカップには、ドレスを着た女の子の絵、つまりお姫様が描かれていた。
そして、堂上の手でちょうど隠れていた部分には、王子様の絵。
「ちょっと早いですが、夫婦(めおと)にしてみました」
どこか見透かされている気がする発言に、堂上は眉を寄せた。
小牧が笑い転げていて煩い。
「そんなことより」
そんなことじゃない、と思ったが口に出すことはない。
「言わなきゃいけないことがあるんです」
改まった言葉に、小牧も涙を拭いてベットの傍の椅子に腰を下ろした。
「私と手塚慧さんのこと」
唐突に話しが始まるのは、どこか懐かしい。
毬江の痴漢事件の時もそうだった、と思い出す。
あの時はまだ制服に身を包んでいた女の子だったのに、彼女はいくつもの戦線をくぐりぬけて、いつの間にか大人になった。
今でも変わらない不器用さと、少しだけ見せてくれるようになった笑顔とが、時間を物語る。
「高校生の時から、知り合いでした。
読書友達で、親しかったんです」
その言葉に、小牧は目を見開く。
「だから」
咲は深く頭を下げた。
「申し訳ありませんでした」
小牧ははっとして堂上を見る。
彼は穏やかに咲を見つめて頷いた。
(……知ってたんだ……)
ということは、この話は小牧に向けてということになる。
この謝罪に至るまで、彼女はどれだけ迷ったのだろう、悩んだのだろうと、思った。
自分は知らされないままでも良かったかもしれないけれど、疑いを持ち始めていたことにさえ彼女はおそらく気づいていて、だからこそ、自ら話してくれた。
そしてそれを全て、堂上は知らないふりをしてくれた。
それはーー2人の優しさだ。
「頭を上げろ」
堂上の一言で、咲はゆっくりと頭を上げた。
「手塚士長と、柴崎士長はご存知です。
毬江も知りました。
もう、隠し切れることではありません。
申し訳ありませんでした」
もう一度深く下げられた頭。
彼女はもしかしたら、腹をくくったのかもしれない。
刺されてまで守ろうとした相手。
それがどんなことを意味するのか、分からないはずもない。
「……あいつにも言うのか」
堂上の口から次に出てきたのは、その言葉だった。
「……どうしようかと、迷っています。
言えば笠原士長は傷つくかもしれない。
傷ついても、無理に許そうとしてくれるかもしれない。
それじゃあ意味がない。
謝罪は、自分のためにするんじゃないですから」
穏やかな目は、誰かに似ていた。
深い懺悔をたたえる瞳に。
思慮深く、誰よりも勇敢な。
(……稲嶺司令……)
彼女は似てきた、と思う。
今まで流れてきた血が、彼女たちを作ったのかもしれない。
謝罪
「ご無沙汰しています」
病室に入ると、堂上は読みかけの本をベットの上に置いた。
「お前らか。
何、どうと言うこともない」
「まだ笠原さん来てないの?」
「それを言うか」
渋い顔に小牧が小さく笑う。
「差しいれ。
しょっぱいものがいいんじゃないかっていう話になって」
小袋包装のおせんべいになった。
置いておいて、誰か来たときでも食べれるように。
「服はここに置いておくよ。
あと、紙皿とかの類は、ここでいい?」
「お前たちは分かってるから助かる」
咲はお茶をマグカップに入れて堂上の傍に置く。
「助かる。
だが、わざわざ新しいのを買わなくてもよかっただろう」
堂上の言葉に、小牧がにっこりとほほ笑む。
「それね、空太刀さんが選んでくれたんだ」
意味が分からないと言いたげな堂上に、咲が小さな箱からもうひとつ取り出す。
それを見た堂上は、はっとしてマグカップを改めて見直す。
小牧が爆笑したのは言うまでもない。
ちなみにもうひとつのマグカップには、ドレスを着た女の子の絵、つまりお姫様が描かれていた。
そして、堂上の手でちょうど隠れていた部分には、王子様の絵。
「ちょっと早いですが、夫婦(めおと)にしてみました」
どこか見透かされている気がする発言に、堂上は眉を寄せた。
小牧が笑い転げていて煩い。
「そんなことより」
そんなことじゃない、と思ったが口に出すことはない。
「言わなきゃいけないことがあるんです」
改まった言葉に、小牧も涙を拭いてベットの傍の椅子に腰を下ろした。
「私と手塚慧さんのこと」
唐突に話しが始まるのは、どこか懐かしい。
毬江の痴漢事件の時もそうだった、と思い出す。
あの時はまだ制服に身を包んでいた女の子だったのに、彼女はいくつもの戦線をくぐりぬけて、いつの間にか大人になった。
今でも変わらない不器用さと、少しだけ見せてくれるようになった笑顔とが、時間を物語る。
「高校生の時から、知り合いでした。
読書友達で、親しかったんです」
その言葉に、小牧は目を見開く。
「だから」
咲は深く頭を下げた。
「申し訳ありませんでした」
小牧ははっとして堂上を見る。
彼は穏やかに咲を見つめて頷いた。
(……知ってたんだ……)
ということは、この話は小牧に向けてということになる。
この謝罪に至るまで、彼女はどれだけ迷ったのだろう、悩んだのだろうと、思った。
自分は知らされないままでも良かったかもしれないけれど、疑いを持ち始めていたことにさえ彼女はおそらく気づいていて、だからこそ、自ら話してくれた。
そしてそれを全て、堂上は知らないふりをしてくれた。
それはーー2人の優しさだ。
「頭を上げろ」
堂上の一言で、咲はゆっくりと頭を上げた。
「手塚士長と、柴崎士長はご存知です。
毬江も知りました。
もう、隠し切れることではありません。
申し訳ありませんでした」
もう一度深く下げられた頭。
彼女はもしかしたら、腹をくくったのかもしれない。
刺されてまで守ろうとした相手。
それがどんなことを意味するのか、分からないはずもない。
「……あいつにも言うのか」
堂上の口から次に出てきたのは、その言葉だった。
「……どうしようかと、迷っています。
言えば笠原士長は傷つくかもしれない。
傷ついても、無理に許そうとしてくれるかもしれない。
それじゃあ意味がない。
謝罪は、自分のためにするんじゃないですから」
穏やかな目は、誰かに似ていた。
深い懺悔をたたえる瞳に。
思慮深く、誰よりも勇敢な。
(……稲嶺司令……)
彼女は似てきた、と思う。
今まで流れてきた血が、彼女たちを作ったのかもしれない。
謝罪
