本編 ーzeroー
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「君もこの本好きなの?」
書店で声をかけられ、咲は顔を上げる。
どこかで見たことのあるような顔立ちの男だ。
「ええ」
良く知らない人は、どうも苦手だ。
人見知りの傾向があるのは自分でもわかっているが、人に知られたくはない弱点なのだ。
「俺も好きなんだよね」
本に触れる手は優しく、それを見ただけで不思議と緊張は解けた。
「登場人物でさ、祐輔っているでしょ。
彼、俺の弟によく似てるんだ。
真面目で、曲がったことが嫌いで、家族を愛していて。
頑な少年みたいなところがね」
その家族を思う横顔が、純粋に、好きだと思った。
「素敵な弟さんですね」
彼は嬉しそうに笑った。
そんな彼もやはりどこか、そんな頑な少年の部分を残しているように見えた。
何となく雰囲気でそのまま一緒に店を出、喫茶店でお茶をした。
本の話は尽きることがなく、互いに本当に本が好きなのだと思い知った。
別れ際になって、互いに名乗っていなかったことに気づく。
「俺は手塚慧」
その言葉に、彼が誰に似ているのかを思い出した。
そして、彼が頑な少年と称した弟が誰なのかも。
「空太刀咲です」
手塚さんと呼ぶとややこしいな、と勝手に思った。
お互いに携帯のアドレスを交換し、
先ほど勧め合った本を読み終えたら感想を送る約束をして別れた。
世間ってせまい
