本編 ー4thー
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
きらりと銀が光ったとき、咲の頭はいつになく冷静だった。
自分よりも体格のいい男が、目を血走らせて自分の後ろにいる手塚慧めがけて走ってくる。
彼の手にはナイフ。
切れ味がよさそうだ。
動き、体格を見てもあれは素人ではない。
上官を呼ぶ時間もないだろう。
しかし体術で勝つことができるかと聞かれると首をひねってしまう。
となれば、方法は一つしかないだろう。
「咲!」
激痛の後、手塚慧の声が聞こえた。
悲鳴のような声だった。
自分の口から、うめき声が出る。
もうどうにでもなればいい。
そう思って、男の腕をつかみ、ナイフを力いっぱい抜けば、差したときを超えるのではと思うほどの激痛。
意識を保とうと大声を出し、男の足を払う。
そのまま自分も体制を崩して倒れてしまうも、誰かが男を拘束してくれるのが分かった。
手錠をかける音や、周囲のざわめきが耳に届いているのに、脳では処理されていないような、不思議な感覚の中に漂っていた。
おぼろげな意識の中、止血されているのを感じる。
目を開ければそこには、一切の表情を消している手塚慧の顔。
それが、彼が動揺している何よりの証拠だった。
「大、丈夫」
必死に声を出せば、大きくて温かい手が、頬に添えられた。
半年ぶりに触れた手だった。
冷たいのは自分の血で濡れているからだろうか。
彼がなにかを怖れているからだろうか。
「冗談のつもりだったのに」
彼の呟きに、私が震える唇で笑うと、彼もやっと小さく笑みをこぼした。
「約束したのは俺だよ。
だから全て片付けたら、必ず迎えに行く」
咲、
そう呟いた彼は、防衛部隊員ではなく、咲を見ていた。
咲は必死に口を動かす。
何を言いたいのかと、慧は口元に耳を寄せ、そして目を見開いた。
「……分かった。
まったく、君は柴崎さんにすっかり似てきた」
そしてふっと泣きそうな顔で笑った。
「今だけ許してくれ。
すぐに、また戻るから」
震える声は、咲だけが知っている慧のもので。
ブラックアウトしていく意識の中で、咲は頷いた。
ただの2人に戻る一瞬
