本編 ーthirdー
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気配に顔を上げる。
カーテンから山本の顔がのぞいていた。
「大丈夫か?」
「うん、ごめん、急に休んで」
山本は首を振って、カーテンの中に入った。
咲のことを気遣ってだろう。
私服で来ている。
「ほら、土産」
その箱は、咲が好きな店の箱だった。
「今忙しいのに……」
「ケーキ買いに行く時間がねぇほどじゃねぇよ。
頑張ったんだ、食おうぜ」
眩しいくらいの笑顔に、咲もひとつ頷く。
カーテンの向こうから、佐々木が様子をうかがう。
ケーキを口に運う咲は、今まで見たことがないような柔らかい笑顔を浮かべていた。
(甘党なのか、それとも)
正面に座る、眩しい笑顔の山本を見て、佐々木は笑みをこぼした。
(なによりだ)
ようやく食べ物をまともに口にしたようで、密かに胸をなでおろす。
医務室から出たところで、佐々木は山本を呼びとめた。
「できたらまた来てやってくれないか。
君が来たら彼女も食が進むようだ」
「食べてないんですか?」
曇る笑顔に、佐々木は頷く。
「……先輩も気にしていて。
明日連れてきます」
「忙しい時期だろうから、君も体には気をつけるんだよ」
「特殊部隊なんて、そうそうくたばりませんよ」
彼は少しだけ寂しそうに笑った。
「……先生。
あいつは、本当はここに居るべきじゃなかったのかも知れない」
それはもしかしたら、彼女に関わる誰もが思い始めていることかもしれない。
「あいつはまだ若くて、ただの女の子なのかも知れない。
笠原士長みたいに、守ってやれる誰かが必要なのかもしれない」
堂上二正の過保護度合いは佐々木も聞き及んでいる。
山本もきっとそのことを言っているのだろう。
「でも、あいつはそれを望んでないんだ」
彼女は苦しみ悩んでいる。
でも、この青年も同じように悩んでいるのだ。
佐々木は山本の頭をかいぐった。
その虚をつかれたようなまるい目が、若々しく愛らしい。
「みなで悩めばいい。
お前が独りで背負い込むことじゃない」
俺達は、孤独じゃない
