本編 ーthirdー
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バスの屋根のうえから人が落ちていく。
(笠原士長が、撃った)
彼女が震えているのは分かった。
私は震えなかった。
知っていた、この音。
初めて聞いたのは身体の中。
撃ちこまれたこともあるし、撃ち込んだこともある。
だからもう、怖くなんかない。
でも彼女は違う。
(このままじゃ駄目だ)
震える彼女にかけより、震えてどうしようもなくなっている弾とマシンガンを取り上げ、手早く弾を込め返す。
青ざめて震える笠原。
「あ……咲ッ……」
(ダメだ)
咲は視線を鋭くしてマシンガンを構え、笠原をかばうように立った。
敵は待ってくれない。
マシンガンをぶっ放す。
嫌いじゃないんだ、銃は。
人を傷つけるけど、人も守れるから。
独りでも多く撃てば、命が助かるかもしれない。
今の彼らは正気じゃないから、倒れた方がきっと幸せ。
懲りずにバスの屋根の上に現れた人たちは、向こう側に落ちて消えた。
よく声は聞こえないが、背後で堂上が笠原を励ましているのが分かる。
ぴゅん
防弾チョッキを銃がかすめる。
そう、防弾なのだ、彼らも大丈夫。
死にはしない。
むしろ今は仲間からの圧力による圧死が問題。
彼らは気が狂っている。
狂った獣に麻酔銃を撃つようなものだと思えばいい。
球を補充し、銃弾が飛んできた方向へと更に撃つ。
「空太刀!
そこからはもう来ないそうだ!」
堂上の指示に、咲は振り返って頷く。
少し離れたところ、咲の持ち場だった場所では山本が1人で撃っている。
あ、吐いた。
あのままではだめだ。
慌てて駆け寄り替わりに撃つ。
「わりぃ……気持ち悪っ」
「やめる?」
視界の端で堂上が持ち場に戻ろうにも笠原がまだ撃てるまでに時間がかかりそうなせいで戻れないでいるのが見えた。
「お前やるんだろ?
ならやる」
「馬鹿じゃない?」
「馬鹿で結構」
仕方がないから、球を込めてやる。
「無理だと思ったらすぐに引いてよ」
「チッ……かっこ悪ぃ」
震える手に、銃を握らせる。
青ざめた頬を叩くと、赤みが戻った。
ただ赤くはれただけかもしれないが。
「私笠原士長の穴に行くから」
山本がぐいっと腕をつかんだ。
「おれが言うのもなんだけど……
死ぬんじゃねぇぞ」
「馬鹿」
私は笑った。
「ちゃんと、帰ってくる」
そしてまた走る。
「替わります」
マシンガンを構えて撃つ。
堂上は眉をしかめると、分かった、と言って笠原を連れて戻る。
「生命の防衛を最優先にしろ。
良いな」
玄田の指示を繰り返し叫ぶと、2人は走って行った。
(みんな優しいんだ)
咲は不釣り合いにも、笑顔を見せた。
それはいつも通り泣きそうな顔だったけれど、それでも、咲の笑顔だった。
あと10分
