本編 ーthirdー
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咲はもしものことを考え、無線を外す。
「当てなくていいならな」
無線の音は消えた。
ぶれて聞こえることのない声。
進藤は、まだ生きて隣に居る。
(かっこつける伯父さんは嫌いだ。
嫌い嫌い、大っきらい)
「伯父さんは引っ込んで」
咲は腰を上げながら怒鳴った。
それはもちろん、進藤が持つ無線に入っている。
「馬鹿、何を」
「馬鹿はどっち?
そんなことしたら撃てなくなる!」
咲はさっと駆けて、進藤が抜けた場所を陣取る。
「おい咲!!
勝手な真似はよせッ!!」
隣の狙撃手が怒鳴るも、聞いていられない。
彼も自分の持ち場を離れて咲を元の場所に連れ帰る余裕はないのだ。
それをいいことに、咲は銃を構える。
ぶわっと、鳥肌が立つ。
集中力が爆発的に高まった気がした。
進藤の腕を撃ち抜く範囲なら、限られている。
当たりをつけて目を凝らす。
「相手は腕の一本くらい、惜しくないらしいから」
咲の銃口から銃弾が飛ぶ。
まず1発。
かなりいいところに行ったに違いない。
相手がひるんでいるのが分かる。
反撃が激しいが、咲は瞬き一つしない。
全て当たらないことが、見えていた。
赤い筋が咲の頬に流れる。
ひりりとした痛みと、血が流れるのが分かる。
(上等)
思わず口の端が上がった。
ずいぶん相手は脅えているようだ。
隣の狙撃手が激しい反撃に撃つのをやめて身を潜めた。
「おい空太刀、伏せろ!!」
でも咲は引き続き撃つ。
相手が当てられないことを、咲は分かっていた。
当てられないから、なんとか当てなければと焦り、これだけの量を撃つのだ。
相手は怯えている。
銃線をよけながら咲の後ろへと回るべく移動している進藤にも、敵の気持ちが分かった。
彼自身にも経験があるのだ。
命を捨てる覚悟で、自分の命を奪おうとする奴ほど、恐ろしいものはいない。
まだペーペーの手塚を焦らせてはならないと分かっていても、思わず無線に怒鳴ってしまう。
『手塚!まだか!』
その言葉に続いて、馬鹿野郎!と進藤の罵声が入った。
咲が我を忘れているのでは、と2階の窓を開けながら手塚は推察する。
隙間に、銃口を差し込んで、軌道を確認する。
(あんな顔、見たの初めてだ)
普段無表情なだけに、咲のショックを受けた顔が目に焼きついている。
(あいつにとって、進藤一正は特別なんだ)
不意に浮かんだ兄の顔を、思考の外に追いやる。
ちょうど手塚が狙う木のあたり、上から人が一人落ちてくるのが見えた。
どうやら咲が撃ち落としたらしい。
応戦が激しい。
その銃線をじっと見つめ、
(あと2人……)
引き金を引けば、咲の方も撃ったようだった。
どうやらどちらも命中したらしく、銃撃がやんだ。
咲は進藤に肩を掴まれ、ひっくり返るようにして身を隠した。
とは言え、メインはこれで駆除完了、だ。
すぐにまた補充されるだろうから予断は許されない。
……のだが。
「この馬鹿野郎!!」
進藤が居ても立っても居られない、とでもいうかのように咲の頭を、怪我していない方の手で殴りつけた。
ヘルメットのせいで進藤自身もかなりの痛手を受けたらしく、呻き声をあげて手を押さえている。
ヘルメットをかぶっていても響いたのか、咲も頭を押さえながら吠えた。
「馬鹿はそっちでしょ!」
「いいやお前だ!」
「伯父さんの馬鹿!
馬鹿馬鹿馬鹿!!」
「だまれ!
お前が死んだら姉さんが化けて出るわ!」
「望むところ!」
「アホか!馬鹿野郎!!この親不孝者!!」
「煩い!!
伯父さんなんか、大っ嫌い!!」
流石に進藤もショックを受けたのか言葉を返せなくなったタイミングで、彼の肩に手がかけられた。
「親子喧嘩は終わってからにしてください!」
進藤に代わるために上がってきたのだろう。
鬼の形相の小牧に怒鳴られ、進藤はしぶしぶ引き上げた。
貴方が(お前が)特別なんだ
