本編 ーzeroー
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ーー 毬江ちゃん ーー
いつも笑顔を向けてくれるあの人を呼びたい。
ーー 毬江ちゃん ーー
何気なく助けてくれるあの人を。
でも、ここは図書館で、もしこんなことをされているって知ったらあの人は何を思うだろう。
でも、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い ーー
不意にきつく閉じていた視界に光がさした。
身体に触れていた気持ち悪い手も取り除かれる。
どん
続く大きな地響きに身体が震えた。
「図書館で何をしている!!」
毬江の耳にも聞こえる大声。
そっと目を開く。
目の前にいるのは、男に馬乗りになって必死に抑えつけようとしている咲。
「この図書館で!!
あんたは!!!
私の友達を!!!」
彼女は怒っていた。
ただただ、怒っていた。
怒りにまかせて、男を引き倒したのだろう。
だが男が無理に振りほどこうとすれば、軽い咲の身体などどうということはない。
「どけっ!!」
勢いよく突き飛ばされ、さらに蹴り飛ばされ、咲は図書館の棚に派手にぶつかる。
逃げようとした男が、駆けつけた隊員に取り押さえられるのと、本棚から本が落ち始めたのはほぼ同時だった。
毬江は息を飲んで思わず目を覆った。
「馬鹿!!」
駆けつけた進藤の舌打ちまでは毬江には聞こえないが、駆け寄る人の気配に再び目を開ける。
進藤に助け出された咲は、激しく咽せていた。
「私は……大丈夫」
まだ身体が痛むのだろう。
だが彼女の震える声は進藤に届いていた。
その時の彼の驚いたような表情に、柴崎は首をかしげながら毬江に駆け寄る。
「毬江さんの……茶髪の人、早く……早く呼んであげて」
二人の親しげな姿は、図書館では何度か見かけていたから、咲がいいたいこともすぐに分かった。
進藤は頷き、振り返る。
「柴崎、小牧に連絡。」
加えて毬江を頼み、咲に立てるかどうかを聞く。
「すみません、もうしばらくしたら……大丈夫だと思います」
「いつまでたっても強がりだな。
母さん似だ」
進藤は咲を抱き上げ、医務室に向かう。
10年以上前だったか。
妙に大人びたちび子が、階段で転んだ。
本を手放せば怪我をしなかっただろうに、本が傷つくのを恐れて、抱きしめていた。
その時も、助け起こした時に同じことを言っていた。
出会ってもいない彼女の母と同じで、我が身より本を大切にする姿に胸が苦しくなったものだ。
今でもまだ未成年の子どもで、自分のことに夢中になっていてもおかしくないのに、昔からいつも自分は後回し。
いつか彼女の母の様に、本の為に、誰かの為にと命を落としてしまうのではないかと不安に駆られる。
「進藤さん……後でロリコンって言われても知りませんよ」
でも自分には心を許す毒舌に、彼女は確かにここにいるのだと安心する。
「馬鹿。
自慢の姉の娘だからな。
担ぎあげたら罰が当たる」
君たちは出会ってもいないはずなのに、
どうしてこんなにも似ているんだろう
