本編 ーthirdー
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お母さんの腕をつかんで、ソファに座らせる。
シクシクすすり泣いている様子に、胸が痛んだ。
温かく柔らかい肩に触れていると、縋りつきたくなってしまうのは、見たことのない母を思い出させるからだろうか。
「そんなふうに思っていたなんて……」
人は関われば関わるだけ、きっと誤解もするし、喧嘩もする。
こんなとき、なんて言えばいいのかなんて、見当もつかないけれど。
でも、どうしてだろう、自然と頬が緩んでしまう。
「似ておられますね」
お母さんはぎょっとしたように顔を上げた。
「あの……誰と誰が?」
「お母さんと笠原士長です」
声が明るくなってしまっている自覚があった。
我に返ったの顔、母さんは急に恥ずかしそうに頬を染める。
かわいいなぁ、と思ってしまう。
「思ったらこう、という雰囲気とか、声質とか、ぶつかり始めたら止まらないところとか……そっくりで」
昨夜の強引な笠原を思い出すと、やはり血がつながっていることを納得してしまう。
ぽかんとしたお母さんの顔が面白くて、なんだかほっとした。
不思議だ。
「申し訳ありません、失礼でしたよね。
私、空太刀咲と申します。
笠原士長の次に配属された2人目の女子隊員なんです」
お母さんが静かに頷いた。
どうやら怒りは収まってしまったらしい。
「あなた……失礼だけど、おいくつなの?」
「二十歳です」
「二十歳!?
御両親は良く許されたわね」
咲はゆっくりと笑って見せた。
「両親は早くに他界しています。
だから、お母さんのように止めてくれる人はいませんでした」
お母さんは言葉を失った。
死人に口なし、とはこんなときに使う言葉ではないけれど、もう自分の中でこの件に関しては充分すぎるくらい割り切っていた。
「笠原士長は怒っているけれど、娘の目標や誇りを蔑ろにしてでも身を案じてくれる存在が、私は正直羨ましいです」
玄田が遅くなった、と慌てて駆けこんできたが、落ち着いている様子に目を瞬かせる。
「上司が参りましたので、私は失礼いたします」
お母さんは少し顔を赤らめた。
「……あの」
部屋を出ようとしたとき、声をかけられ、咲は振り返る。
「……ごめんなさいね。
そんなつもりじゃなかったの」
申し訳なさそうに垂れた目。
皺が寄ったその目じりは、きっと笠原のせいで何度も吊りあげられ、何度も優しく垂れたのだろう。
咲は小さく笑みを見せてから首を振った。
(やっぱりそっくり)
いいな、なんて
