本編 ーthirdー
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「嫌です。
あの人と話すことなんてありません。
いつもの手なんです。
ああやってシクシクないて、私が悪いみたいに追い詰めて」
「良いから落ち着けって」
笠原はそれどころではないだろうが、咲には申し訳ないことをしていると堂上は感じていた。
彼女の身の上を知っているからこそ、親子喧嘩のこんな場面を見せたくはなかった。
冷静な対応をしているからこそ、申し訳なく思う。
だからといって、笠原(こいつ)を放っておけるわけもなく。
(とにかく、お母さんと2人にしておくのはキツイだろう。
早く誰か回さんと)
玄田はまだだろうか、と思いつつ、彼がきたら来たで話がこじれそうかもしれない、とも思う。
何か解決できる策はないものか、と笠原の背中を見ていて、ふと思い出す。
「お前、今携帯持ってるか。
親父さんの職場は分かるか。
お母さんを引き取りに来てもらえ」
「このまま第二戦に持ち込むんですか!?」
「親父さんは大丈夫だ。
しっかり向き合って、ケリつけてこい」
不安げな顔をしながら、笠原は携帯を取り出し、恐る恐るダイヤルを回す。
(そうだ、こいつには味方がいる)
そう思うほど、残してきた小さな背中が、孤独に見えた。
夕食時に水をかけられたときは、山本が殴りかかるかと不安にもなった。
だからこそその前に、堂上が目に余ると怒鳴ろうかと思った。
しかし、山本が静かに言ったのだ。
ーあいつは、助けられるの、嫌いなんすよー
その悔しそうな顔が、二重で俺の胸を締め付けた。
「……来てくれるそうです」
電話を終えた笠原が、ほっとした顔で言った。
「悪かったなって」
(あの子にはこうして助けてくれる人が少なかったのだろう)
座っているせいで見下ろす位置にある笠原の頭を、堂上はかいぐった。
(だから、教えてやるんだ。
ゆっくり、ひとつずつ……みんなでな)
昨夜は笠原が咲の捨てられた服を一緒に探してくれたと聞いた。
その前の晩は、山本が咲と話しているのをロビーで見かけた。
積み重ねが、彼女をきっと、安心させる。
彼女にきっと、支えてくれる人をを感じさせられる。
そして、頼ることを覚えられる。
これも上司の務めなり
