本編 ーthirdー
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「笠原郁、いますか?」
中年の女性が、ロビーを尋ねてきたのを、休憩中の咲と山本は見ていた。
「笠原郁ですか?」
「ええ、特殊部隊に所属しているらしいのですが」
業務部の女が笑っている。
(これ、怪しい)
「呼び出しますので、少々お待ちください」
(呼び出しがスムーズすぎる)
咲はあわてて業務部との間に入る。
「申し訳ありません、わたくし、図書隊員の空太刀と申します。
現在笠原は業務中でございます。
もうしばらくすると休憩に入ると思うのですが、ご家族の方ですか?」
「空太刀さん、お急ぎなのよ、失礼でしょ。
すぐに放送入れますね」
業務部が席を立った。
(まずい)
「はい、母です。
至急話したいことがありまして……」
「関東図書士笠原士長、至急ロビーまでお越しください」
響いた放送。
業務部の動きが早すぎる。
「そちらのソファでお待ちください。
来たら来客室にお通ししてね、空太刀一士」
業務部が咲を見て、嫌な笑みを浮かべた。
(……笠原士長)
「……俺、士長のとこ行ってくる」
山本の言葉に、咲は頷く。
「今は第3訓練場のはず」
「了解!」
裏口に向かって走り出す山本。
「あ、それだと……」
咲の声もむなしく、山本はもう姿が見えなかった。
(……入れ違いになるかも)
そして案の定、表から笠原が駆けこんできた。
至急の呼び出しだったのだ、職員専用裏口からはいらなければならないなんてことは、彼女の頭にあるはずがない。
そして。
「あんたって子は!」
母親を名乗っていた女性が、彼女の頬を叩いた。
「なんだってこんな仕事に……
家に帰るわよ!」
大きな声で郁を怒鳴るお母さん。
周りには一般のお客さんもいる。
咲はあわてて2人の間に入った。
「落ち着いてください」
なんとか距離を離す。
「こんな野蛮な仕事、今すぐ辞めなさい!」
(それ笠原士長に言っちゃダメ!)
今度は笠原の手がお母さんの頬を叩いた。
その目は、涙に濡れている。
「そんなにアタシが気に入らないなら、
縁切ってあんたの理想の娘をどこかからかもらってくればいいじゃない!」
「士長!」
「笠原、そこまでだ。
ここでは目立ちすぎる」
救世主現る、だ。
むしろ飼い主というべきか。
後は任せろ、という堂上の視線に、有難く下がらせてもいたいところだが、とりあえず来客室までは連れて行かねばならない。
男一人で感情を高ぶらせた女2人を案内するのは骨が折れるだろう。
笠原とすれ違っても、ちゃんと堂上を呼んできてくれた山本に感謝だ。
(でもこんなことになるなんて、昨夜探してくれていたのがどこかで見られていたのかもしれない)
胸がまた、ツキンと痛んだ。
怪しい雲行き
