本編 ーthirdー
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夕食後、山本に呼び出された咲は、ラフな部屋着で談話室に現れた。
山本はスポーツ飲料の缶を飲み干したころだった。
「……なぁ、なんで黙ってるんだ?」
「なんのこと?」
ベンチに座る山本の前に、咲は立つ。
長話をしたくないのが、分かる。
逃げたいと思っているのも、分かる。
それでも。
「とぼけるな」
語気が荒くなった。
だがそれに動じる女でもない。
「じゃあほっといて。
話って、まさかそれだけ?」
「だけって言うなよ!」
咲の肩がピクリと動く。
2人の間に沈黙が降りた。
「お節介か?」
咲は首を振る。
「俺じゃ頼りないか?」
咲はまた首を振る。
山本は、肘を膝につき、顔をかくすように手を組んだ。
「見ていたくねぇんだ、あんなの。
あいつだって殴ってやりたかった。
けどお前、そう言うの、嫌だろ?
人に助けられんの、嫌なんだろ?」
その言葉に、彼が自分よりも自分を理解してくれていることを知って、胸が締め付けられるような気がした。
自分の何倍も、彼の方が傷ついている。
「だからって、強がるのもいい加減にしろよこの馬鹿!」
吐き捨てるように言われた言葉に、咲は動揺が隠せない。
「……ご、めん」
「謝んなよ、俺の立場がねぇ」
山本はため息をついてから顔を上げた。
「いいか」
下から山本に見あげられるのは変な感じがした。
ぐいっと両手を掴まれて、少しだけ痛いけれど、山本の手は大きいんだと思った。
「何かあったらいつでもいいから連絡しろ。
それから、笠原士長をもっと頼れ。
あの人も心配してくれてっから」
大きな目に、咲は吸い込まれるんじゃないかと思った。
温かい手に、溶けてしまうんじゃないかと思った。
「それから、みんながお前を大切にしていることを、自覚しろ」
静かな言葉は、咲の胸の内をかき乱す。
固まった咲から、山本は手を離した。
「お前も、特殊部隊(なかま)、だろ?」
