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「眼球をえぐりだされている。
普通ならショック死していてもおかしくない状況よ。
それにここには薬も足りない。」
ぼんやりと声が聞こえた。
ひどい痛みだ。
死んでしまいそう。
きっともうすぐ死ぬんだ。
ファイのところに、行くんだ。
「お願い、ファイが死んじゃうよ!!」
モコナが泣いている。
こんなオレのために泣かなくていいのに。
「だめだ。
オレが生きたままなら……小狼君の魔力も生きる。
半分の魔力でも大きすぎる。
彼を……止められなくなる。」
話す度に、息を吸う度に、堪え切れない激痛に襲われる。
それでも言わなければいけないと思った。
「ファイ!!」
そんな悲しそうな顔をしないで。
その隣で殺気を飛ばしているのは、見なくても誰か分かる。
黒りんだ。
激しい音がして、傷に響いた。
痛い。
そう言えば黒りん、オレの蹴りの後、神威君に蹴られて、さっき小狼君に蹴られた時、お腹を気にしていたな。
折れているんじゃないかな。
その後だって、戦ったんじゃないだろうか。
他にも怪我、してるんじゃないかな。
パラパラと砂が落ちる音がする。
壁でも殴ってへこませたのかな。
黒りんが。
「誰がそんなふうに腹をくくれと言った?」
こんな怒っている声、聞いたの初めてかも。
首根っこを掴まれる。
あまりに痛みがひどくて、めまいがして、焦点が合わない。
最後に黒たんの顔、見たかったのにな。
「ダメ!黒鋼!!」
優しいモコナ。
止めなくていいのに。
怒って当然なのに。
「ごめんね」
笑えたかな。
紅い色はぼんやりとしか見えない。
だめだ、疲れているのかな。
もうすぐ死ねるのかな。
「魔女。
こいつを死なせねえ方法はあるのか」
意外な言葉に驚く。
どうしてこんなに怒っているのに。
「在るわ。
けれどあたしがやれば対価が重すぎる」
「どうすればいいの!?」
止めなければ、と思っていたところ、ばたばたと人が入ってくる気配がする。
「やっぱり地下の水がほとんど消えちまっている!」
「あの場におれが現れたからです」
「いいえ、僕のせいです。
眠ったままあの子を引き寄せてしまったのは僕です。
だからその後のことが起こるべくして起こったとしても、その場があの地下になったのは僕のせいです」
「何がきっかけだとしてもなくなった水はもどりません」
牙暁さんが困惑したように呟く。
「お久しぶりです、侑子さん。
お願があります。
水がほしいんです。
この地下の水槽を満たすほどの」
聞いたことのない声だ。
誰だろう。
「対価がいるわ」
「分かっています」
「黒鋼、あたしに地下水槽をいっぱいにする水を頼みなさい。
そしてそのかわり、昴流に言いなさい。
吸血鬼の血をファイに与えろと。
吸血鬼の治癒能力は人間をはるかにしのぐ。
特にその2人は原種よ。
その血を受ければファイは死なないわ」
なぜみな、オレを生かそうとするんだろう。
「だめだ」
「神威……まって、ね」
「黒鋼。
ファイを死なせたくないのは貴方の願い。
ファイはそれを望んでいない。
なら貴方も彼を生かした責を負わねばならない」
なぜそれが分かっているのに、次元の魔女さんは願いを叶えるんだろう。
飛王の目論見を阻止するため?
サクラちゃんを守るため?
どちらにせよ、オレにはもう、無理な気がする。
「何をすればいい?」
それでも喰いつく黒様。
どうして君は、いつもそうやって先頭に立ってみんなを守るんだろう。
オレを守るんだろう。
傷だらけになって、ボロボロになって、それでもなお、盾になり、剣となる。
無視して、殺してしまえばいいのに。
「貴方が餌になりなさい。
昴流の血を飲ませるときに貴方の血も一緒に飲ませなさい。
そうすればファイは貴方の血だけを受け付けるようになる。
いえ、貴方の血しか飲めなくなるわ」
そんなこと許せるはずがない。
オレが、彼女の血を生きる糧にするなんて。
「それってもし黒鋼に何かあったらファイは……」
「死ぬわね」
「かまわん。
俺は当分死ぬつもりはないし、この馬鹿を殺すつもりもない。
水の対価は俺が払う。
だから血をよこせ」
「……や……めろ」
この馬鹿は身体を喰われると言われているのに易々と引き受ける。
どのくらいの血を必要とするのかも分からないのに。
いや、もし俺が彼女を喰い殺すとしても、彼女はその身を差しだすのかもしれない。
そう思うと、なぜか体が、心が震えた。
同時に感じる強い殺気にも。
「だまれ。
お前の命は俺がもらう」
本当にもの好きだと思う。
訳が分からない。
「俺がやる」
「でも神威」
「もう誰にも昴流の血はやりたくない。
腕を出せ」
頭が持ち上げられる。
ひどい激痛に、優しい手が触れる。
耳もとに吐息がふれた。
「心配するな。
俺が守る」
囁き声が、脳を麻痺させる。
どうしてそんな、優しい声をかけるんだろう。
ーふぁいのことだって、守ってやる!ー
不思議と、幼い子供の声が聞こえた気がした。
口に、鉄の味が染みわたる。
次の瞬間、激痛が体中を襲った。
みしみしと、体中がきしむ音がする。
彼女の小さな息をのむ音がする。
彼女の腕に爪を立てていたことに気がついた。
それが皮を破り、肉に突き刺さっている。
爪が鋭くなってきているようだ。
血の匂いが、鼻につく。
ふわりと、抱き寄せられた。
腕が背中に回る。
「大丈夫だ。
俺が守る。
お前も、少年も、姫も、白饅頭も……小狼も」
耳もとでささやかれる言葉は、ひどく切なく、苦しい。
身体の痛みを我慢できず吠えるオレを、なだめるように彼女は抱きしめた。
その背にオレはまた爪を立て、血が滴るのを感じる。
おぼろげに、彼女が背に傷を負っていたことを思い出す。
でも、力を緩めることができなかった。
そのくらいひどい、激痛だった。
指を伝う血。
ぬるりとした感触に、目の前が赤く染まる。
痛みが和らいでくると、それに変わるように無性に喉が渇いた。
自分を抱きしめているこの体の、この皮の下に流れる血が、ひどく匂う。
自分がそれを渇望していることに気がついた。
オレの手が緩んだことに彼女は気づき、顔を覗き込む。
青白くも綺麗な顔が、赤い瞳が、オレを捕える。
「お前は、ただ、生きてくれさえすればいい」
その言葉の意味なんて、考えもしなかった。
ただ、喉が渇いていた。
ただ、彼女の血がほしかった。
腕から滴る血に吸い寄せられる様に口をつける。
血が口に触れた途端、溢れる枯渇感に、我を忘れて血を啜った。
無心に歯で傷を抉り、血を啜った。
オレの頭を彼女が抱くことに気づいたのはしばらくしてからだった。
ぼんやりと顔を上げる。
あたりにはオレ達以外は誰も居なくなっていた。
至近距離で青白い顔が、かすかに微笑んだ。
今度は確かに、片方の目でそれを確認できた。
だからオレは、目の前の唇にかみついた。
彼女は抵抗することなく受け入れた。
ひどく柔らかく、甘く、温かいそれを、夢中で舐め、喉の渇きを癒す。
流れ出た血は甘美で、この世のものとは思えない味わいだった。
普通ならショック死していてもおかしくない状況よ。
それにここには薬も足りない。」
ぼんやりと声が聞こえた。
ひどい痛みだ。
死んでしまいそう。
きっともうすぐ死ぬんだ。
ファイのところに、行くんだ。
「お願い、ファイが死んじゃうよ!!」
モコナが泣いている。
こんなオレのために泣かなくていいのに。
「だめだ。
オレが生きたままなら……小狼君の魔力も生きる。
半分の魔力でも大きすぎる。
彼を……止められなくなる。」
話す度に、息を吸う度に、堪え切れない激痛に襲われる。
それでも言わなければいけないと思った。
「ファイ!!」
そんな悲しそうな顔をしないで。
その隣で殺気を飛ばしているのは、見なくても誰か分かる。
黒りんだ。
激しい音がして、傷に響いた。
痛い。
そう言えば黒りん、オレの蹴りの後、神威君に蹴られて、さっき小狼君に蹴られた時、お腹を気にしていたな。
折れているんじゃないかな。
その後だって、戦ったんじゃないだろうか。
他にも怪我、してるんじゃないかな。
パラパラと砂が落ちる音がする。
壁でも殴ってへこませたのかな。
黒りんが。
「誰がそんなふうに腹をくくれと言った?」
こんな怒っている声、聞いたの初めてかも。
首根っこを掴まれる。
あまりに痛みがひどくて、めまいがして、焦点が合わない。
最後に黒たんの顔、見たかったのにな。
「ダメ!黒鋼!!」
優しいモコナ。
止めなくていいのに。
怒って当然なのに。
「ごめんね」
笑えたかな。
紅い色はぼんやりとしか見えない。
だめだ、疲れているのかな。
もうすぐ死ねるのかな。
「魔女。
こいつを死なせねえ方法はあるのか」
意外な言葉に驚く。
どうしてこんなに怒っているのに。
「在るわ。
けれどあたしがやれば対価が重すぎる」
「どうすればいいの!?」
止めなければ、と思っていたところ、ばたばたと人が入ってくる気配がする。
「やっぱり地下の水がほとんど消えちまっている!」
「あの場におれが現れたからです」
「いいえ、僕のせいです。
眠ったままあの子を引き寄せてしまったのは僕です。
だからその後のことが起こるべくして起こったとしても、その場があの地下になったのは僕のせいです」
「何がきっかけだとしてもなくなった水はもどりません」
牙暁さんが困惑したように呟く。
「お久しぶりです、侑子さん。
お願があります。
水がほしいんです。
この地下の水槽を満たすほどの」
聞いたことのない声だ。
誰だろう。
「対価がいるわ」
「分かっています」
「黒鋼、あたしに地下水槽をいっぱいにする水を頼みなさい。
そしてそのかわり、昴流に言いなさい。
吸血鬼の血をファイに与えろと。
吸血鬼の治癒能力は人間をはるかにしのぐ。
特にその2人は原種よ。
その血を受ければファイは死なないわ」
なぜみな、オレを生かそうとするんだろう。
「だめだ」
「神威……まって、ね」
「黒鋼。
ファイを死なせたくないのは貴方の願い。
ファイはそれを望んでいない。
なら貴方も彼を生かした責を負わねばならない」
なぜそれが分かっているのに、次元の魔女さんは願いを叶えるんだろう。
飛王の目論見を阻止するため?
サクラちゃんを守るため?
どちらにせよ、オレにはもう、無理な気がする。
「何をすればいい?」
それでも喰いつく黒様。
どうして君は、いつもそうやって先頭に立ってみんなを守るんだろう。
オレを守るんだろう。
傷だらけになって、ボロボロになって、それでもなお、盾になり、剣となる。
無視して、殺してしまえばいいのに。
「貴方が餌になりなさい。
昴流の血を飲ませるときに貴方の血も一緒に飲ませなさい。
そうすればファイは貴方の血だけを受け付けるようになる。
いえ、貴方の血しか飲めなくなるわ」
そんなこと許せるはずがない。
オレが、彼女の血を生きる糧にするなんて。
「それってもし黒鋼に何かあったらファイは……」
「死ぬわね」
「かまわん。
俺は当分死ぬつもりはないし、この馬鹿を殺すつもりもない。
水の対価は俺が払う。
だから血をよこせ」
「……や……めろ」
この馬鹿は身体を喰われると言われているのに易々と引き受ける。
どのくらいの血を必要とするのかも分からないのに。
いや、もし俺が彼女を喰い殺すとしても、彼女はその身を差しだすのかもしれない。
そう思うと、なぜか体が、心が震えた。
同時に感じる強い殺気にも。
「だまれ。
お前の命は俺がもらう」
本当にもの好きだと思う。
訳が分からない。
「俺がやる」
「でも神威」
「もう誰にも昴流の血はやりたくない。
腕を出せ」
頭が持ち上げられる。
ひどい激痛に、優しい手が触れる。
耳もとに吐息がふれた。
「心配するな。
俺が守る」
囁き声が、脳を麻痺させる。
どうしてそんな、優しい声をかけるんだろう。
ーふぁいのことだって、守ってやる!ー
不思議と、幼い子供の声が聞こえた気がした。
口に、鉄の味が染みわたる。
次の瞬間、激痛が体中を襲った。
みしみしと、体中がきしむ音がする。
彼女の小さな息をのむ音がする。
彼女の腕に爪を立てていたことに気がついた。
それが皮を破り、肉に突き刺さっている。
爪が鋭くなってきているようだ。
血の匂いが、鼻につく。
ふわりと、抱き寄せられた。
腕が背中に回る。
「大丈夫だ。
俺が守る。
お前も、少年も、姫も、白饅頭も……小狼も」
耳もとでささやかれる言葉は、ひどく切なく、苦しい。
身体の痛みを我慢できず吠えるオレを、なだめるように彼女は抱きしめた。
その背にオレはまた爪を立て、血が滴るのを感じる。
おぼろげに、彼女が背に傷を負っていたことを思い出す。
でも、力を緩めることができなかった。
そのくらいひどい、激痛だった。
指を伝う血。
ぬるりとした感触に、目の前が赤く染まる。
痛みが和らいでくると、それに変わるように無性に喉が渇いた。
自分を抱きしめているこの体の、この皮の下に流れる血が、ひどく匂う。
自分がそれを渇望していることに気がついた。
オレの手が緩んだことに彼女は気づき、顔を覗き込む。
青白くも綺麗な顔が、赤い瞳が、オレを捕える。
「お前は、ただ、生きてくれさえすればいい」
その言葉の意味なんて、考えもしなかった。
ただ、喉が渇いていた。
ただ、彼女の血がほしかった。
腕から滴る血に吸い寄せられる様に口をつける。
血が口に触れた途端、溢れる枯渇感に、我を忘れて血を啜った。
無心に歯で傷を抉り、血を啜った。
オレの頭を彼女が抱くことに気づいたのはしばらくしてからだった。
ぼんやりと顔を上げる。
あたりにはオレ達以外は誰も居なくなっていた。
至近距離で青白い顔が、かすかに微笑んだ。
今度は確かに、片方の目でそれを確認できた。
だからオレは、目の前の唇にかみついた。
彼女は抵抗することなく受け入れた。
ひどく柔らかく、甘く、温かいそれを、夢中で舐め、喉の渇きを癒す。
流れ出た血は甘美で、この世のものとは思えない味わいだった。
