東京
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入口に戻ると、また新しい集団がいた。
こちらも顔まで隠れるフードをかぶっている。
「機嫌が悪そうだな、神威。」
サングラスの男が話す。
(ちなみに、黒りんも悪いけどね。)
小狼君が傷つけられたからだろう。
眉間のしわは深い。
しかし、その眉間のしわなんかよりも、オレが殴った頬の紫の方がよほどひどい。
額当ての頬にかけて垂れた部分でも隠しきれず、深く襟に顔を沈めても、なお見える紫は、彼女の美しい顔をむしばんでいるように見える。
(君達にとってきっとオレは・・・)
黒りんの赤い瞳が一瞬オレに向けられて、目をそらそうとすれば、小さくアイコンタクトされる。
たぶん、もう少し隠れていろとでもいいたいんだろう。
力なく壁にもたれかかる。
(なぜ、こんなしぐさでわかってしまうほど、オレ達は近づいてしまったんだろう。)
後悔したところで、何も始まらないのは分かっていた。
壁の向こうで男達が話しているようだ。
「お前が来たせいだ。」
「それは嬉しいな。
では本題に入ろう。」
「渡さない。」
「タワーの地下にもあるだろう。」
「だが在りすぎるということはない。」
「・・・渡さない。
奪うなら、殺す!」
ずいぶん過激な世界だ。
サクラちゃんが眠っていて本当に良かった、と思ってしまうオレも、やはり黒たんが言うように変わってしまったんだろう。
もう後には戻れない。
(オレにとって、この子たちは大切で、守りたいものになってしまったんだ。)
男達ははオレ達そっちのけで戦い始めたようだ。
激しい戦闘音が続く。
「客か?」
黒りんと小狼君のことを差しているのだろう。
ちらりと覗くと、男は黒りんたちの方に手を振るっている。
でもオレが知る限り、あの男と小狼君、黒様は知り合いじゃない。
だからだろう、黒りんたちは無視している。
神威はそれに興味もないようで、またすぐに襲いかかった。
「話を聞く気は・・・ないみたいだな。」
その言葉が自分に向けられたはずはないのに、小さく胸をえぐった。
(そうだ、黒りんの話を聞く気は、ない。)
彼女が何を守りたいかなんて、知ったことではない。
オレはオレのやりたいようにやる。
それだけの話なんだ。
「封真、タワーから連絡。
他の区が攻めてきたそうよ。
残ったメンバーじゃ無理みたい。」
どうやら彼らの仲間から連絡が入ったらしい。
何やら通信道具を持つ女、桜都国で譲刃と名乗っていた女の子が言った。
「仕方ないな。」
封真は一発神威の足元に牽制のためか銃を撃ち込むと、身をひるがえす。
「また改めて、神威。」
そして嵐のように去って行った。
その後ろ姿を見送ると、神威はもう戦う気はないようで、黒さまの隣を素通りしていく。
オレは慌てて物陰に身を潜めた。
「この人達はどうするの?」
神威の仲間の一人が問いかける。
「任せる。
隠れている2人も。」
他の者達が気配を読むのに長けていないから大丈夫かと思っていたけれど、どうやらこの彼だけは違うらしい。
「あはは、見つかっちゃったねぇ。」
呑気に笑って敵意がないことを示す。
オレにできることなんて、笑うことくらいだから。
「小狼君また怪我してるー」
困ったような顔をするから、オレはやっぱり笑うしかなかった。
笑えば彼は少しだけでも安心してくれるから。
「いったい地下に何があるんだ?」
黒りんが問いかける。
小狼君が今、いっぱいいっぱいなのが分かっているからだろう。
そんなちいさな気遣いに気づく度、胸が締め付けられる気がする。
「何って、何言っているの?」
「とぼけているにしちゃ本気っぽいな。」
「決まっているじゃない。
水だよ。」
その言葉が以外で、オレ達は首をかしげる。
「水・・・」
「どういうこと?」
いまいち意味が理解できない俺達を見て、フードの集団も首をかしげる。
「水を盗りに来たんじゃないのか?」
モコナがぴょんと飛び出した。
「あのねあのね、モコナ達、すっごく遠いところから来たの。
この国のこと全然分からないの。
だから泥棒さんじゃないよ。」
「何!?
この生き物。」
どうやらこの世界にはこういうおかしな生き物はいないらしい。
興味があるのか小さい子どもがモコナに寄ってくるが。
「霞月、不用意に近づくな。」
「那托乱暴!」
額に何か紋のある男に抱きあげられた。
「さて、どうするかな、遊人。」
「神威は任せるって言っていたけど。」
「神威が殺さなかったということは、その必要がないと感じたんでしょう。」
「そうだな。行っていいぜ。」
どうやらこれ以上戦わずに済むらしい。
そうだとしてもオレたちには今、そう急に解決したい問題が一つある。
「あのーいろいろ大変な時に申し訳ないんですけどー」
オレはオレ達に背中を向けている男に声をかけた。
「あ、この子小狼君って言うんですけど、このままだとちょっとつらいんで、治療っぽいことお願いできませんかねー」
「治療という程のことはできないかもしれませんが、どうぞ。」
「ありがとうー」
時間稼ぎのためにもなる。
羽根があるかもしれないのだから。
こうしてまた、オレはこの子たちと関わってしまう。
もう、関わらないなんてことは、きっとできないんだ。
黒たんが小狼君を背負って、案内してくれる男の人の後をついていく。
オレもサクラちゃんを抱いてついていった。
「す・・・すみません。」
「そう思うならやられるな。」
小狼君は背中でしゅんとしている。
少しぐらい反省しろと言わんばかりの黒りん。
奥に進んでいくと、他にもたくさんの人がいた。
どうやら避難場所のような扱いの建物らしい。
「ここだ。」
通された部屋で薬や包帯をもらい、小狼君の治療をする。
深い傷だけれど、どうしようもない。
薬を塗って、包帯をまかせてもらった。
黒りんがすればいいのに、彼女はさっと身を引いた。
これもきっと、オレに自覚させるためなんだろう。
この子たちから、離れられないということを。
「酸性雨が降り続くようになって15年。
地上にある水は飲み水として使えなくなった。
濾過できる機材がある建物も雨にやられてまともに動かないしね。
この辺りにはもともと地下水脈があったんだよ。
地面でさえ酸性雨は腐食させる。
だから子の地下にある水が貴重なんだ。」
「あとタワーね。」
「今残っているのは、この都庁とタワーくらい。」
説明を聞く限り、かなり危ない状況みたいだ。
「じゃあこの国の水は、もうここのしたとタワーの地下にしかないんだー」
オレの言葉に、小さな男の子が答えた。
モコナを気に入ったのか、抱き上げている。
「国って言っても、もうこの東京23区辺りにしか人は残っていないだろう。
いうなればここは、東京って言う国かもしれないね。」
「・・・東京。」
小狼君が小さく呟いた。
こちらも顔まで隠れるフードをかぶっている。
「機嫌が悪そうだな、神威。」
サングラスの男が話す。
(ちなみに、黒りんも悪いけどね。)
小狼君が傷つけられたからだろう。
眉間のしわは深い。
しかし、その眉間のしわなんかよりも、オレが殴った頬の紫の方がよほどひどい。
額当ての頬にかけて垂れた部分でも隠しきれず、深く襟に顔を沈めても、なお見える紫は、彼女の美しい顔をむしばんでいるように見える。
(君達にとってきっとオレは・・・)
黒りんの赤い瞳が一瞬オレに向けられて、目をそらそうとすれば、小さくアイコンタクトされる。
たぶん、もう少し隠れていろとでもいいたいんだろう。
力なく壁にもたれかかる。
(なぜ、こんなしぐさでわかってしまうほど、オレ達は近づいてしまったんだろう。)
後悔したところで、何も始まらないのは分かっていた。
壁の向こうで男達が話しているようだ。
「お前が来たせいだ。」
「それは嬉しいな。
では本題に入ろう。」
「渡さない。」
「タワーの地下にもあるだろう。」
「だが在りすぎるということはない。」
「・・・渡さない。
奪うなら、殺す!」
ずいぶん過激な世界だ。
サクラちゃんが眠っていて本当に良かった、と思ってしまうオレも、やはり黒たんが言うように変わってしまったんだろう。
もう後には戻れない。
(オレにとって、この子たちは大切で、守りたいものになってしまったんだ。)
男達ははオレ達そっちのけで戦い始めたようだ。
激しい戦闘音が続く。
「客か?」
黒りんと小狼君のことを差しているのだろう。
ちらりと覗くと、男は黒りんたちの方に手を振るっている。
でもオレが知る限り、あの男と小狼君、黒様は知り合いじゃない。
だからだろう、黒りんたちは無視している。
神威はそれに興味もないようで、またすぐに襲いかかった。
「話を聞く気は・・・ないみたいだな。」
その言葉が自分に向けられたはずはないのに、小さく胸をえぐった。
(そうだ、黒りんの話を聞く気は、ない。)
彼女が何を守りたいかなんて、知ったことではない。
オレはオレのやりたいようにやる。
それだけの話なんだ。
「封真、タワーから連絡。
他の区が攻めてきたそうよ。
残ったメンバーじゃ無理みたい。」
どうやら彼らの仲間から連絡が入ったらしい。
何やら通信道具を持つ女、桜都国で譲刃と名乗っていた女の子が言った。
「仕方ないな。」
封真は一発神威の足元に牽制のためか銃を撃ち込むと、身をひるがえす。
「また改めて、神威。」
そして嵐のように去って行った。
その後ろ姿を見送ると、神威はもう戦う気はないようで、黒さまの隣を素通りしていく。
オレは慌てて物陰に身を潜めた。
「この人達はどうするの?」
神威の仲間の一人が問いかける。
「任せる。
隠れている2人も。」
他の者達が気配を読むのに長けていないから大丈夫かと思っていたけれど、どうやらこの彼だけは違うらしい。
「あはは、見つかっちゃったねぇ。」
呑気に笑って敵意がないことを示す。
オレにできることなんて、笑うことくらいだから。
「小狼君また怪我してるー」
困ったような顔をするから、オレはやっぱり笑うしかなかった。
笑えば彼は少しだけでも安心してくれるから。
「いったい地下に何があるんだ?」
黒りんが問いかける。
小狼君が今、いっぱいいっぱいなのが分かっているからだろう。
そんなちいさな気遣いに気づく度、胸が締め付けられる気がする。
「何って、何言っているの?」
「とぼけているにしちゃ本気っぽいな。」
「決まっているじゃない。
水だよ。」
その言葉が以外で、オレ達は首をかしげる。
「水・・・」
「どういうこと?」
いまいち意味が理解できない俺達を見て、フードの集団も首をかしげる。
「水を盗りに来たんじゃないのか?」
モコナがぴょんと飛び出した。
「あのねあのね、モコナ達、すっごく遠いところから来たの。
この国のこと全然分からないの。
だから泥棒さんじゃないよ。」
「何!?
この生き物。」
どうやらこの世界にはこういうおかしな生き物はいないらしい。
興味があるのか小さい子どもがモコナに寄ってくるが。
「霞月、不用意に近づくな。」
「那托乱暴!」
額に何か紋のある男に抱きあげられた。
「さて、どうするかな、遊人。」
「神威は任せるって言っていたけど。」
「神威が殺さなかったということは、その必要がないと感じたんでしょう。」
「そうだな。行っていいぜ。」
どうやらこれ以上戦わずに済むらしい。
そうだとしてもオレたちには今、そう急に解決したい問題が一つある。
「あのーいろいろ大変な時に申し訳ないんですけどー」
オレはオレ達に背中を向けている男に声をかけた。
「あ、この子小狼君って言うんですけど、このままだとちょっとつらいんで、治療っぽいことお願いできませんかねー」
「治療という程のことはできないかもしれませんが、どうぞ。」
「ありがとうー」
時間稼ぎのためにもなる。
羽根があるかもしれないのだから。
こうしてまた、オレはこの子たちと関わってしまう。
もう、関わらないなんてことは、きっとできないんだ。
黒たんが小狼君を背負って、案内してくれる男の人の後をついていく。
オレもサクラちゃんを抱いてついていった。
「す・・・すみません。」
「そう思うならやられるな。」
小狼君は背中でしゅんとしている。
少しぐらい反省しろと言わんばかりの黒りん。
奥に進んでいくと、他にもたくさんの人がいた。
どうやら避難場所のような扱いの建物らしい。
「ここだ。」
通された部屋で薬や包帯をもらい、小狼君の治療をする。
深い傷だけれど、どうしようもない。
薬を塗って、包帯をまかせてもらった。
黒りんがすればいいのに、彼女はさっと身を引いた。
これもきっと、オレに自覚させるためなんだろう。
この子たちから、離れられないということを。
「酸性雨が降り続くようになって15年。
地上にある水は飲み水として使えなくなった。
濾過できる機材がある建物も雨にやられてまともに動かないしね。
この辺りにはもともと地下水脈があったんだよ。
地面でさえ酸性雨は腐食させる。
だから子の地下にある水が貴重なんだ。」
「あとタワーね。」
「今残っているのは、この都庁とタワーくらい。」
説明を聞く限り、かなり危ない状況みたいだ。
「じゃあこの国の水は、もうここのしたとタワーの地下にしかないんだー」
オレの言葉に、小さな男の子が答えた。
モコナを気に入ったのか、抱き上げている。
「国って言っても、もうこの東京23区辺りにしか人は残っていないだろう。
いうなればここは、東京って言う国かもしれないね。」
「・・・東京。」
小狼君が小さく呟いた。