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大きな亀の大きな目が小さな2人をじっと見る。
一飲みにされかねない大きさだ。
2人はごくりと息をのんだ。
その首がゆっくりと動き、2人の前で止まった。
後退りしかけるも2人はぐっと踏みとどまる。
若姫様は促されるように小さな手を亀神の鼻先に広げた。
その手は鼻の穴とでも比べものにならないほど小さい。
亀は慈しむようにその手に平を見つめ、静かに息を吹きかけた。
2人が飛んでしまわないほど、そっと。
ー愛おしき小さきもの達よ、今度こそーー
(え?)
確かに微かに声が響いた。
そして、気づけば亀神は姿を消していた。
「……あ……」
若姫様が左手を見てみると、一本傷跡が残ってはいるが、血はもう止まっている。
それを覗き込んだファイ君も目を見開いた。
「お優しい方だったね、地の神様」
どこからか逃げていた馬も戻ってきたようだ。
空を見上げれば雨もやんでいて、夕陽が差してきている。
「……帰ろう。
父上を呼んでもらって、すぐにでも西の村の畑で使っているおかしな薬をやめさせなきゃ!」
「そうだね。」
若姫様は剣を柄に収めると、馬に飛び乗った。
ファイ君も帰ってきた馬に飛び乗る。
2人は来た時と同じくらい、馬を急がせた。
家に着くと、侍女や村人たちがこぞって出迎えに来ていた。
「ただいま!」
「若姫様、よくぞご無事で!」
「心配いらぬと言っただろう」
明るい笑顔が人々に広がっていく。
「母上は祷場か?」
「はい、お待ちです」
馬から降りると2人はまた祷場まで駆けていった。
「母上!」
奥方様はほっとした顔で振り返った。
「若姫、無事で何よりです。
亀神様のお言葉は、私にも聞こえていました。
すぐに使いを南の国にやりました。
雨も上がったから、領主様は早ければ明日の昼にでも帰ってこられるでしょう」
「良かった……」
ほっとしたのか、若姫様はその場にペタンと座り込んでしまった。
その隣でファイ君も力尽きたように座り込む。
それをみた侍女たちが慌てる。
「疲れたのでしょう。
着替えと、何か食べやすい精のつく物を」
今にも寝てしまいそうな2人の傍に、奥方様はやってきて座り、そっと頭を撫でた。
「勇気ある幼子たちに、どうかご加護を」
柔らかな光が2人を包む。
「亀神様は貴方達をそれぞれ認めてくださった。
貴方達2人の未来を、温かく見守ってくださるでしょう」
ページをめくる。
朝だろうか。
若姫様が障子をあけると、中にはファイ君が紙に摩法陣のようなものを書いている。
「今日は湖に行きなさいって、母上が」
少し寂しげな顔の若姫様。
「湖?」
「うん。
ふぁいのお迎えが来るから、湖で待っていなさいって」
ファイ君は少し複雑そうな顔をしている。
ここでの生活をずいぶん楽しんでいるようだったから、帰るのが少し寂しいのかもしれない。
「今日は父上は領地の見回りだし、母上は陽があるうちは祈祷があるから、2人でしっかり行ってきなさいって。
これ、ふぁいが着てきた服」
ファイ君は若姫様に手渡された、初めに着ていた服に着替える。
「ふぁいは、やっぱり帰りたかった?」
不意にされた質問に、ファイ君はきょとんとして若姫様を見る。
「7日間も一人で、寂しかった……?」
見上げてくる紅い瞳をじっと見て、それからファイ君はくすりと笑った。
「ずっと若姫様が一緒にいてくれたし、それに領主さまも、奥方様も、
お仕えしている人達も、みんな親切で、寂しくなんかなかったよ。
雪ばかりのセレスじゃ見れないもの、聞こえないもの、感じられないものをいっぱい触れて、とっても楽しかったよ」
若姫様はぱっと顔を明るくした。
「本当!?」
「本当だよ」
「よかった」
頬を赤らめて喜ぶ若姫様。
「でも……帰らないとダメだから仕方ないな」
「そうだね」
若姫様がそっと手を出す。
「待っていてくれる人のところに、帰ろう」
ファイ君は少しだけ泣きそうな顔をしてその手を取った。
「うん」
2人は仲良く森の中を歩く。
途中、若姫様は蒼い花を摘んでファイ君の髪にさした。
「ファイの目と同じ、諏訪の湖と同じ、蒼色だ!」
若姫様はすっかりご機嫌な様子。
「ふぁい、おれ、ふぁいのこと、だいすきだよ!」
小さい手がぎゅうっとファイ君の手を握った。
ファイ君も、自分よりも小さい手をぎゅっと握り返した。
「若姫様、オレもだよ」
森を抜け、2人は湖に出た。
湖のふちで、2人は手をつないで迎えを待つ。
「ふぁいは世界を渡ることができるの?」
「とても難しい魔法で、今はまだ上手くできないんだ」
ファイ君は困ったように頬を掻いた。
「練習したら出来るようになるの?」
「そうだね、いっぱい練習したら、できるようになるかも」
そう言ってから、ファイ君は何か思いついたようで、首を横に振った。
そしてじっと若姫様の紅い瞳を見詰めた。
「いっぱい練習して、できるようになるよ。
それで、また若姫様に会いに来る」
若姫様はにぱっと笑って、大きくうなずいた。
「ふぁい、耳かして」
ファイ君の耳に、若姫様は小さく何かをささやいた。
するとファイ君は大きく目を見開いた。
「でもこれは君のとても大切なもので……」
「いいんだ、だっていつかまた会いに来てくれるんだろう?」
今度はファイ君が大きく頷く。
「じゃあ、若姫様、耳かして」
ファイ君が今度は若姫様の耳元で何かをささやいた。
若姫様はくすぐったそうに小さく笑った。
「ありがとう、ふぁい」
「ありがとう、若姫様」
不意に湖が光はじめた。
「きた!」
弾けたような光の後、湖に一人の髪の長い男性が立っていた。
「ファイ、待たせてしまったのかな?」
彼はファイ君と若姫様がつないだ手を見て優しく微笑んだ。
「小さな友情をはぐくむには十分な時間だったようだね」
「アシュラ王……」
ファイ君は少しだけほっとした顔をした。
「ファイ、帰るかい?」
「……はい」
ファイ君は静かに頷くと、若姫様の方を見た。
「元気でね、若姫様」
「ふぁいも、元気でね」
小さな手と手がそっと離れる。
ファイ君は引き寄せられるように、アシュラ王の元へと飛んで行った。
「ふぁい、また会おうな!」
若姫様が叫ぶ。
「うん!」
ファイ君は大きく手を振った。
若姫様もぶんぶんと手を振る。
「この子がお世話になった皆さんにも、よろしく言っておいてくれるかな?」
アシュラ王も優しい笑顔を若姫様に向けた。
「はい!
俺もとても楽しかったから、だから、ありがとうございます!」
思わぬお礼に、アシュラ王は少し驚いてから微笑んだ。
「ファイにはとても素敵なお友達が出来たようだ。
全ては必然だと、言っていた人がいたけれど、もしそれが本当なら、君たちが生涯大切な人であり続けるように私は願おう」
大きな手がそっとファイ君の頭を撫でる。
それが嬉しいのか、照れたようにファイ君は笑い、その姿にアシュラ王はまた少し驚いたようだ。
(そうか、ファイ君はここにきて笑うようになったから……)
「小さな勇者さんに、すっかり助けられたようだね。
ありがとう、若姫様、と言ったかな」
「はい。
諏訪の領主、黒鋼の娘、若姫と申します!」
「そうか、元気のいいお嬢さんだ。
短い間だったが世話になったね」
「俺には力がないから祝詞はあげられないけれど、それでも!
善き旅路となりますように!」
2人を中心に、光が増す。
「ありがとう」
ファイ君とアシュラ王のその言葉を最後に、2人の姿は消えた。
へたりとその場に座り込む若姫様。
「元気でな、ふぁい。
俺も、強くなる。
次に会ったときにはびっくりさせてやるからな」
拳を湖に突き出す。
「だから、絶対、会おうな!」
一飲みにされかねない大きさだ。
2人はごくりと息をのんだ。
その首がゆっくりと動き、2人の前で止まった。
後退りしかけるも2人はぐっと踏みとどまる。
若姫様は促されるように小さな手を亀神の鼻先に広げた。
その手は鼻の穴とでも比べものにならないほど小さい。
亀は慈しむようにその手に平を見つめ、静かに息を吹きかけた。
2人が飛んでしまわないほど、そっと。
ー愛おしき小さきもの達よ、今度こそーー
(え?)
確かに微かに声が響いた。
そして、気づけば亀神は姿を消していた。
「……あ……」
若姫様が左手を見てみると、一本傷跡が残ってはいるが、血はもう止まっている。
それを覗き込んだファイ君も目を見開いた。
「お優しい方だったね、地の神様」
どこからか逃げていた馬も戻ってきたようだ。
空を見上げれば雨もやんでいて、夕陽が差してきている。
「……帰ろう。
父上を呼んでもらって、すぐにでも西の村の畑で使っているおかしな薬をやめさせなきゃ!」
「そうだね。」
若姫様は剣を柄に収めると、馬に飛び乗った。
ファイ君も帰ってきた馬に飛び乗る。
2人は来た時と同じくらい、馬を急がせた。
家に着くと、侍女や村人たちがこぞって出迎えに来ていた。
「ただいま!」
「若姫様、よくぞご無事で!」
「心配いらぬと言っただろう」
明るい笑顔が人々に広がっていく。
「母上は祷場か?」
「はい、お待ちです」
馬から降りると2人はまた祷場まで駆けていった。
「母上!」
奥方様はほっとした顔で振り返った。
「若姫、無事で何よりです。
亀神様のお言葉は、私にも聞こえていました。
すぐに使いを南の国にやりました。
雨も上がったから、領主様は早ければ明日の昼にでも帰ってこられるでしょう」
「良かった……」
ほっとしたのか、若姫様はその場にペタンと座り込んでしまった。
その隣でファイ君も力尽きたように座り込む。
それをみた侍女たちが慌てる。
「疲れたのでしょう。
着替えと、何か食べやすい精のつく物を」
今にも寝てしまいそうな2人の傍に、奥方様はやってきて座り、そっと頭を撫でた。
「勇気ある幼子たちに、どうかご加護を」
柔らかな光が2人を包む。
「亀神様は貴方達をそれぞれ認めてくださった。
貴方達2人の未来を、温かく見守ってくださるでしょう」
ページをめくる。
朝だろうか。
若姫様が障子をあけると、中にはファイ君が紙に摩法陣のようなものを書いている。
「今日は湖に行きなさいって、母上が」
少し寂しげな顔の若姫様。
「湖?」
「うん。
ふぁいのお迎えが来るから、湖で待っていなさいって」
ファイ君は少し複雑そうな顔をしている。
ここでの生活をずいぶん楽しんでいるようだったから、帰るのが少し寂しいのかもしれない。
「今日は父上は領地の見回りだし、母上は陽があるうちは祈祷があるから、2人でしっかり行ってきなさいって。
これ、ふぁいが着てきた服」
ファイ君は若姫様に手渡された、初めに着ていた服に着替える。
「ふぁいは、やっぱり帰りたかった?」
不意にされた質問に、ファイ君はきょとんとして若姫様を見る。
「7日間も一人で、寂しかった……?」
見上げてくる紅い瞳をじっと見て、それからファイ君はくすりと笑った。
「ずっと若姫様が一緒にいてくれたし、それに領主さまも、奥方様も、
お仕えしている人達も、みんな親切で、寂しくなんかなかったよ。
雪ばかりのセレスじゃ見れないもの、聞こえないもの、感じられないものをいっぱい触れて、とっても楽しかったよ」
若姫様はぱっと顔を明るくした。
「本当!?」
「本当だよ」
「よかった」
頬を赤らめて喜ぶ若姫様。
「でも……帰らないとダメだから仕方ないな」
「そうだね」
若姫様がそっと手を出す。
「待っていてくれる人のところに、帰ろう」
ファイ君は少しだけ泣きそうな顔をしてその手を取った。
「うん」
2人は仲良く森の中を歩く。
途中、若姫様は蒼い花を摘んでファイ君の髪にさした。
「ファイの目と同じ、諏訪の湖と同じ、蒼色だ!」
若姫様はすっかりご機嫌な様子。
「ふぁい、おれ、ふぁいのこと、だいすきだよ!」
小さい手がぎゅうっとファイ君の手を握った。
ファイ君も、自分よりも小さい手をぎゅっと握り返した。
「若姫様、オレもだよ」
森を抜け、2人は湖に出た。
湖のふちで、2人は手をつないで迎えを待つ。
「ふぁいは世界を渡ることができるの?」
「とても難しい魔法で、今はまだ上手くできないんだ」
ファイ君は困ったように頬を掻いた。
「練習したら出来るようになるの?」
「そうだね、いっぱい練習したら、できるようになるかも」
そう言ってから、ファイ君は何か思いついたようで、首を横に振った。
そしてじっと若姫様の紅い瞳を見詰めた。
「いっぱい練習して、できるようになるよ。
それで、また若姫様に会いに来る」
若姫様はにぱっと笑って、大きくうなずいた。
「ふぁい、耳かして」
ファイ君の耳に、若姫様は小さく何かをささやいた。
するとファイ君は大きく目を見開いた。
「でもこれは君のとても大切なもので……」
「いいんだ、だっていつかまた会いに来てくれるんだろう?」
今度はファイ君が大きく頷く。
「じゃあ、若姫様、耳かして」
ファイ君が今度は若姫様の耳元で何かをささやいた。
若姫様はくすぐったそうに小さく笑った。
「ありがとう、ふぁい」
「ありがとう、若姫様」
不意に湖が光はじめた。
「きた!」
弾けたような光の後、湖に一人の髪の長い男性が立っていた。
「ファイ、待たせてしまったのかな?」
彼はファイ君と若姫様がつないだ手を見て優しく微笑んだ。
「小さな友情をはぐくむには十分な時間だったようだね」
「アシュラ王……」
ファイ君は少しだけほっとした顔をした。
「ファイ、帰るかい?」
「……はい」
ファイ君は静かに頷くと、若姫様の方を見た。
「元気でね、若姫様」
「ふぁいも、元気でね」
小さな手と手がそっと離れる。
ファイ君は引き寄せられるように、アシュラ王の元へと飛んで行った。
「ふぁい、また会おうな!」
若姫様が叫ぶ。
「うん!」
ファイ君は大きく手を振った。
若姫様もぶんぶんと手を振る。
「この子がお世話になった皆さんにも、よろしく言っておいてくれるかな?」
アシュラ王も優しい笑顔を若姫様に向けた。
「はい!
俺もとても楽しかったから、だから、ありがとうございます!」
思わぬお礼に、アシュラ王は少し驚いてから微笑んだ。
「ファイにはとても素敵なお友達が出来たようだ。
全ては必然だと、言っていた人がいたけれど、もしそれが本当なら、君たちが生涯大切な人であり続けるように私は願おう」
大きな手がそっとファイ君の頭を撫でる。
それが嬉しいのか、照れたようにファイ君は笑い、その姿にアシュラ王はまた少し驚いたようだ。
(そうか、ファイ君はここにきて笑うようになったから……)
「小さな勇者さんに、すっかり助けられたようだね。
ありがとう、若姫様、と言ったかな」
「はい。
諏訪の領主、黒鋼の娘、若姫と申します!」
「そうか、元気のいいお嬢さんだ。
短い間だったが世話になったね」
「俺には力がないから祝詞はあげられないけれど、それでも!
善き旅路となりますように!」
2人を中心に、光が増す。
「ありがとう」
ファイ君とアシュラ王のその言葉を最後に、2人の姿は消えた。
へたりとその場に座り込む若姫様。
「元気でな、ふぁい。
俺も、強くなる。
次に会ったときにはびっくりさせてやるからな」
拳を湖に突き出す。
「だから、絶対、会おうな!」
