レコルト国
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ページをめくると、若姫様と領主様が庭で剣の鍛錬をしている。
若姫様はまだまだ小さいけれど、見ている限りとても強い。
自分の体の半分ほどもある竹刀を振り回せる力、身体の大きな領主様の攻撃を避ける瞬発力、どれも目を見張るものだ。
(あんなに小さいのに……すごい)
「ずいぶん強くなったな」
「じゃあ技教えてくれる!?」
目を輝かせる若姫様。
「それは、まだ早いな」
領主さまのその一言でぷうっと膨れてしまった。
それを笑いながら、領主さまは何かに気づいたらしい。
屋敷の方を見て、片手をあげた。
「よぉ!」
「・・・おはようございます」
ファイ君が縁側に顔を出していたらしい。
どこか不審げな顔で領主さまを見ている。
「ふぁい!
おはよう!!」
「おはよう、若姫様」
「ファイに俺のことも紹介してくれよ。
昨日は帰ってくるのが遅くて、挨拶し損ねちまった」
若姫様に頼む領主さまは爽やかな笑顔だ。
そして若姫様もそれにそっくりな笑顔を見せる。
「うん。
ふぁい、この人は俺の父上なんだ!
強くて力持ちで、諏訪を守っている」
ファイ君はようやく不審げな表情を引っ込めて、ぺこりと頭を下げた。
「お世話になっています」
「いやなに、坊主がずいぶん世話になってると聞いた」
縮こまりがちなファイ君が気になるのか、領主さまは縁側にきて腰かけた。
どうしたらいいのか戸惑って、俯いてしまっているファイ君に眩しい笑顔を向けた。
それは、隣で見ているだけのおれまでも温かくなってしまう笑顔。
「諏訪はどうだ?」
優しい顔でファイ君を覗き込む。
「素敵なところです。
みんな優しいし、明るいし、綺麗な湖もあるし……」
「だろ?」
にかっとまたあの笑顔を見せて、領主さまは笑った。
そしてファイ君の頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜ、抱き上げると肩車してしまう。
あまりに突然のことでファイ君は驚いて目を回しそうだ。
「朝飯だ!
おい、競争だぞ!」
「よしきた!」
「え、このまま!?」
驚くファイ君を肩に乗せて、若姫様と領主さまは家の中へとダッシュだ。
ファイ君のか細い悲鳴は完全無視だろう。
でも、食事の並べられた部屋で降ろされたファイ君は顔に赤みがさしていて、下がった眉はいつものようにさびしそうなわけではない。
少し怖かったのだろうけれど、その顔は寂しさを忘れたようにドキドキしている。
「父上の肩車、すごいだろ?」
嬉しそうな若姫様に、ファイ君は少し考えてから頷いて見せる。
「初めてだよ、こんなの」
「良かった!」
領主さまそっくりの、眩しいくらいの笑顔がファイ君に向けられた。
「さ、ご飯の支度ができましたよ」
侍女たちと一緒に奥方様が朝食を持って部屋に入ってくる。
コの字一番型に並んだ膳のうち、上座に領主が座り、その隣に奥方様、
二つならんだ膳の端の方にに若姫様が座る。
「ふぁいはここ!」
若姫様と領主さまの隣になる席を若姫様は指さした。
「子ども席はこっち側なんだ」
ファイ君は少し驚いて、それから少し頬を染めて席に着いた。
「手を合わせてください」
奥様がファイ君にそっと言う。
隣の若姫様を見ながら、見よう見まねで手を合わせる。
すると領主さまが目を閉じて小さく微笑んでから挨拶をした。
「いただきます」
目の前に出された膳に並ぶ料理。
箸で食べるのだと分かったらしく手に取るが、そもそも上手く持つことができない。
それに気づいたのだろう、奥様がそばに来て焼き魚をほぐしている。
それにファイ君は困ったような、それでいてひどく嬉しそうに笑ったのだった。
ページをめくると若姫様とファイ君が縁側でスイカを食べている。
着ている服が前のものとは違って、諏訪のものになっているから、きっと貸してもらったんだろう。
「ふぁいっていうのは仮名なのか?」
「仮名?」
「若姫様、ちゃんと説明して差し上げねば。
ファイ様はこちらの国にいらしてすぐなのですから」
水を入れた湯呑を運んできた侍女が笑っている。
そうか、と若姫様は少し考えてから、ファイ君の方を向いた。
「ここでは、名前がとても大切なんだ。
だから生まれてすぐにつけられる本当の名前、真名は両親と結婚相手しか知らない。
普通は仮名を使うんだ。
これは7歳になるともらえる。
お城に使えるような人は、それとは別に仕えている相手から名前をもらったりもする。
俺の場合は、領主になったら父上が今名乗っている黒鋼っていう名前を襲名するんだ」
(黒鋼を襲名!?)
ページをめくると進む時間、将来黒鋼という名を襲名すると言っている若姫様、諏訪という土地……。
(もしかして、この本は前に持っていた人の記憶を次に受け取った人に見せるのか!?)
そうならば辻褄があう。
おれが見ているのは幼いころの黒鋼さんの記憶で、だから俺が何をしても周りには影響がない。
小さい黒鋼さんに似た人は、きっと黒鋼さん本人だ。
「7歳までは幼名を使う。
俺はまだ7歳になっていないから、この幼名を使っていて、若姫と呼ばれているんだ。
父上が冗談で若姫と言い始めて、それがいつの間にやらみんなに広まって、こんな幼名になってしまったんだ。
もっとかっこいい名前が良かったな」
ぷぅと頬を膨らませる若姫様。
(こんなに表情豊かだったのに、一体どうしてあんなふうに表情が隠せるようになったのだろう)
「それで、ふぁいは仮名なのか?」
「うーん……」
ファイ君は少し考え込んでいる。
侍女の人はいつの間にかどこかに行ったようだ。
「仮名……かな」
「おお!」
若姫様は興味深々だ。
「誰につけてもらったんだ?」
少しずつ若姫様の押しの強いのにも慣れてきたのか、ファイ君も冷静だ。
「自分でつけたよ」
「自分で!
ふぁいはすごいな!」
ぴょんと跳ねる若姫様に、ファイ君はどこか寂しげだ。
「そんなこと……ないよ」
その様子に若姫様も気づいたのだろう。
少ししょげた顔をして隣に腰かけた。
「すまぬ、ふぁい。
嫌なことを言ったか?」
「いや、若姫様は悪くないよ。
ただ……」
「ただ……?」
蒼い瞳は哀しげにゆれている。
「ファイって言う名前は……死んだ双子の名前なんだ」
紅い瞳が見開かれる。
蒼い瞳は手の中の食べかけのスイカを見ている。
「オレ、その子にひどいことしたんだ。
だから、ファイにはもっと生きていてほしくて……。
こうやってスイカ食べられたらいいのに、とか、
温かい国に行って見れたらよかったのに、とか、そんなこといつも思ってて……
だからオレ……」
がばっと急にファイ君の身体に黒い何かが激突して、スイカが大きく傾く。
ファイ君のほっぺたに種が飛び散ってしまったようだ。
「ど、どうしたの、若ひ」
「俺!」
若姫様がぎゅうぎゅうファイ君を抱きしめている。
「俺、ふぁいがふぁいにひどいことしたとしても、ふぁいが大好きだっ!!
俺はふぁいにもスイカを食べてほしいし、一緒に雪で遊びたいし、湖でも泳ぎたいし、いろんなところに一緒に行きたいって、
ふぁいと会ってからいつも思ってるんだ!!」
ファイ君は目を見開いた。
「だから、俺は、ふぁいにいてほしいんだよぉ……」
最後にはめそめそと泣きだしてしまった。
そんな若姫様を、ファイ君は驚いたように見つめていて、それからそっと、そしてぎゅっと抱きしめ返した。
「……ありがとう、若姫様」
今の2人とはあまりにかけ離れた姿。
何よりもひとつ、大きな疑問が残る。
(あと残る疑問はファイ君だ。
彼が本当にファイさんなのだろうか?
では次元の魔女さんのところで、なぜ2人は初めて出会ったかのように振舞っているのだろう?)
若姫様はまだまだ小さいけれど、見ている限りとても強い。
自分の体の半分ほどもある竹刀を振り回せる力、身体の大きな領主様の攻撃を避ける瞬発力、どれも目を見張るものだ。
(あんなに小さいのに……すごい)
「ずいぶん強くなったな」
「じゃあ技教えてくれる!?」
目を輝かせる若姫様。
「それは、まだ早いな」
領主さまのその一言でぷうっと膨れてしまった。
それを笑いながら、領主さまは何かに気づいたらしい。
屋敷の方を見て、片手をあげた。
「よぉ!」
「・・・おはようございます」
ファイ君が縁側に顔を出していたらしい。
どこか不審げな顔で領主さまを見ている。
「ふぁい!
おはよう!!」
「おはよう、若姫様」
「ファイに俺のことも紹介してくれよ。
昨日は帰ってくるのが遅くて、挨拶し損ねちまった」
若姫様に頼む領主さまは爽やかな笑顔だ。
そして若姫様もそれにそっくりな笑顔を見せる。
「うん。
ふぁい、この人は俺の父上なんだ!
強くて力持ちで、諏訪を守っている」
ファイ君はようやく不審げな表情を引っ込めて、ぺこりと頭を下げた。
「お世話になっています」
「いやなに、坊主がずいぶん世話になってると聞いた」
縮こまりがちなファイ君が気になるのか、領主さまは縁側にきて腰かけた。
どうしたらいいのか戸惑って、俯いてしまっているファイ君に眩しい笑顔を向けた。
それは、隣で見ているだけのおれまでも温かくなってしまう笑顔。
「諏訪はどうだ?」
優しい顔でファイ君を覗き込む。
「素敵なところです。
みんな優しいし、明るいし、綺麗な湖もあるし……」
「だろ?」
にかっとまたあの笑顔を見せて、領主さまは笑った。
そしてファイ君の頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜ、抱き上げると肩車してしまう。
あまりに突然のことでファイ君は驚いて目を回しそうだ。
「朝飯だ!
おい、競争だぞ!」
「よしきた!」
「え、このまま!?」
驚くファイ君を肩に乗せて、若姫様と領主さまは家の中へとダッシュだ。
ファイ君のか細い悲鳴は完全無視だろう。
でも、食事の並べられた部屋で降ろされたファイ君は顔に赤みがさしていて、下がった眉はいつものようにさびしそうなわけではない。
少し怖かったのだろうけれど、その顔は寂しさを忘れたようにドキドキしている。
「父上の肩車、すごいだろ?」
嬉しそうな若姫様に、ファイ君は少し考えてから頷いて見せる。
「初めてだよ、こんなの」
「良かった!」
領主さまそっくりの、眩しいくらいの笑顔がファイ君に向けられた。
「さ、ご飯の支度ができましたよ」
侍女たちと一緒に奥方様が朝食を持って部屋に入ってくる。
コの字一番型に並んだ膳のうち、上座に領主が座り、その隣に奥方様、
二つならんだ膳の端の方にに若姫様が座る。
「ふぁいはここ!」
若姫様と領主さまの隣になる席を若姫様は指さした。
「子ども席はこっち側なんだ」
ファイ君は少し驚いて、それから少し頬を染めて席に着いた。
「手を合わせてください」
奥様がファイ君にそっと言う。
隣の若姫様を見ながら、見よう見まねで手を合わせる。
すると領主さまが目を閉じて小さく微笑んでから挨拶をした。
「いただきます」
目の前に出された膳に並ぶ料理。
箸で食べるのだと分かったらしく手に取るが、そもそも上手く持つことができない。
それに気づいたのだろう、奥様がそばに来て焼き魚をほぐしている。
それにファイ君は困ったような、それでいてひどく嬉しそうに笑ったのだった。
ページをめくると若姫様とファイ君が縁側でスイカを食べている。
着ている服が前のものとは違って、諏訪のものになっているから、きっと貸してもらったんだろう。
「ふぁいっていうのは仮名なのか?」
「仮名?」
「若姫様、ちゃんと説明して差し上げねば。
ファイ様はこちらの国にいらしてすぐなのですから」
水を入れた湯呑を運んできた侍女が笑っている。
そうか、と若姫様は少し考えてから、ファイ君の方を向いた。
「ここでは、名前がとても大切なんだ。
だから生まれてすぐにつけられる本当の名前、真名は両親と結婚相手しか知らない。
普通は仮名を使うんだ。
これは7歳になるともらえる。
お城に使えるような人は、それとは別に仕えている相手から名前をもらったりもする。
俺の場合は、領主になったら父上が今名乗っている黒鋼っていう名前を襲名するんだ」
(黒鋼を襲名!?)
ページをめくると進む時間、将来黒鋼という名を襲名すると言っている若姫様、諏訪という土地……。
(もしかして、この本は前に持っていた人の記憶を次に受け取った人に見せるのか!?)
そうならば辻褄があう。
おれが見ているのは幼いころの黒鋼さんの記憶で、だから俺が何をしても周りには影響がない。
小さい黒鋼さんに似た人は、きっと黒鋼さん本人だ。
「7歳までは幼名を使う。
俺はまだ7歳になっていないから、この幼名を使っていて、若姫と呼ばれているんだ。
父上が冗談で若姫と言い始めて、それがいつの間にやらみんなに広まって、こんな幼名になってしまったんだ。
もっとかっこいい名前が良かったな」
ぷぅと頬を膨らませる若姫様。
(こんなに表情豊かだったのに、一体どうしてあんなふうに表情が隠せるようになったのだろう)
「それで、ふぁいは仮名なのか?」
「うーん……」
ファイ君は少し考え込んでいる。
侍女の人はいつの間にかどこかに行ったようだ。
「仮名……かな」
「おお!」
若姫様は興味深々だ。
「誰につけてもらったんだ?」
少しずつ若姫様の押しの強いのにも慣れてきたのか、ファイ君も冷静だ。
「自分でつけたよ」
「自分で!
ふぁいはすごいな!」
ぴょんと跳ねる若姫様に、ファイ君はどこか寂しげだ。
「そんなこと……ないよ」
その様子に若姫様も気づいたのだろう。
少ししょげた顔をして隣に腰かけた。
「すまぬ、ふぁい。
嫌なことを言ったか?」
「いや、若姫様は悪くないよ。
ただ……」
「ただ……?」
蒼い瞳は哀しげにゆれている。
「ファイって言う名前は……死んだ双子の名前なんだ」
紅い瞳が見開かれる。
蒼い瞳は手の中の食べかけのスイカを見ている。
「オレ、その子にひどいことしたんだ。
だから、ファイにはもっと生きていてほしくて……。
こうやってスイカ食べられたらいいのに、とか、
温かい国に行って見れたらよかったのに、とか、そんなこといつも思ってて……
だからオレ……」
がばっと急にファイ君の身体に黒い何かが激突して、スイカが大きく傾く。
ファイ君のほっぺたに種が飛び散ってしまったようだ。
「ど、どうしたの、若ひ」
「俺!」
若姫様がぎゅうぎゅうファイ君を抱きしめている。
「俺、ふぁいがふぁいにひどいことしたとしても、ふぁいが大好きだっ!!
俺はふぁいにもスイカを食べてほしいし、一緒に雪で遊びたいし、湖でも泳ぎたいし、いろんなところに一緒に行きたいって、
ふぁいと会ってからいつも思ってるんだ!!」
ファイ君は目を見開いた。
「だから、俺は、ふぁいにいてほしいんだよぉ……」
最後にはめそめそと泣きだしてしまった。
そんな若姫様を、ファイ君は驚いたように見つめていて、それからそっと、そしてぎゅっと抱きしめ返した。
「……ありがとう、若姫様」
今の2人とはあまりにかけ離れた姿。
何よりもひとつ、大きな疑問が残る。
(あと残る疑問はファイ君だ。
彼が本当にファイさんなのだろうか?
では次元の魔女さんのところで、なぜ2人は初めて出会ったかのように振舞っているのだろう?)
