レコルト国
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ページをめくると、次は奥方様とならんで黙想している。
奥方様の手にある鏡はきらきらと光っているが、若姫様の手にある鏡は普通の鏡のままだ。
「だめだぁ。」
足を投げ出してため息をつく若姫様。
額には汗が浮かんでいる。
それを見た奥方様はふっと笑みを浮かべた。
鏡を膝の上に下ろすと、先ほどのきらきらした光は消え、ただの鏡に戻ってしまった。
「休憩しましょうか。」
「いい。
だってこんな基本ができないんだ・・・もっと鍛錬しなきゃ。」
どうやらずいぶん負けず嫌いなようだ。
先ほど、領主様が奥方様の事を巫女と言っていたから、その関係の鍛錬なのだろう。
やはり若姫様はあまり巫女の素質はないようだ。
「無理はいけませんよ。
肩に力が入っては清い結界は張れませんから。
・・・少し外の空気でも吸いにいきましょう。」
落ち込んだ様子の若姫様を立たせて、部屋から奥方様は出ていく。
その時にふと部屋の中を振りかえった。
そして。
「根を詰めるのは良くありませんものね。」
おれの心臓はどきりとなった。
だってその言葉と微笑みが、まるでおれにかけられたように感じたから。
「・・・偶然だろう。」
ページを一枚めくる。
おれの足元は見事な蒼い湖に変わっていた。
視線を上げれば緑の生い茂る湖岸がみえる。
「諏訪は玖楼国とはまた違った美しさがある。」
見ていて心がすっとするような、そんな爽やかさがある。
その湖岸に、一人の子どもがいるのが見えた。
おれよりもいくらか年下だろう。
諏訪では見かけたことのない金髪だ。
後ろを向いていて男女の別は分からない。
「どうしたんだ?」
その子の傍の木の上から声がする。
ひょこっとさかさまにぶら下がって顔を出したのは、若姫様だった。
金髪の子どもは驚いたようで、小さく声を上げた。
「・・・君は?」
若姫様は相変わらず危なっかしく木から下りてくる。
おれも気になって2人の傍に歩み寄った。
「俺、若姫だ。
お前は?」
「オレは、ファイだよ。」
「ファイさんっ?!」
おれは驚いて声をあげてしまう。
見た目から言えば若姫様よりもいくらか年上だろう。
金髪に蒼い、そう、この諏訪の湖のように蒼い瞳に、透き通った白い肌、整った顔立ち、どれもファイさんにそっくりだ。
来ている服は薄手のものだが、持っている身長にしては長い杖もどこか初めて出会ったころのファイさんを思い起こさせる。
(どういうことなんだ?)
「ふぁい。
いい響きだな。」
若姫様はにかっと笑った。
「ありがとう。」
でも、このファイという少年は、明らかにファイさんと違うところがある。
「蒼い目も諏訪の湖みたいでとっても綺麗だ!
髪も陽だまりみたいな色をしているな。
どこの領地から来たんだ?」
きょろきょろとファイ・・・くんを見ながら、若姫様は質問を投げかける。
その姿にファイ君は少し困ったように眉をひそめた。
そう、ファイさんとの決定的な違いは、その笑うことのない表情だった。
「領地・・・?
えっと、オレはこの世界とは違う世界から来た・・・と思う。」
どこか寂しげな声。
おれの知っているファイさんとは雰囲気がずいぶん違う。
「違う世界?」
「そう。
この国はなんと言う名前なの?」
「ここは日本国の諏訪だ。」
「・・・やはり知らないところに出てしまったんだ・・・。
詠唱を間違えたかな・・・?」
おれたちのように世界を渡ることが、このファイ君には出来るのだろう。
ただ、どうやら今回は失敗してしまったようだ。
ーううん、どんなに力を使っても一回世界を渡るのが精一杯なんだ。ー
阪神国でそう言っていたファイさんを思い出す。
たしか、力の強い魔法使いじゃないと何度も世界を渡れない・・・みたいなことも言っていた気がする。
(この子はいったい・・・?)
「ファイはどこの国から来たんだ?」
「・・・セレス国だよ。」
「せれす国・・・?
初めて聞く名だな。」
「そうだろうね。」
「違う世界の国なのか?
違う世界って、どんな世界なんだ?」
好奇心いっぱいの若姫様にファイ君は少し困り顔だ。
あまりこういうタイプの子に会ったことがないのかもしれない。
「この国にもいろんな・・・領地かな?・・・あるよね。
オレのいた国にもいろんな場所があったけれど、オレが住んでいるところは沢山雪が降る地域で、とても寒い場所だよ。」
「雪が沢山降るのか!
俺雪好きだ!
雪合戦もできるし、そり遊びも楽しい!
ファイは何して遊ぶのが好きなんだ?」
紅い目がキラキラと輝いている。
「遊ぶ・・・」
そう呟いてファイ君は目を瞬かせた。
「そうだ、雪が降ったら遊ぶだろう?」
若姫様は単純で素直で子どもらしいと思う。
それに比べてファイ君は年の割に大人びて見える。
「いや、オレはあまり遊ばなかったな。
雪は寒くて冷たいから。
それに城には子どもがあまりいなくて。」
どこか寂しげに眉をひそめる。
城という限りは、城に仕えていたか、王族か、どちらかになるのだろう。
どちらにせよ、かなりの血筋とみて間違いない。
「なら、今年の冬は一緒に遊ぼう!
雪が寒くて冷たいだけじゃなくて、楽しいって俺が教えてやる。」
どん、と胸を叩く姿は小さいのにとても頼もしくて、思わず笑いが漏れてしまった。
「若姫。」
そんな若姫様を呼ぶ声がする。
「あ、母上!」
林の奥を見た若姫様は、にぱっと笑って駆けだした。
そして奥方様の前で一度止まってからぎゅっと抱きついた。
「どうしてここに?」
若姫様の問いに奥方様は優しく微笑んだ。
「湖のほとりに来訪者がいらしていると知ったので。」
そしてファイ君の方をじっと見た。
「ふぁいのこと?
あのね母上、ふぁいは他の世界から来たんだって。」
「ええ。
そのようね。」
ファイ君はどこか警戒しているように杖を握る。
奥方様はその緊張を解くように、優しく微笑みかけた。
「初めまして、ファイさん。
私はこの諏訪の巫女にございます。
他の世界からの来訪者を知り、着たまで。
諏訪に危害を加えないものに、私は手を出すつもりはありませんから、御心配なさらないでください。」
その言葉にファイ君は警戒を緩める。
「そうだ、母上、ふぁいを家に連れて行ってもいい?」
まだ警戒を完全にといたわけでもないファイ君はお構いなしに、若姫様は奥方様におねだりをしている。
そしてファイ君は突然の話に明らかに狼狽している。
(黒鋼さんとファイさんじゃないんだろうけれど、2人の意外な面を見れているみたいでなんだか面白い。)
思わず微笑んでしまう。
「我が家は構いませんが・・・どうでしょう。
ファイさんに失礼にならないようにご都合をお聞きしてからにしましょうね。」
「やったぁ!」
まだ家に行くとは決まっていないのに、若姫様ははしゃいでいる。
断りにくくなったファイ君の焦りが伝わってくるようだ。
「失礼のないように。」
後ろから静かに聞こえた奥方様の声はいつもよりも少し低く、若姫様はぴたりと動きを止めた。
顔が若干青い。
なんやかんや言いつつも、やはり奥方様も怒ると怖いのだろうか。
かくかくと不自然に奥方様を振りかえり数度頷いてから、ファイ君の方を向いてたずねた。
「あの・・・家に遊びに来てくれませんか?」
下から見上げてくる紅い瞳に、ファイ君は少し迷った後、根負けしたというように眉を下げた。
「ありがとう、行きたいな。」
「やったぁ!!」
ぴょんぴょんとファイ君の周りをはねる若姫様。
そんなに喜ばれるのが不思議なのだろうか、小さく首をかしげるファイ君。
「さぁ、こちらですよ。」
奥方様の言葉に2人は家の方に歩きだした。
奥方様の手にある鏡はきらきらと光っているが、若姫様の手にある鏡は普通の鏡のままだ。
「だめだぁ。」
足を投げ出してため息をつく若姫様。
額には汗が浮かんでいる。
それを見た奥方様はふっと笑みを浮かべた。
鏡を膝の上に下ろすと、先ほどのきらきらした光は消え、ただの鏡に戻ってしまった。
「休憩しましょうか。」
「いい。
だってこんな基本ができないんだ・・・もっと鍛錬しなきゃ。」
どうやらずいぶん負けず嫌いなようだ。
先ほど、領主様が奥方様の事を巫女と言っていたから、その関係の鍛錬なのだろう。
やはり若姫様はあまり巫女の素質はないようだ。
「無理はいけませんよ。
肩に力が入っては清い結界は張れませんから。
・・・少し外の空気でも吸いにいきましょう。」
落ち込んだ様子の若姫様を立たせて、部屋から奥方様は出ていく。
その時にふと部屋の中を振りかえった。
そして。
「根を詰めるのは良くありませんものね。」
おれの心臓はどきりとなった。
だってその言葉と微笑みが、まるでおれにかけられたように感じたから。
「・・・偶然だろう。」
ページを一枚めくる。
おれの足元は見事な蒼い湖に変わっていた。
視線を上げれば緑の生い茂る湖岸がみえる。
「諏訪は玖楼国とはまた違った美しさがある。」
見ていて心がすっとするような、そんな爽やかさがある。
その湖岸に、一人の子どもがいるのが見えた。
おれよりもいくらか年下だろう。
諏訪では見かけたことのない金髪だ。
後ろを向いていて男女の別は分からない。
「どうしたんだ?」
その子の傍の木の上から声がする。
ひょこっとさかさまにぶら下がって顔を出したのは、若姫様だった。
金髪の子どもは驚いたようで、小さく声を上げた。
「・・・君は?」
若姫様は相変わらず危なっかしく木から下りてくる。
おれも気になって2人の傍に歩み寄った。
「俺、若姫だ。
お前は?」
「オレは、ファイだよ。」
「ファイさんっ?!」
おれは驚いて声をあげてしまう。
見た目から言えば若姫様よりもいくらか年上だろう。
金髪に蒼い、そう、この諏訪の湖のように蒼い瞳に、透き通った白い肌、整った顔立ち、どれもファイさんにそっくりだ。
来ている服は薄手のものだが、持っている身長にしては長い杖もどこか初めて出会ったころのファイさんを思い起こさせる。
(どういうことなんだ?)
「ふぁい。
いい響きだな。」
若姫様はにかっと笑った。
「ありがとう。」
でも、このファイという少年は、明らかにファイさんと違うところがある。
「蒼い目も諏訪の湖みたいでとっても綺麗だ!
髪も陽だまりみたいな色をしているな。
どこの領地から来たんだ?」
きょろきょろとファイ・・・くんを見ながら、若姫様は質問を投げかける。
その姿にファイ君は少し困ったように眉をひそめた。
そう、ファイさんとの決定的な違いは、その笑うことのない表情だった。
「領地・・・?
えっと、オレはこの世界とは違う世界から来た・・・と思う。」
どこか寂しげな声。
おれの知っているファイさんとは雰囲気がずいぶん違う。
「違う世界?」
「そう。
この国はなんと言う名前なの?」
「ここは日本国の諏訪だ。」
「・・・やはり知らないところに出てしまったんだ・・・。
詠唱を間違えたかな・・・?」
おれたちのように世界を渡ることが、このファイ君には出来るのだろう。
ただ、どうやら今回は失敗してしまったようだ。
ーううん、どんなに力を使っても一回世界を渡るのが精一杯なんだ。ー
阪神国でそう言っていたファイさんを思い出す。
たしか、力の強い魔法使いじゃないと何度も世界を渡れない・・・みたいなことも言っていた気がする。
(この子はいったい・・・?)
「ファイはどこの国から来たんだ?」
「・・・セレス国だよ。」
「せれす国・・・?
初めて聞く名だな。」
「そうだろうね。」
「違う世界の国なのか?
違う世界って、どんな世界なんだ?」
好奇心いっぱいの若姫様にファイ君は少し困り顔だ。
あまりこういうタイプの子に会ったことがないのかもしれない。
「この国にもいろんな・・・領地かな?・・・あるよね。
オレのいた国にもいろんな場所があったけれど、オレが住んでいるところは沢山雪が降る地域で、とても寒い場所だよ。」
「雪が沢山降るのか!
俺雪好きだ!
雪合戦もできるし、そり遊びも楽しい!
ファイは何して遊ぶのが好きなんだ?」
紅い目がキラキラと輝いている。
「遊ぶ・・・」
そう呟いてファイ君は目を瞬かせた。
「そうだ、雪が降ったら遊ぶだろう?」
若姫様は単純で素直で子どもらしいと思う。
それに比べてファイ君は年の割に大人びて見える。
「いや、オレはあまり遊ばなかったな。
雪は寒くて冷たいから。
それに城には子どもがあまりいなくて。」
どこか寂しげに眉をひそめる。
城という限りは、城に仕えていたか、王族か、どちらかになるのだろう。
どちらにせよ、かなりの血筋とみて間違いない。
「なら、今年の冬は一緒に遊ぼう!
雪が寒くて冷たいだけじゃなくて、楽しいって俺が教えてやる。」
どん、と胸を叩く姿は小さいのにとても頼もしくて、思わず笑いが漏れてしまった。
「若姫。」
そんな若姫様を呼ぶ声がする。
「あ、母上!」
林の奥を見た若姫様は、にぱっと笑って駆けだした。
そして奥方様の前で一度止まってからぎゅっと抱きついた。
「どうしてここに?」
若姫様の問いに奥方様は優しく微笑んだ。
「湖のほとりに来訪者がいらしていると知ったので。」
そしてファイ君の方をじっと見た。
「ふぁいのこと?
あのね母上、ふぁいは他の世界から来たんだって。」
「ええ。
そのようね。」
ファイ君はどこか警戒しているように杖を握る。
奥方様はその緊張を解くように、優しく微笑みかけた。
「初めまして、ファイさん。
私はこの諏訪の巫女にございます。
他の世界からの来訪者を知り、着たまで。
諏訪に危害を加えないものに、私は手を出すつもりはありませんから、御心配なさらないでください。」
その言葉にファイ君は警戒を緩める。
「そうだ、母上、ふぁいを家に連れて行ってもいい?」
まだ警戒を完全にといたわけでもないファイ君はお構いなしに、若姫様は奥方様におねだりをしている。
そしてファイ君は突然の話に明らかに狼狽している。
(黒鋼さんとファイさんじゃないんだろうけれど、2人の意外な面を見れているみたいでなんだか面白い。)
思わず微笑んでしまう。
「我が家は構いませんが・・・どうでしょう。
ファイさんに失礼にならないようにご都合をお聞きしてからにしましょうね。」
「やったぁ!」
まだ家に行くとは決まっていないのに、若姫様ははしゃいでいる。
断りにくくなったファイ君の焦りが伝わってくるようだ。
「失礼のないように。」
後ろから静かに聞こえた奥方様の声はいつもよりも少し低く、若姫様はぴたりと動きを止めた。
顔が若干青い。
なんやかんや言いつつも、やはり奥方様も怒ると怖いのだろうか。
かくかくと不自然に奥方様を振りかえり数度頷いてから、ファイ君の方を向いてたずねた。
「あの・・・家に遊びに来てくれませんか?」
下から見上げてくる紅い瞳に、ファイ君は少し迷った後、根負けしたというように眉を下げた。
「ありがとう、行きたいな。」
「やったぁ!!」
ぴょんぴょんとファイ君の周りをはねる若姫様。
そんなに喜ばれるのが不思議なのだろうか、小さく首をかしげるファイ君。
「さぁ、こちらですよ。」
奥方様の言葉に2人は家の方に歩きだした。