ピッフル国
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家に帰ってサクラちゃんをソファに寝かせる。
小狼君が手伝ってくれて、紅茶を用意してリビングに行けば、そっぽを向いたままの黒たんと少し困った顔の知世ちゃん、それからボディーガードの人たちがいた。
そう言えばさっき、黒様が無茶してバルーンから飛び降りようとしたとき、黒鋼って呼んでいたけれど、あれはどういうことなんだろう。
カップを前に置けばにっこり笑ってお礼を言ってくれる。
まだサクラちゃん達と歳も変わらなくて、大変なことがあったすぐなのに、本当にしっかりしている子だ。
黒様の隣にオレが座って、その隣に小狼君が座る。
自然と視線が知世ちゃんに集まった。
その顔には、先ほどまで浮かんでいた笑顔はなくい。
「レースに仕掛けをしたのは、私です」
「貴方が!?」
驚いた様子の小狼君。
そりゃそうだろう、サクラちゃんが危険な目に逢うかも知れなくて不安だったろうし、実際黒様も怪我をしている。
あの仕掛けが全て知世ちゃんによるものだと思うのならばその反応は当然のこと。
だから。
「予選と、本選の途中まで?」
オレの言葉に知世ちゃんは少し緊張を解いた。
「気づいてらっしゃったんですね」
「主にこの人がーー」
隣の黒たんのほっぺをぷにっと突くと、黒たんが睨んでくる。
彼女の頬は柔らかくてすべすべで弾力があって、触り心地が良い。
傷なんてつけたくないくらい。
「……予選が終わった後、ここに来た時に言っただろう。
誰があんなことをしたのか突きとめて、必ず捜し出すと」
「ええ」
それはオレも記憶している。
「だが、あれは本気で言っている時の目ではない」
そんな黒りんの目は、たぶん本気だ。
本気で、知世ちゃんと向き合っている。
「聞いていた通りですね」
その言葉にオレも含めて疑問が浮かぶ。
「誰にだ?」
その疑問を口にしたのは黒りんで。
「知世姫にですわ」
あっさりと答えた知世ちゃん。
「なんだと!?」
珍しく動揺しているのか、椅子をがたんと言わせて驚いて立ち上がった黒様。
なんだか面白いことになってきた。
くすりと笑えば、いつもなら目ざとく見つけて黒様が睨むのに、今日は目を見開いて口をほんのり開けたまま。
そのくらい衝撃的だったんだ。
大切な、忠誠を誓った人と会話をしたということが。
(でも、その気持ち、オレも分かるかも)
もし、湖の底で眠るあの人と話したという人に出会ったら、オレはきっと今の黒様以上に人が変わってしまうかもしれない。
「まぁまぁ落ち着いて」
オレの言葉に黒りんは気まずそうな顔をして椅子に座った。
温かい微笑みを向けながら、知世ちゃんが再び口を開く。
「私と姿がそっくりな女の子。
日本国というところにいて、来ている装束は全く違うのですが、名前は同じ知世で」
その言葉に、黒りんがピクリと反応する。
きっと、そのお姫様に忠誠を誓っていたんだ。
「知世姫が教えてくださったんです。
あの羽のこと、別の世界の存在。
いつか来るはずの、羽根を探して旅をしている人たちの話。
そして貴方達がいらっしゃいました」
今の話だと、知世姫はたぶん強い力の持ち主だ。
しかもこの旅のことを知っていたことになる。
知っていて、黒様を巻き込ませたことになる。
ちらりと黒様を見れば、赤い目はじっと知世ちゃんを見ていて表情は読み取れない。
「どうして分かったんですか、おれたちがこの国についたことが」
小狼君の問いかけに知世ちゃんはにこっと笑って見せる。
ピッフルカンパニーの力っていうところなのかな。
不意にノックが聞こえる。
出てみれば、レースにも参加していた浅野笙悟くんに妹ノ山くんだ。
「俺達も説明会に参加するべきだと思ってな」
「お邪魔します」
きっと彼らも、仕掛けをした人であり、サクラちゃんを守ろうとしてくれた人たちなのだろう。
「ありがとうございますー
どうぞー」
席を勧める。
「この社長は下手するとこの国の大統領よりも偉いんだ。
そのくらいわかるさ」
と浅野くん。
「夢でその羽根のことを聞いたのがもう発表した後で、すでに近隣諸国からも注目の的でした。
そこで提案したんです、ドラゴンフライレースの優勝賞品にしてはどうかと」
そう言うのは妹ノ山くん。
「夢でその羽根を狙っている人達がいることも聞いていました」
「近隣諸国がちょっかいを掛けたいと思っているのと同じで、そいつらもきっとちょっかいをかけてくる。
上手くいけばレース中に捕まえられるだろう?」
「貴方達もきっとレースに参加されるだろうと、知世姫もおっしゃっていましたし。
特に黒鋼さんが」
くすりと笑う知世ちゃんにつられてオレ達も笑う。
「日本国でも負けず嫌いだったんだね」
「……黙れ」
そうはいいつつも、オレも小狼君も、そしてもしかしたら知世ちゃんも気づいているのだ。
彼女は優しいから、参加するというだろうと、知世姫が思ったことに。
「予選で少し細工をして、その羽根を狙ってくる奴らを牽制するのと同時に、あんたらにも警戒してもらおうと思ってな」
なんて親切な人たちなんだろう。
見たこともあったこともない人のために、何かをするなんて。
あまりに親切すぎて疑いたくなってしまうほど。
そんな自分はやはりどこかすれていて、それを周りに勘付かれたくなくて口を開く。
「それで知世ちゃんいつもサクラちゃんの傍を飛んでいたんだ」
「本選のときもいつもお二人が傍を飛んでいましたね」
小狼君が言葉を続ければ、2人も照れたように笑う。
「私がお願いしたんです。
本選でも仕掛けをいくつかしてありましたから。
ですが結局みなさんを危険な目に合わせることになってしまいましたわ。
すべて私の責任です」
知世ちゃんは静かに立ち上がって頭を下げた。
「申し訳ありませんでした」
静寂が部屋を占める。
その静寂を破ったのは。
「謝る必要はない」
黒りんだった。
赤い目が、知世ちゃんをじっと見て、知世ちゃんの真っ黒の瞳もそれを見つめる。
「ダイドウジが、頭を下げるようなことではない」
それはきっと、彼女が大統領よりも偉いという言葉を受けてのことだろう。
要人に仕えたいた黒ぽんだからこそ、きっとその言葉が出てきた。
感情に流されて頭を下げることは、権力を持つほど危険になるから。
そんなこと、きっと知世ちゃんもよく分かっている。
分かっているからこそ頭を下げたんだ。
「黒鋼さん、知世譲は」
「残さん」
強い口調に妹ノ山君が口を挟もうとするが、それを知世ちゃんに止められる。
それを見て、不思議だな、と思う。
知世ちゃんと知世姫は魂は同じでも別人で、黒たんのことは知らないはずなのに、こうして黒りんのことを分かっているかのような行動を取るから。
黒様は鋭い眼光で知世ちゃんを見つめ、それから投げるように言った。
「俺達に頭を下げるよりも先に、護衛や妹ノ山とやらに謝るんだなーーじゃじゃ馬」
それはきっと、さっきカイル先生からサクラちゃんを守ろうとして飛び出した時のことを言っているんだろう。
黒様の顔にはちょっと意地悪な笑顔が浮かんでいる。
ずいぶんと珍しいものが見れた気がする。
それに対して知世ちゃんは少し驚いた顔をした後に、照れたように笑っていた。
それから改めて周りを見回す。
「……みなさん、今日は御心配をおかけしまして申し訳ありませんでした」
さっきは少し怒っていた妹ノ山君も、浅野くんも、それからガードマンの人たちも、驚いたような顔をする。
知世ちゃんは眉を少し下げて、どこか年相応の表情で微笑んだ。
「それから、いつもこんなじゃじゃ馬に付き合ってくださってありがとうございます」
小さく首を振るガードマン達。
照れたように頭を掻いてそっぽを向く浅野くんに、知世ちゃんの肩に優しく手を添える妹ノ山くん。
こんな温かい雰囲気を作る元になった黒様はというと、すっかり元の感情の見えない表情に戻っていて、何考えているのかな、なんてオレは気になってしまう。
「……知世ちゃん」
不意に聞こえてきた声に知世ちゃんは驚いて振り返る。
「サクラちゃん!」
「目が覚めました?
御気分は?」
「平気。
聞いてもいい?」
いつから起きていたんだろう、もしかしたら黒りんは気づいていたのかもしれない。
特に驚いた様子もないし。
忍って、ずるい。
「……はい」
何を聞かれるのか、ドキドキしているのが伝わる。
同じ世代の女の子。
傍から見ていても、知世ちゃんがサクラちゃんと波長がぴったりで、お互いが大好きなのが分かる。
だからこそ、きっと知世ちゃんは不安なのだ。
大きな会社を運営するだけの、知力も、財力も、洞察力も、なんでも持っている彼女にとって、
いつも大人に囲まれて、総理大臣よりも偉いと言われる権力を持つ彼女にとって、
同年代で他の世界からやってきた気の合う友達がどれほど大切なものか。
彼女に全てを聞かれていたとしたらーー
どことなく知世ちゃんに同情してしまう自分がいた。
力を持つことは同時に、畏怖の対象にもなることはよく知っていたから。
でも、サクラちゃんの口から出た問いは、どこまでも純粋で。
「知世ちゃんはわざと私たちを勝たせようとしてくれたの?」
オレまでほっとしてしまった。
それはきっと知世ちゃんも同じ。
「いいえ。
確かに仕掛けはしましたが、決してサクラちゃんや皆さまを有利にしようとしたからではありませんわ。
貴方達はきっと勝つと、信じていましたから」
その時知世ちゃんが見せた笑顔は、本当に嬉しそうで。
「ありがとう」
それをみたサクラちゃんも幸せそうに笑って再び眠りについた。
オレもなんだか嬉しくなっちゃって。
「よし、全部片付いたし、もう一回パーティーしようよー」
提案すればモコナもパーティーが好きだと言ってぴょんぴょん跳ねる。
「そう致しましょう」
知世ちゃんもにっこり笑顔。
妹ノ山くんが料理や酒を準備してくれるみたい。
浅野くんもガーディアンの人たちを呼ぶみたい。
ケータイデンワって、便利だ。
黒様と知世ちゃんが顔を見合わせているのがふと目に入る。
2人とも何かを言うわけじゃないけれど、どちらからともなく微笑んで、なんだか胸が苦しくなった。
彼女の帰る場所を、見てしまった気がして。
小狼君が手伝ってくれて、紅茶を用意してリビングに行けば、そっぽを向いたままの黒たんと少し困った顔の知世ちゃん、それからボディーガードの人たちがいた。
そう言えばさっき、黒様が無茶してバルーンから飛び降りようとしたとき、黒鋼って呼んでいたけれど、あれはどういうことなんだろう。
カップを前に置けばにっこり笑ってお礼を言ってくれる。
まだサクラちゃん達と歳も変わらなくて、大変なことがあったすぐなのに、本当にしっかりしている子だ。
黒様の隣にオレが座って、その隣に小狼君が座る。
自然と視線が知世ちゃんに集まった。
その顔には、先ほどまで浮かんでいた笑顔はなくい。
「レースに仕掛けをしたのは、私です」
「貴方が!?」
驚いた様子の小狼君。
そりゃそうだろう、サクラちゃんが危険な目に逢うかも知れなくて不安だったろうし、実際黒様も怪我をしている。
あの仕掛けが全て知世ちゃんによるものだと思うのならばその反応は当然のこと。
だから。
「予選と、本選の途中まで?」
オレの言葉に知世ちゃんは少し緊張を解いた。
「気づいてらっしゃったんですね」
「主にこの人がーー」
隣の黒たんのほっぺをぷにっと突くと、黒たんが睨んでくる。
彼女の頬は柔らかくてすべすべで弾力があって、触り心地が良い。
傷なんてつけたくないくらい。
「……予選が終わった後、ここに来た時に言っただろう。
誰があんなことをしたのか突きとめて、必ず捜し出すと」
「ええ」
それはオレも記憶している。
「だが、あれは本気で言っている時の目ではない」
そんな黒りんの目は、たぶん本気だ。
本気で、知世ちゃんと向き合っている。
「聞いていた通りですね」
その言葉にオレも含めて疑問が浮かぶ。
「誰にだ?」
その疑問を口にしたのは黒りんで。
「知世姫にですわ」
あっさりと答えた知世ちゃん。
「なんだと!?」
珍しく動揺しているのか、椅子をがたんと言わせて驚いて立ち上がった黒様。
なんだか面白いことになってきた。
くすりと笑えば、いつもなら目ざとく見つけて黒様が睨むのに、今日は目を見開いて口をほんのり開けたまま。
そのくらい衝撃的だったんだ。
大切な、忠誠を誓った人と会話をしたということが。
(でも、その気持ち、オレも分かるかも)
もし、湖の底で眠るあの人と話したという人に出会ったら、オレはきっと今の黒様以上に人が変わってしまうかもしれない。
「まぁまぁ落ち着いて」
オレの言葉に黒りんは気まずそうな顔をして椅子に座った。
温かい微笑みを向けながら、知世ちゃんが再び口を開く。
「私と姿がそっくりな女の子。
日本国というところにいて、来ている装束は全く違うのですが、名前は同じ知世で」
その言葉に、黒りんがピクリと反応する。
きっと、そのお姫様に忠誠を誓っていたんだ。
「知世姫が教えてくださったんです。
あの羽のこと、別の世界の存在。
いつか来るはずの、羽根を探して旅をしている人たちの話。
そして貴方達がいらっしゃいました」
今の話だと、知世姫はたぶん強い力の持ち主だ。
しかもこの旅のことを知っていたことになる。
知っていて、黒様を巻き込ませたことになる。
ちらりと黒様を見れば、赤い目はじっと知世ちゃんを見ていて表情は読み取れない。
「どうして分かったんですか、おれたちがこの国についたことが」
小狼君の問いかけに知世ちゃんはにこっと笑って見せる。
ピッフルカンパニーの力っていうところなのかな。
不意にノックが聞こえる。
出てみれば、レースにも参加していた浅野笙悟くんに妹ノ山くんだ。
「俺達も説明会に参加するべきだと思ってな」
「お邪魔します」
きっと彼らも、仕掛けをした人であり、サクラちゃんを守ろうとしてくれた人たちなのだろう。
「ありがとうございますー
どうぞー」
席を勧める。
「この社長は下手するとこの国の大統領よりも偉いんだ。
そのくらいわかるさ」
と浅野くん。
「夢でその羽根のことを聞いたのがもう発表した後で、すでに近隣諸国からも注目の的でした。
そこで提案したんです、ドラゴンフライレースの優勝賞品にしてはどうかと」
そう言うのは妹ノ山くん。
「夢でその羽根を狙っている人達がいることも聞いていました」
「近隣諸国がちょっかいを掛けたいと思っているのと同じで、そいつらもきっとちょっかいをかけてくる。
上手くいけばレース中に捕まえられるだろう?」
「貴方達もきっとレースに参加されるだろうと、知世姫もおっしゃっていましたし。
特に黒鋼さんが」
くすりと笑う知世ちゃんにつられてオレ達も笑う。
「日本国でも負けず嫌いだったんだね」
「……黙れ」
そうはいいつつも、オレも小狼君も、そしてもしかしたら知世ちゃんも気づいているのだ。
彼女は優しいから、参加するというだろうと、知世姫が思ったことに。
「予選で少し細工をして、その羽根を狙ってくる奴らを牽制するのと同時に、あんたらにも警戒してもらおうと思ってな」
なんて親切な人たちなんだろう。
見たこともあったこともない人のために、何かをするなんて。
あまりに親切すぎて疑いたくなってしまうほど。
そんな自分はやはりどこかすれていて、それを周りに勘付かれたくなくて口を開く。
「それで知世ちゃんいつもサクラちゃんの傍を飛んでいたんだ」
「本選のときもいつもお二人が傍を飛んでいましたね」
小狼君が言葉を続ければ、2人も照れたように笑う。
「私がお願いしたんです。
本選でも仕掛けをいくつかしてありましたから。
ですが結局みなさんを危険な目に合わせることになってしまいましたわ。
すべて私の責任です」
知世ちゃんは静かに立ち上がって頭を下げた。
「申し訳ありませんでした」
静寂が部屋を占める。
その静寂を破ったのは。
「謝る必要はない」
黒りんだった。
赤い目が、知世ちゃんをじっと見て、知世ちゃんの真っ黒の瞳もそれを見つめる。
「ダイドウジが、頭を下げるようなことではない」
それはきっと、彼女が大統領よりも偉いという言葉を受けてのことだろう。
要人に仕えたいた黒ぽんだからこそ、きっとその言葉が出てきた。
感情に流されて頭を下げることは、権力を持つほど危険になるから。
そんなこと、きっと知世ちゃんもよく分かっている。
分かっているからこそ頭を下げたんだ。
「黒鋼さん、知世譲は」
「残さん」
強い口調に妹ノ山君が口を挟もうとするが、それを知世ちゃんに止められる。
それを見て、不思議だな、と思う。
知世ちゃんと知世姫は魂は同じでも別人で、黒たんのことは知らないはずなのに、こうして黒りんのことを分かっているかのような行動を取るから。
黒様は鋭い眼光で知世ちゃんを見つめ、それから投げるように言った。
「俺達に頭を下げるよりも先に、護衛や妹ノ山とやらに謝るんだなーーじゃじゃ馬」
それはきっと、さっきカイル先生からサクラちゃんを守ろうとして飛び出した時のことを言っているんだろう。
黒様の顔にはちょっと意地悪な笑顔が浮かんでいる。
ずいぶんと珍しいものが見れた気がする。
それに対して知世ちゃんは少し驚いた顔をした後に、照れたように笑っていた。
それから改めて周りを見回す。
「……みなさん、今日は御心配をおかけしまして申し訳ありませんでした」
さっきは少し怒っていた妹ノ山君も、浅野くんも、それからガードマンの人たちも、驚いたような顔をする。
知世ちゃんは眉を少し下げて、どこか年相応の表情で微笑んだ。
「それから、いつもこんなじゃじゃ馬に付き合ってくださってありがとうございます」
小さく首を振るガードマン達。
照れたように頭を掻いてそっぽを向く浅野くんに、知世ちゃんの肩に優しく手を添える妹ノ山くん。
こんな温かい雰囲気を作る元になった黒様はというと、すっかり元の感情の見えない表情に戻っていて、何考えているのかな、なんてオレは気になってしまう。
「……知世ちゃん」
不意に聞こえてきた声に知世ちゃんは驚いて振り返る。
「サクラちゃん!」
「目が覚めました?
御気分は?」
「平気。
聞いてもいい?」
いつから起きていたんだろう、もしかしたら黒りんは気づいていたのかもしれない。
特に驚いた様子もないし。
忍って、ずるい。
「……はい」
何を聞かれるのか、ドキドキしているのが伝わる。
同じ世代の女の子。
傍から見ていても、知世ちゃんがサクラちゃんと波長がぴったりで、お互いが大好きなのが分かる。
だからこそ、きっと知世ちゃんは不安なのだ。
大きな会社を運営するだけの、知力も、財力も、洞察力も、なんでも持っている彼女にとって、
いつも大人に囲まれて、総理大臣よりも偉いと言われる権力を持つ彼女にとって、
同年代で他の世界からやってきた気の合う友達がどれほど大切なものか。
彼女に全てを聞かれていたとしたらーー
どことなく知世ちゃんに同情してしまう自分がいた。
力を持つことは同時に、畏怖の対象にもなることはよく知っていたから。
でも、サクラちゃんの口から出た問いは、どこまでも純粋で。
「知世ちゃんはわざと私たちを勝たせようとしてくれたの?」
オレまでほっとしてしまった。
それはきっと知世ちゃんも同じ。
「いいえ。
確かに仕掛けはしましたが、決してサクラちゃんや皆さまを有利にしようとしたからではありませんわ。
貴方達はきっと勝つと、信じていましたから」
その時知世ちゃんが見せた笑顔は、本当に嬉しそうで。
「ありがとう」
それをみたサクラちゃんも幸せそうに笑って再び眠りについた。
オレもなんだか嬉しくなっちゃって。
「よし、全部片付いたし、もう一回パーティーしようよー」
提案すればモコナもパーティーが好きだと言ってぴょんぴょん跳ねる。
「そう致しましょう」
知世ちゃんもにっこり笑顔。
妹ノ山くんが料理や酒を準備してくれるみたい。
浅野くんもガーディアンの人たちを呼ぶみたい。
ケータイデンワって、便利だ。
黒様と知世ちゃんが顔を見合わせているのがふと目に入る。
2人とも何かを言うわけじゃないけれど、どちらからともなく微笑んで、なんだか胸が苦しくなった。
彼女の帰る場所を、見てしまった気がして。
