ピッフル国
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
救助隊の乗り物から降り、すぐに病院へ、という言葉を適当に流し、なんとか人混みに紛れて逃れる。
文明の発達した世界は便利だ。濡れた服はナントカとかいう機械で一瞬で乾かしてくれたから助かった。
人気のない路地に駆け込むと左腕の袖を捲り上げ傷を確認する。
機体の破片で切ったのだろう。
多少深いが何かが刺さっているわけでもない。
忍びの頃からの習慣で持ち歩いている止血剤をポケットから取り出して塗り、手早く手拭いを巻き、袖を下ろす。
服は破れているがそれほど目立ちはしないだろう。
病院では個人情報を尋ねられる恐れがある。
魔法の存在しないこれだけ文明の進んだ国で、他の世界からやってきたということがどのように取り扱われるかは想像できないが、下手に出ると拘束され再び旅に出られなくなる恐れがある。
日本国で忍びとして働いていた頃から怪我はつきもので、ある程度の診断と治療の心得はある。
切り傷の他にはおそらく肋骨と左手にひびが入っているだろうが、このくらいなら問題ない。
路地から出てメイン会場の方へ歩き出す。
ふと覚えのある気配と肩に優しく触れる手に振り返る。
「……どうした」
「せっかく迎えに来てあげたのに、他に返事のしかたはないの、黒りん?」
ヘラリと笑った男がお出迎え。
「さぁ、病院に行こう」
まさか心配して迎えにきたのだろうか。
そう思うと背中がむずむずして、そんなはずはないと頭の中で打ち消す。
「大丈夫だ」
そらした視線のまま路上に設置された画面に目を向ければ、姫も無事に渓谷を脱したようだが滝の前で他の機体と一緒に立ち止まってしまっている。
どうやら行き止まりのようだ。
コースのこだわり具合に、ダイドウジと俺の知る知世が同じ魂の人物だと妙に納得してしまう。
この滝の向こうがゴールだが、あまり水をかぶってはドラゴンフライは空を飛べなくなってしまう。
姫がハンドルをぎゅっと握る。
あれはアクセルを踏み込む時の癖だ。
ウィニングエッグ号が滝に向かって全速力で飛んびはじめた。
今頃控室で小僧も驚きのあまり絶叫していることだろう。
そう思うと思わず笑いが漏れた。
姫は神の愛娘。
きっとなにか驚くようなことをしでかしてくれる。
一瞬映像が途切れ、次の瞬間には姫が滝から飛び出してゴールしていた。
ファンファーレが鳴り響き、紙吹雪が舞う。
姫は一瞬ポカンとして、それから嬉しそうに歓声を上げていた。
隣の男が肩の力を抜いて笑顔を見せる。
本当に、いい顔をするようになった。
何者かによって囚われたこの男は、きっと救われるだろう。
小僧と姫と過ごす中で、彼らの優しさに触れ、心の強さに惹かれ、眩しい程の温かさに解かされ、きっと彼は、変わるーー否、変わってきている。
敵の手先の可能性を見越して彼を手中に収めようと思っていたが、俺1人がそう思ったところで彼は変わらなかっただろう。
純粋な小僧と姫とそれから白饅頭がいるからこそ、彼は変わったのだ。
白饅頭と姫がウイニングエッグ号の上で小躍りしている姿が流される。
周りを歩いていたのはスタッフや関係者だろうが、皆彼女のことを褒めているようで、どこか嬉しく感じる俺も、大概である。
姫は不思議な力を持っている。
でも、その力以上に、彼女は周りを明るく、温かくする生来の気質を持っている。
いつまでも守りたいと、そう思ってしまう。
“姫”というのは、そう言うものなのかもしれない。
画面に現れたダイドウジの笑顔に思わず苦笑する。
ふと左手に触れる手。
傷に響くのを恐れ、壊れ物に触れるかのような触り方。
「これで落ち着いて病院にいけるね」
そう言って、手を痛まない程度に引っ張って病院の方に連れて行こうとする。
「大丈夫だ」
「そう言うと思ったー
お父さんがそんなんじゃ子どもたちが真似するでしょ?」
「ここまで文明が発達した国だ。
下手すると……」
「言ってる事は分かるけど」
「大丈夫だ」
「だめだよ、酷い事故だったもん」
「大した怪我ではない」
「そんなのわからないだろ!」
珍しく声を荒げる様子に周りの視線も集まり、慌てて彼の背中を押してその場から離れる。
「ったく何してんだ」
「……そっちこそ」
「俺は忍びだ。
最低限の心得はあるし、経験もある。
骨にヒビは入っているが大事には至っていない」
「じゃあその傷は何」
「塞がらないほど深くはない。
止血もしている」
「跡でも残ったら」
「はぁ?
そんなの気にならない程傷跡はある」
男は何か言いたげな顔で黙った。
大層不満げだ。
眉がひくついている。
可愛いところもあるものだ、と思った。
傷のない右手で背中を叩く。
「心配かけたな」
「……ったく」
男はふいっと顔を背けて歩き出す。
照れ隠しだろうか。
少し猫背の背中に笑いが込み上げる。
だが子供達のいないところで済ませてしまいたい話は他にもあった。ら
「他に話があるんじゃないのか」
尋ねてみれば、やはり男は立ち止まった。
「いろんなレース中にあったアクシデントとさー
黒様がリタイアした間欠泉だっけ?なんか違う気がするんだよねー」
ふざけた男だが、彼はこう見えて鋭い観察力を待つ。
「最後のはモロに喰らっていたら怪我だけじゃ済まなかっただろうな」
「サクラちゃんが気づかなかったっていうことは、自然のものでもなかったっていうことかな。
やっぱり知世ちゃんが言っていた通り、不正を働いたのがいたってことかー」
「……2派な」
文明の発達した世界は便利だ。濡れた服はナントカとかいう機械で一瞬で乾かしてくれたから助かった。
人気のない路地に駆け込むと左腕の袖を捲り上げ傷を確認する。
機体の破片で切ったのだろう。
多少深いが何かが刺さっているわけでもない。
忍びの頃からの習慣で持ち歩いている止血剤をポケットから取り出して塗り、手早く手拭いを巻き、袖を下ろす。
服は破れているがそれほど目立ちはしないだろう。
病院では個人情報を尋ねられる恐れがある。
魔法の存在しないこれだけ文明の進んだ国で、他の世界からやってきたということがどのように取り扱われるかは想像できないが、下手に出ると拘束され再び旅に出られなくなる恐れがある。
日本国で忍びとして働いていた頃から怪我はつきもので、ある程度の診断と治療の心得はある。
切り傷の他にはおそらく肋骨と左手にひびが入っているだろうが、このくらいなら問題ない。
路地から出てメイン会場の方へ歩き出す。
ふと覚えのある気配と肩に優しく触れる手に振り返る。
「……どうした」
「せっかく迎えに来てあげたのに、他に返事のしかたはないの、黒りん?」
ヘラリと笑った男がお出迎え。
「さぁ、病院に行こう」
まさか心配して迎えにきたのだろうか。
そう思うと背中がむずむずして、そんなはずはないと頭の中で打ち消す。
「大丈夫だ」
そらした視線のまま路上に設置された画面に目を向ければ、姫も無事に渓谷を脱したようだが滝の前で他の機体と一緒に立ち止まってしまっている。
どうやら行き止まりのようだ。
コースのこだわり具合に、ダイドウジと俺の知る知世が同じ魂の人物だと妙に納得してしまう。
この滝の向こうがゴールだが、あまり水をかぶってはドラゴンフライは空を飛べなくなってしまう。
姫がハンドルをぎゅっと握る。
あれはアクセルを踏み込む時の癖だ。
ウィニングエッグ号が滝に向かって全速力で飛んびはじめた。
今頃控室で小僧も驚きのあまり絶叫していることだろう。
そう思うと思わず笑いが漏れた。
姫は神の愛娘。
きっとなにか驚くようなことをしでかしてくれる。
一瞬映像が途切れ、次の瞬間には姫が滝から飛び出してゴールしていた。
ファンファーレが鳴り響き、紙吹雪が舞う。
姫は一瞬ポカンとして、それから嬉しそうに歓声を上げていた。
隣の男が肩の力を抜いて笑顔を見せる。
本当に、いい顔をするようになった。
何者かによって囚われたこの男は、きっと救われるだろう。
小僧と姫と過ごす中で、彼らの優しさに触れ、心の強さに惹かれ、眩しい程の温かさに解かされ、きっと彼は、変わるーー否、変わってきている。
敵の手先の可能性を見越して彼を手中に収めようと思っていたが、俺1人がそう思ったところで彼は変わらなかっただろう。
純粋な小僧と姫とそれから白饅頭がいるからこそ、彼は変わったのだ。
白饅頭と姫がウイニングエッグ号の上で小躍りしている姿が流される。
周りを歩いていたのはスタッフや関係者だろうが、皆彼女のことを褒めているようで、どこか嬉しく感じる俺も、大概である。
姫は不思議な力を持っている。
でも、その力以上に、彼女は周りを明るく、温かくする生来の気質を持っている。
いつまでも守りたいと、そう思ってしまう。
“姫”というのは、そう言うものなのかもしれない。
画面に現れたダイドウジの笑顔に思わず苦笑する。
ふと左手に触れる手。
傷に響くのを恐れ、壊れ物に触れるかのような触り方。
「これで落ち着いて病院にいけるね」
そう言って、手を痛まない程度に引っ張って病院の方に連れて行こうとする。
「大丈夫だ」
「そう言うと思ったー
お父さんがそんなんじゃ子どもたちが真似するでしょ?」
「ここまで文明が発達した国だ。
下手すると……」
「言ってる事は分かるけど」
「大丈夫だ」
「だめだよ、酷い事故だったもん」
「大した怪我ではない」
「そんなのわからないだろ!」
珍しく声を荒げる様子に周りの視線も集まり、慌てて彼の背中を押してその場から離れる。
「ったく何してんだ」
「……そっちこそ」
「俺は忍びだ。
最低限の心得はあるし、経験もある。
骨にヒビは入っているが大事には至っていない」
「じゃあその傷は何」
「塞がらないほど深くはない。
止血もしている」
「跡でも残ったら」
「はぁ?
そんなの気にならない程傷跡はある」
男は何か言いたげな顔で黙った。
大層不満げだ。
眉がひくついている。
可愛いところもあるものだ、と思った。
傷のない右手で背中を叩く。
「心配かけたな」
「……ったく」
男はふいっと顔を背けて歩き出す。
照れ隠しだろうか。
少し猫背の背中に笑いが込み上げる。
だが子供達のいないところで済ませてしまいたい話は他にもあった。ら
「他に話があるんじゃないのか」
尋ねてみれば、やはり男は立ち止まった。
「いろんなレース中にあったアクシデントとさー
黒様がリタイアした間欠泉だっけ?なんか違う気がするんだよねー」
ふざけた男だが、彼はこう見えて鋭い観察力を待つ。
「最後のはモロに喰らっていたら怪我だけじゃ済まなかっただろうな」
「サクラちゃんが気づかなかったっていうことは、自然のものでもなかったっていうことかな。
やっぱり知世ちゃんが言っていた通り、不正を働いたのがいたってことかー」
「……2派な」
