阪神国
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この国は阪神共和国と言うらしい。
そしてオレたちが匿ってもらっているのは、空ちゃんこと有栖川空汰さんと奥さんの嵐さんが営む下宿なんだそうだ。
不思議な空気を持つ嵐さんは元巫女さん。
そしてこの国に住む人はみんな” 巧断 ”という守護霊みたいな物が憑くんだって。
「「クダン?」」
首をかしげるオレたちの前で、空ちゃんはホワイトボードに”巧断”と書いて見せる。
なんだか随分ややこしい文字を使う文化のようだ。
「ああ」
黒りんは文字から意味を推測したみたい。
つまり読める。
「モコナも読める!」
「おれもなんとか」
じゃあ。
「読めないのはオレだけかー」
確かに見た目もおれだけ何となく違うから、文化も比較的違うのかもしれない。
「モコナ、この国に羽根有りそうか?」
「ある。まだ遠いけど、あるよ」
空ちゃんの問いに、モコナはそう答えた。
「よし、そやったら、次の世界に行くまでこの部屋使ったらええで。
侑子さんには借りがあるしな!」
そう言ってきゅっと嵐さんの手を握れば、嵐さんは珍しく顔を赤らめている。
二人の結婚に貢献するなんて、侑子さんはなかなか幅広く活躍しているようだ。
「ありがとうございます」
「助かったねー」
ほっとした顔の小狼君。
とってもいい子だ、本当に。
「じゃあ、この部屋小狼とサクラちゃんの部屋な。
ファイと黒鋼は一緒に隣の部屋使いや。
案内するわ」
空ちゃんに言われて一緒に部屋を出る。
隣も同じ仕様の部屋だった。
「服は洗って乾かしといたるな!」
「ありがとうございます」
「よろしく頼む」
「じゃあゆっくりしいや。
また夕食になったら呼ぶな!」
そう言って空ちゃんは部屋から出て行った。
オレは部屋の窓を開ける。
賑やかに明かりの灯る町が見えた。
「楽しそうなところだねー黒りん」
少し離れた所からこっちを見ている黒りんに声をかける。
「その呼び方やめろ」
静かだ。
男にしては少し高めの声。
電気の光が高いところで結んだ長い髪に映る。
サラサラの綺麗な髪は触ったら気持ちいだろうな、とぼんやりと思う。
「んーじゃあ黒様?」
「それも却下だ」
「黒むー」
ちらりと見るだけで返事をしてくれない。
「黒ぽん」
もう見てすらくれなくなった。
黒ぽんを見ても、表情から心情なんて、まったく想像できない。
すごいポーカーフェイスだ。
ここまで来ると表情を表に出すのが苦手っていうより、出さないように訓練されているように思える。
「いいと思うのにな、ニックネーム」
黒りんの赤い眼が、オレを見た。
これは面倒だな、と思う。
何の感情も見えないけれど、それほど強くはないにしろ、殺気を放っている。
たぶん、わざと。
彼はーー否、彼女は明らかにオレを警戒している。
いったいいつそんな警戒されるようなことしただろうと、出会ってからのしばらくを思い出してみる。
やっぱりあの羽根がまずかっただろうか。
移動した時、ポケットから出そうになってたところ、もしかしたら見られていたかもしれない。
「お前の旅の目的はなんだ?」
ぞくりとする彼女の鋭い視線は、嫌いではない。
「言ったでしょ、元の世界に帰らないこと」
そう言えば小さく鼻で笑われてしまった。
「本当の目的だ」
その言葉が耳に拭きかけられるように囁かれ、目を見開く。
さっきまで、オレ達は互いに部屋の対角にいたはずなのに、なぜ俺は、彼女に押し倒されて、脅されているのだろう。
首には彼女の指先が食い込んでいる。
息が苦しい。
「ずいぶん強いんだねぇ……黒りん」
微かに緩められている。
話せる程度だけ。
でも彼女の殺気といい、この手加減と言い、プロだ。
「本職、は?」
「お前の旅の目的は?」
完全に無視されてる。
でも話せるわけない。
「ねぇ……教えてよ」
そう言ってくすりと笑えば、黒りんは不機嫌になった。
「お前、今の状況分かっているのか?」
「ん?」
だからオレは彼女の手を握る。
力を込めれば一瞬で立ち場をひっくりかえせるかと思ったけどそうもいかない。
流石、男とこうやって力比べするのに慣れているらしい。
無理に力を加えず、相手の力を利用している。
「こういう状況だけど?」
でも、やっぱりオレは男で彼女は女。
立ち場は最終的に入れ替わった。
悔しそうに一瞬だけ眉を顰めて、そのあとはもう平静としている。
こうやって脅されるのにも耐性があるんだ。
「本職はなぁに?」
同じように彼女の耳元で囁く。
舌打ちの音がする。
だから首にかけた手に力を込めた。
細い首。
「ねぇ、いいの?ここで死んじゃっても?
元いた世界に帰りたいんでしょ?」
あまりに表情も態度も変えないから、この子はもしかして息しないのかな、と思って、すっと緩めれば激しく胸が上下する。
なんだ、ちゃんと息してるし、苦しかったんだ。
「ね、何の仕事?」
「……忍、者」
「ニンジャ?」
そう言えば、セレスにいたころ、遠い東の国にそんな人がいると聞いたことがある。
魔法は使えないが、強いと聞いた。
スパイみたいな仕事、だったかな。
「ふぅん。
だから強いんだ」
それに鋭い。
「ま、長くなるみたいだし?
仲良くしようよ、黒たん」
「その、呼び方……やめ……ろ」
苦しい息の下でもそう言ってのける。
黒たんの勝気なところ、嫌いじゃないなと思った。
そんなオレの嗜好は置いておいたとしても、彼女は十分に利用させてもらわなければならない。
この旅に加えられたという必然を、鑑みるならば。
「でも君、冷静だよね。
今殺されてもおかしくないの、分かってるでしょ?」
オレの下でじっと見つめてくる赤い瞳に、オレは問う。
「お前は俺を殺さない」
不思議な女だと思う。
オレのいた国だったら、兵士として戦う魔術師には女はいなかったから、感覚として理解しにくいところもある。
「どうして?
こうして手に力を込めれば」
ぐっと首を握る。
「息、出来なくなるよ?」
オレは自分の片割れを殺すことだってできたのだから、ついさっき会ったばかりの彼女を殺すなどなんの躊躇いもないはずだ。
彼女はすっと目を細めた。
苦しそうなそぶりを見せることはないが、オレの手を持つ手の力が緩んできて、限界を知る。
手を緩めれば、また激しく息を吸った。
「苦しいなら苦しいって言えば?」
しばらく呼吸を整えて、彼女は身体を起こす。
オレもそれを拒みはしない。
彼女にはオレの方が強いということさえ理解しておいてもらえれば、今は十分だ。
「お前もな」
予想外の言葉にオレは固まる。
それが自分の求めていた答えであったと気づいたのはその一瞬後で、更にその言葉の真意を考え直し、改めてその真意は分からない事に気付いた。
何か聞き間違えたのだろうか。
彼女は立ち上がると窓から町を見る。
階段を上がってくる足音がした。
考えてみれば、彼女は男装しておりその完成度の高さから誰も気付いてはいない。
男2人が触れあう距離にいるのは不自然なことだ。
「夕食できたでー!」
スパンとドアを開けた空ちゃんに、気配に敏感な彼女ならではの業だったのだろうと思う。
「今行く」
「おう!
小狼くんは先に下りてるで」
「ああ」
空ちゃんは背中を向けて階段を下りて行った。
「お前は俺を殺すつもりはなかった。
だからいちいち騒がなかった。
それだけだ」
そう言ってのける横顔に、胸の奥が妙に疼いた。
そしてオレたちが匿ってもらっているのは、空ちゃんこと有栖川空汰さんと奥さんの嵐さんが営む下宿なんだそうだ。
不思議な空気を持つ嵐さんは元巫女さん。
そしてこの国に住む人はみんな”
「「クダン?」」
首をかしげるオレたちの前で、空ちゃんはホワイトボードに”巧断”と書いて見せる。
なんだか随分ややこしい文字を使う文化のようだ。
「ああ」
黒りんは文字から意味を推測したみたい。
つまり読める。
「モコナも読める!」
「おれもなんとか」
じゃあ。
「読めないのはオレだけかー」
確かに見た目もおれだけ何となく違うから、文化も比較的違うのかもしれない。
「モコナ、この国に羽根有りそうか?」
「ある。まだ遠いけど、あるよ」
空ちゃんの問いに、モコナはそう答えた。
「よし、そやったら、次の世界に行くまでこの部屋使ったらええで。
侑子さんには借りがあるしな!」
そう言ってきゅっと嵐さんの手を握れば、嵐さんは珍しく顔を赤らめている。
二人の結婚に貢献するなんて、侑子さんはなかなか幅広く活躍しているようだ。
「ありがとうございます」
「助かったねー」
ほっとした顔の小狼君。
とってもいい子だ、本当に。
「じゃあ、この部屋小狼とサクラちゃんの部屋な。
ファイと黒鋼は一緒に隣の部屋使いや。
案内するわ」
空ちゃんに言われて一緒に部屋を出る。
隣も同じ仕様の部屋だった。
「服は洗って乾かしといたるな!」
「ありがとうございます」
「よろしく頼む」
「じゃあゆっくりしいや。
また夕食になったら呼ぶな!」
そう言って空ちゃんは部屋から出て行った。
オレは部屋の窓を開ける。
賑やかに明かりの灯る町が見えた。
「楽しそうなところだねー黒りん」
少し離れた所からこっちを見ている黒りんに声をかける。
「その呼び方やめろ」
静かだ。
男にしては少し高めの声。
電気の光が高いところで結んだ長い髪に映る。
サラサラの綺麗な髪は触ったら気持ちいだろうな、とぼんやりと思う。
「んーじゃあ黒様?」
「それも却下だ」
「黒むー」
ちらりと見るだけで返事をしてくれない。
「黒ぽん」
もう見てすらくれなくなった。
黒ぽんを見ても、表情から心情なんて、まったく想像できない。
すごいポーカーフェイスだ。
ここまで来ると表情を表に出すのが苦手っていうより、出さないように訓練されているように思える。
「いいと思うのにな、ニックネーム」
黒りんの赤い眼が、オレを見た。
これは面倒だな、と思う。
何の感情も見えないけれど、それほど強くはないにしろ、殺気を放っている。
たぶん、わざと。
彼はーー否、彼女は明らかにオレを警戒している。
いったいいつそんな警戒されるようなことしただろうと、出会ってからのしばらくを思い出してみる。
やっぱりあの羽根がまずかっただろうか。
移動した時、ポケットから出そうになってたところ、もしかしたら見られていたかもしれない。
「お前の旅の目的はなんだ?」
ぞくりとする彼女の鋭い視線は、嫌いではない。
「言ったでしょ、元の世界に帰らないこと」
そう言えば小さく鼻で笑われてしまった。
「本当の目的だ」
その言葉が耳に拭きかけられるように囁かれ、目を見開く。
さっきまで、オレ達は互いに部屋の対角にいたはずなのに、なぜ俺は、彼女に押し倒されて、脅されているのだろう。
首には彼女の指先が食い込んでいる。
息が苦しい。
「ずいぶん強いんだねぇ……黒りん」
微かに緩められている。
話せる程度だけ。
でも彼女の殺気といい、この手加減と言い、プロだ。
「本職、は?」
「お前の旅の目的は?」
完全に無視されてる。
でも話せるわけない。
「ねぇ……教えてよ」
そう言ってくすりと笑えば、黒りんは不機嫌になった。
「お前、今の状況分かっているのか?」
「ん?」
だからオレは彼女の手を握る。
力を込めれば一瞬で立ち場をひっくりかえせるかと思ったけどそうもいかない。
流石、男とこうやって力比べするのに慣れているらしい。
無理に力を加えず、相手の力を利用している。
「こういう状況だけど?」
でも、やっぱりオレは男で彼女は女。
立ち場は最終的に入れ替わった。
悔しそうに一瞬だけ眉を顰めて、そのあとはもう平静としている。
こうやって脅されるのにも耐性があるんだ。
「本職はなぁに?」
同じように彼女の耳元で囁く。
舌打ちの音がする。
だから首にかけた手に力を込めた。
細い首。
「ねぇ、いいの?ここで死んじゃっても?
元いた世界に帰りたいんでしょ?」
あまりに表情も態度も変えないから、この子はもしかして息しないのかな、と思って、すっと緩めれば激しく胸が上下する。
なんだ、ちゃんと息してるし、苦しかったんだ。
「ね、何の仕事?」
「……忍、者」
「ニンジャ?」
そう言えば、セレスにいたころ、遠い東の国にそんな人がいると聞いたことがある。
魔法は使えないが、強いと聞いた。
スパイみたいな仕事、だったかな。
「ふぅん。
だから強いんだ」
それに鋭い。
「ま、長くなるみたいだし?
仲良くしようよ、黒たん」
「その、呼び方……やめ……ろ」
苦しい息の下でもそう言ってのける。
黒たんの勝気なところ、嫌いじゃないなと思った。
そんなオレの嗜好は置いておいたとしても、彼女は十分に利用させてもらわなければならない。
この旅に加えられたという必然を、鑑みるならば。
「でも君、冷静だよね。
今殺されてもおかしくないの、分かってるでしょ?」
オレの下でじっと見つめてくる赤い瞳に、オレは問う。
「お前は俺を殺さない」
不思議な女だと思う。
オレのいた国だったら、兵士として戦う魔術師には女はいなかったから、感覚として理解しにくいところもある。
「どうして?
こうして手に力を込めれば」
ぐっと首を握る。
「息、出来なくなるよ?」
オレは自分の片割れを殺すことだってできたのだから、ついさっき会ったばかりの彼女を殺すなどなんの躊躇いもないはずだ。
彼女はすっと目を細めた。
苦しそうなそぶりを見せることはないが、オレの手を持つ手の力が緩んできて、限界を知る。
手を緩めれば、また激しく息を吸った。
「苦しいなら苦しいって言えば?」
しばらく呼吸を整えて、彼女は身体を起こす。
オレもそれを拒みはしない。
彼女にはオレの方が強いということさえ理解しておいてもらえれば、今は十分だ。
「お前もな」
予想外の言葉にオレは固まる。
それが自分の求めていた答えであったと気づいたのはその一瞬後で、更にその言葉の真意を考え直し、改めてその真意は分からない事に気付いた。
何か聞き間違えたのだろうか。
彼女は立ち上がると窓から町を見る。
階段を上がってくる足音がした。
考えてみれば、彼女は男装しておりその完成度の高さから誰も気付いてはいない。
男2人が触れあう距離にいるのは不自然なことだ。
「夕食できたでー!」
スパンとドアを開けた空ちゃんに、気配に敏感な彼女ならではの業だったのだろうと思う。
「今行く」
「おう!
小狼くんは先に下りてるで」
「ああ」
空ちゃんは背中を向けて階段を下りて行った。
「お前は俺を殺すつもりはなかった。
だからいちいち騒がなかった。
それだけだ」
そう言ってのける横顔に、胸の奥が妙に疼いた。
