ピッフル国
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いよいよ表彰式だ。
あちこちにガードマンのスーツ姿のお姉さんがいて、知世ちゃんもずいぶん気を使っていることがうかがえる。
表彰台の傍にはオレ達レース参加者とスタッフが、表彰を見ることができる特別席が設けられていた。
少し遅れてその席についたオレと黒たんを、小狼君と龍王君が手を振って迎えてくれた。
「黒鋼さん、怪我は大丈夫ですか?」
「ああ」
「良かった」
またを嘘ついている黒たんに思わず苦笑が漏れる。
そうこうしているうちに、ステージにスポットライトが当たり、サクラちゃんの登場だ。
「さぁ!
ついに優勝がきまりました!
ドラゴンフライレース優勝者は!
誰よりも可憐に!
そして誰よりも速く空を駆けたウイニングエッグ号だー!!」
会場が一斉に沸きたつ。
サクラちゃんの優勝を、こんなにたくさんの人も一緒に祝ってくれるなんて、なんだかオレまでくすぐったくなるなぁと思う。
サクラちゃんも少し照れているのか頬を染めて、優勝賞品である羽根を受け取っている。
観客にそれを見せるようにいろんな方向を向いているサクラちゃんは、小狼君の姿を見つけると小さく手を振った。
それに気づいた小狼君もとてもうれしそうで、
それを無邪気に冷やかす龍王君に顔を真っ赤にする小狼君が面白い。
その横でちょっとホッとした顔の黒たん。
服の隙間から見えた手は赤紫になっていた。
確かに骨はヒビだけかも知れないが、打身や筋を痛めたりと言うことも大いにあるだろう。
彼女は忍びで、怪我など慣れているのかも知れないが、オレたちはそうじゃない。
ただ全てを隠す事だけがオレ達を心配から遠ざけると思っているのだろう。
「怪我酷いのにちゃんと固定しないんだからー」
小声でそう言えば、聞こえないふりをされてしまった。
「あんまり大げさにしたらサクラちゃん責任感じちゃうもんねー」
そう言えばやっとこっちを向いてくれた。
「面倒だっただけだ」
「そうしておいてあげるよ、お父さん。
でも本当に、治療が必要そうなら言ってね」
彼女はまた顔を逸らして、照れたように微かに目を細めて頷いた。
やっぱり優しいな、と思う。
彼女の優しさと強さは、いつもオレ達を支えてくれている。
「でもさ、変わったと思わない?
小狼君は旅の最初は全然笑わなくて、苦しそうで。
サクラちゃんは記憶が揃っていないせいもあるけど、不安そうで。
黒様が仏頂面なのは今も一緒か」
わざとそう言って、くすりと笑う。
「旅の間に辛いこともあるけど楽しいこともあって、ああやってあの子たちが自分で頑張って笑っているのを見るとさ、変わったなぁって思って」
何、オレなんかいいこといってるね。
周りの空気にのまれて、なんか調子のっちゃってるのかな。
もう一度くすりと笑って黒様を見れば、どこか真剣な面持ちで、でもとても穏やかにオレの方を見ていて、少し驚く。
細い指がオレの頬に伸び、風がいたずらにもてあそぶ髪を耳に掛けた。
細い指先はいつも剣を握っているとは思えないくらい繊細。
彼女は無骨だと言うけれど、彼女の全ては爪の先まで、美しい。
そう言えば、髪もずいぶん伸びてきた。
そのくらいみんなと一緒にいるんだ、変わって当然。
とくに子どもの成長なんて早いしーー
「そう思えるお前も、変わったんだろう」
その言葉は、オレの耳に入っていた歓声を掻き消してしまうほど、威力があった。
光を受けてきらきらと輝きを秘める赤い瞳は、オレに慈しみを注いでいた。
そしてスローモーションのようにオレから外され、笑顔のサクラちゃんとその隣の知世ちゃんに向けられる。
すっと通った鼻先、穏やかな瞳、それを縁取る繊細な緑の黒髪ーー美しい彼女は確かに、オレにとってかけがえのない人だった。
言ったのはオレだった。
みんな変わったねって。
でも、まさかその変化に気づいてしまうほど、オレが変わっていたなんて。
この前から少しずつ忠告は受けていたけれど、こう体感してしまうと何とも。
一瞬で凍ってしまったオレの背筋は、辺りの熱気にもかかわらずしばらく解けることはなかった。
表彰式の後に連絡があった時間に、俺たちはピッフルカンパニーの飛行船の前にやってきた。
そこに集まっているのは、今回のレースの参加者たち。
懐かしい顔も、見たくない顔も揃っている。
(片方の妨害者は、あいつらだろう)
楽しげに談笑する妹之山と浅野だ。
ダイドウジと手を組んでいたのだろう。
彼女が犯人探しに関して本気でないことは分かっている。
ー誰があんなことをしたのか突きとめて、必ず捜し出しますわー
あの言葉が嘘で、本当に彼女が子どもたちを傷つける存在だったならばと思った日もあったが、レースに参加して確信した。
(あいつらの妨害は、妨害以上の意図がある)
受付を済ませ、順に飛行船に乗り込む。
どうやら初めて乗るらしい少年と少女はすっかり興奮しているようだ。
モコナもそろってきゃっきゃと騒いでいる。
問題はもう片方だ。
それが見つけられない限り、子どもたちから目を離せない。
なぜならその犯人は、相手を殺してしまってもかまわないと思っているからだ。
そう考えると、俺達の知らないところで2派の攻防があったとも考えられなくはない。
配られた飲み物を右手で持ち、子どもたちから目を離さないように視界に入れつつ、ダイドウジに目を向ける。
すると不意にダイドウジと目が合い、向こうが微笑んだ。
(魂は同じ……か)
俺も小さく笑みを返す。
ダイドウジの挨拶があり、続いて乾杯。
「サクラかっこよかったよー」
「本当にね」
お酒を片手に青年とモコナが少女に言えば、恥ずかしそうに頬を染めた。
「黒鋼さん、手は大丈夫ですか?」
こんな祝いの席でも心配するところが、彼女の好かれる理由なのかもしれないが、そんなことは気にする必要なんてないのに。
「ああ」
「黒鋼さん、私に言いましたよね。
隣で見ている人の気持ちも考えるようにって」
確かに言った。
片眉をあげて先を促す。
「黒鋼さんもですよ」
困ったようなその顔に、思わず笑う。
「俺はそう言うのは向かない。
根っからの忍びだからな。
……だが心遣いに礼を言う」
頭を撫でてやれば姫は少し残念そうな顔をしたけれど、それ以上は何も言わなかった。
次に男に目を向ける。
「ファイさんは?」
「全然平気ー」
そして小僧へ。
「小狼君、怪我は?」
「大丈夫ですよ」
「ほんとに?
嘘じゃない?
我慢していない?」
彼の言葉は信用できないのだろうか。
ずいずいと詰め寄る姫に、小僧は慌てている。
「ほ……本当です」
ぎゅっと羽根が封印されたトロフィーを抱きしめる姿は、本当に嬉しそうで、とりかこむ3人と1匹は安堵を隠しきれない。
「開けないんですか?」
「羽根が戻ったら眠ってしまうかもしれないから。
知世ちゃんにきちんとお礼を言いたいの。
主催者さんでまだ忙しいみたいだから。
それからみんなにも言いたいの」
姫の手が小僧の手とつながり、そして視線が俺達の方にも向けられる。
「モコちゃんと、ファイさんと、黒鋼さんと、小狼君がいてくれたから勝てた」
この子はどこまで澄んでいるのだろう。
温かいのだろう。
こんなオレが、いつまでもいつまでもこのままでいてほしいと、強く願ってしまうほど。
あちこちにガードマンのスーツ姿のお姉さんがいて、知世ちゃんもずいぶん気を使っていることがうかがえる。
表彰台の傍にはオレ達レース参加者とスタッフが、表彰を見ることができる特別席が設けられていた。
少し遅れてその席についたオレと黒たんを、小狼君と龍王君が手を振って迎えてくれた。
「黒鋼さん、怪我は大丈夫ですか?」
「ああ」
「良かった」
またを嘘ついている黒たんに思わず苦笑が漏れる。
そうこうしているうちに、ステージにスポットライトが当たり、サクラちゃんの登場だ。
「さぁ!
ついに優勝がきまりました!
ドラゴンフライレース優勝者は!
誰よりも可憐に!
そして誰よりも速く空を駆けたウイニングエッグ号だー!!」
会場が一斉に沸きたつ。
サクラちゃんの優勝を、こんなにたくさんの人も一緒に祝ってくれるなんて、なんだかオレまでくすぐったくなるなぁと思う。
サクラちゃんも少し照れているのか頬を染めて、優勝賞品である羽根を受け取っている。
観客にそれを見せるようにいろんな方向を向いているサクラちゃんは、小狼君の姿を見つけると小さく手を振った。
それに気づいた小狼君もとてもうれしそうで、
それを無邪気に冷やかす龍王君に顔を真っ赤にする小狼君が面白い。
その横でちょっとホッとした顔の黒たん。
服の隙間から見えた手は赤紫になっていた。
確かに骨はヒビだけかも知れないが、打身や筋を痛めたりと言うことも大いにあるだろう。
彼女は忍びで、怪我など慣れているのかも知れないが、オレたちはそうじゃない。
ただ全てを隠す事だけがオレ達を心配から遠ざけると思っているのだろう。
「怪我酷いのにちゃんと固定しないんだからー」
小声でそう言えば、聞こえないふりをされてしまった。
「あんまり大げさにしたらサクラちゃん責任感じちゃうもんねー」
そう言えばやっとこっちを向いてくれた。
「面倒だっただけだ」
「そうしておいてあげるよ、お父さん。
でも本当に、治療が必要そうなら言ってね」
彼女はまた顔を逸らして、照れたように微かに目を細めて頷いた。
やっぱり優しいな、と思う。
彼女の優しさと強さは、いつもオレ達を支えてくれている。
「でもさ、変わったと思わない?
小狼君は旅の最初は全然笑わなくて、苦しそうで。
サクラちゃんは記憶が揃っていないせいもあるけど、不安そうで。
黒様が仏頂面なのは今も一緒か」
わざとそう言って、くすりと笑う。
「旅の間に辛いこともあるけど楽しいこともあって、ああやってあの子たちが自分で頑張って笑っているのを見るとさ、変わったなぁって思って」
何、オレなんかいいこといってるね。
周りの空気にのまれて、なんか調子のっちゃってるのかな。
もう一度くすりと笑って黒様を見れば、どこか真剣な面持ちで、でもとても穏やかにオレの方を見ていて、少し驚く。
細い指がオレの頬に伸び、風がいたずらにもてあそぶ髪を耳に掛けた。
細い指先はいつも剣を握っているとは思えないくらい繊細。
彼女は無骨だと言うけれど、彼女の全ては爪の先まで、美しい。
そう言えば、髪もずいぶん伸びてきた。
そのくらいみんなと一緒にいるんだ、変わって当然。
とくに子どもの成長なんて早いしーー
「そう思えるお前も、変わったんだろう」
その言葉は、オレの耳に入っていた歓声を掻き消してしまうほど、威力があった。
光を受けてきらきらと輝きを秘める赤い瞳は、オレに慈しみを注いでいた。
そしてスローモーションのようにオレから外され、笑顔のサクラちゃんとその隣の知世ちゃんに向けられる。
すっと通った鼻先、穏やかな瞳、それを縁取る繊細な緑の黒髪ーー美しい彼女は確かに、オレにとってかけがえのない人だった。
言ったのはオレだった。
みんな変わったねって。
でも、まさかその変化に気づいてしまうほど、オレが変わっていたなんて。
この前から少しずつ忠告は受けていたけれど、こう体感してしまうと何とも。
一瞬で凍ってしまったオレの背筋は、辺りの熱気にもかかわらずしばらく解けることはなかった。
表彰式の後に連絡があった時間に、俺たちはピッフルカンパニーの飛行船の前にやってきた。
そこに集まっているのは、今回のレースの参加者たち。
懐かしい顔も、見たくない顔も揃っている。
(片方の妨害者は、あいつらだろう)
楽しげに談笑する妹之山と浅野だ。
ダイドウジと手を組んでいたのだろう。
彼女が犯人探しに関して本気でないことは分かっている。
ー誰があんなことをしたのか突きとめて、必ず捜し出しますわー
あの言葉が嘘で、本当に彼女が子どもたちを傷つける存在だったならばと思った日もあったが、レースに参加して確信した。
(あいつらの妨害は、妨害以上の意図がある)
受付を済ませ、順に飛行船に乗り込む。
どうやら初めて乗るらしい少年と少女はすっかり興奮しているようだ。
モコナもそろってきゃっきゃと騒いでいる。
問題はもう片方だ。
それが見つけられない限り、子どもたちから目を離せない。
なぜならその犯人は、相手を殺してしまってもかまわないと思っているからだ。
そう考えると、俺達の知らないところで2派の攻防があったとも考えられなくはない。
配られた飲み物を右手で持ち、子どもたちから目を離さないように視界に入れつつ、ダイドウジに目を向ける。
すると不意にダイドウジと目が合い、向こうが微笑んだ。
(魂は同じ……か)
俺も小さく笑みを返す。
ダイドウジの挨拶があり、続いて乾杯。
「サクラかっこよかったよー」
「本当にね」
お酒を片手に青年とモコナが少女に言えば、恥ずかしそうに頬を染めた。
「黒鋼さん、手は大丈夫ですか?」
こんな祝いの席でも心配するところが、彼女の好かれる理由なのかもしれないが、そんなことは気にする必要なんてないのに。
「ああ」
「黒鋼さん、私に言いましたよね。
隣で見ている人の気持ちも考えるようにって」
確かに言った。
片眉をあげて先を促す。
「黒鋼さんもですよ」
困ったようなその顔に、思わず笑う。
「俺はそう言うのは向かない。
根っからの忍びだからな。
……だが心遣いに礼を言う」
頭を撫でてやれば姫は少し残念そうな顔をしたけれど、それ以上は何も言わなかった。
次に男に目を向ける。
「ファイさんは?」
「全然平気ー」
そして小僧へ。
「小狼君、怪我は?」
「大丈夫ですよ」
「ほんとに?
嘘じゃない?
我慢していない?」
彼の言葉は信用できないのだろうか。
ずいずいと詰め寄る姫に、小僧は慌てている。
「ほ……本当です」
ぎゅっと羽根が封印されたトロフィーを抱きしめる姿は、本当に嬉しそうで、とりかこむ3人と1匹は安堵を隠しきれない。
「開けないんですか?」
「羽根が戻ったら眠ってしまうかもしれないから。
知世ちゃんにきちんとお礼を言いたいの。
主催者さんでまだ忙しいみたいだから。
それからみんなにも言いたいの」
姫の手が小僧の手とつながり、そして視線が俺達の方にも向けられる。
「モコちゃんと、ファイさんと、黒鋼さんと、小狼君がいてくれたから勝てた」
この子はどこまで澄んでいるのだろう。
温かいのだろう。
こんなオレが、いつまでもいつまでもこのままでいてほしいと、強く願ってしまうほど。
