桜都国
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夜の街をひたすら歩く。
鬼児の出没ルートは頭に入っているが、それ以外でも出没しがちだから注意はいる。
だがマントもあるし、逃げるだけの力はあるつもりだ。
何より酔いを覚ます必要がある。
ゲームの中だからだろうか、妙に酒が良く回っている。
考えてみれば、記憶を見、手を加えられるこの国の技術ならば、ゲーム性や物語性を高める為に、酒の耐性や心理的開示度についても関与している可能性は否めない。
人に見張られ操の管理される中で、物語の登場人物のごとき扱いを受けるのは、便利なようで不便だ。
そう考えると、彼と明日の朝に顔を合わせた時、いつも通りの2人に戻れる気がした。
ふと開けた場所に出て顔を上げる。
中央公園だ。
多くの桜が植えられた公園で、月光に照らされながら風に乗って花弁が舞っている。
本来春の花だが、きっとこの国では永久に桜が咲いているのだろう。
作られた世界だから。
桜の枝先から更に上を見上げる。
だからずっと満月なのだろうかーー
今日集まっていた草薙、譲刃、蘇摩、龍王は左手の甲に青く桜の模様が浮かんでいた。
つまり、このゲームは2回以上経験済みだ。
彼らならばこのゲームについてより深い事も知っている可能性もある。
俺たち以外の異世界から来た者について、彼らに話を聞くのも一つの手か。
園内には誰もいないようだ。
溜息をついて園内を進み、一番大きな桜の木の下までやってきた。
作り物だとわかってはいるが、美しい。
だがそれに触れても命は感じない。
やはり作り物で、芸術品のようなものだろう。
そっと背中を預ける。
武器がなければ鬼児は倒せない。
小僧の為にも早く手に入れるべきで、草薙が明日案内してくれることになっている。
俺が教えやすいのは剣だからそれを買い与えるつもりだが、足技が使いにくくなるのが難点だ。
靴に装着するような武器の方が賢いかもしれない。
彼の武術スタイルは独特だ。
確か数日前、昔戦い方を誰かに教えてもらったと言っていたから、途中からは我流のようなものだろう。
あの時話が途中になってしまったが、それがどんな師匠であったか興味はある。
ーーふと気配を感じて大きく左に飛ぶ。
鬼の鋭い爪が、俺がもたれていた桜の幹に深々と突き刺さり、それを引き抜こうと必死になっている。
鬼児が暴れる度、花が激しく散り、枝が折れた。
公園は鬼児の出没地域ではない。
逃げるが勝ちかと思ったが、また新たな気配に一旦跳び下がる。
俺に襲いかかった男は穏やかな笑みを浮かべて、まるで鬼の様な刀を握っていた。
否、右手が鬼児の様であった。
「こんばんは」
優しい声だが、その声に温度は感じない。
「随分な挨拶だな。
何の用だ」
「強い者には消えてもらおうと思って」
「何の為に」
「それは秘密」
楽しげに笑う様子に再び跳び下がり、マントで身体の正面を覆う。
男の鬼児の様な右手を受け流すことができたので、あの手の力は鬼児で間違いない。
「面白いものを持っているね。
誰から貰ったのかな」
耳元で囁かれ目を見開く。
刀が液体の様に形を変え、まるで網の様に広がり、俺を捉えようと覆い被さってくる。
空中で一瞬の隙をついて刀を蹴って地面に転がり落ちた。
「すごいな、これから逃げられたのは初めてだ」
どこかで切られたのだろう。
頬の出血を拭う。
他にもマントで覆いきれなかった足の傷も深く、致命的だ。
巨大な鬼児の上から俺を見下ろす男は眼鏡を取り出してかけたーー殺す者の目だ。
武器がない以上、鬼児も男も倒す術はない。
逃げるしかない。
鬼児に取り囲まれそうになり飛び上がると同時に左襟のボタンを押す。
「蒼石、見えてるか」
「はい」
始め俺に襲いかかった鬼が折った枝を拾い、逃げる。
「こいつに魔法をかけろ。
どうせ剣も枝も作りものなんだろ」
「そうですが物質属性が違います!」
「何とかしろ!
被害者を増やしたくないならな」
「無茶なことを言いますね。
10秒待ってください!
物質属性をすぐに変更しますから」
「ゲームとは便利だな」
「誰と話してるんだい?」
すぐ近くでした声に振り返る。
男の感情のない瞳が俺を映していた。
9 ーー
大きく飛び下がり、転がりながら鬼児の振り下ろされる爪を避ける。
8 ーー
体制を立て直し、近くにいる蜘蛛型鬼児の上に駆け上る。
振り落とされそうになるギリギリまで乗って大きく飛び上がる。
7 ーー
巨大な鬼児の光線がその鬼児を焼き切った。
煙に紛れて少しでも離れようとするも、複数いた蜘蛛型鬼が回り込んでおり飛びかかってくる。
6 ーー
思い切って鬼児に向かって飛び上がり、マントで攻撃を防ぎながら一体蹴り飛ばし、そのまま桜の上に飛び移る。
5 ーー
気配に間髪入れず飛び上がると、立っていた枝がすっぱりと切り落とされている。
迫ってくる男が楽しそうに笑った。
背筋が寒くなる。
4 ーー
「なかなか早い」
「お前もな」
3 ーー
男から逃げるべく巨大な鬼児に駆け上る。
大きい分愚鈍だ。
手にした桜の枝が光り、刀に姿を変えた。
青みがかった美しい長剣だ。
「できました!」
蒼石の焦った声がする。
「仕事が早いな!上等だッ!!」
逃げるのをやめ、大きく飛び上がる。
空中で男と対峙する。
男は俺の手にある剣に気付き目を見開いた。
容赦する気はない。
この男は、俺を狙っている。
つまり小僧達も狙われるに違いないのだ。
「閃竜・飛光撃ッ!!!」
激しい雷が男や鬼児に襲いかかる。
一撃で倒すことは難しいだろうが、すぐに襲っては来ないはずだ。
形勢が不利である以上、とにかく今は逃げるしかない。
振り返る時間さえ惜しく、兎に角一心不乱に走った。
破壊し尽くされた公園に残された男ーー星史郎は桜の幹にもたれかかるようにして腰を下ろした。
彼にしては珍しく呼吸は荒く、攻撃を受け止めた刀は一部破損し、その刀を持つ右腕は出血していた。
その傷を圧迫止血しながら、星史郎は空を見上げる。
「やはり消えてもらわねば」
微かに笑みを浮かべて。
鬼児の出没ルートは頭に入っているが、それ以外でも出没しがちだから注意はいる。
だがマントもあるし、逃げるだけの力はあるつもりだ。
何より酔いを覚ます必要がある。
ゲームの中だからだろうか、妙に酒が良く回っている。
考えてみれば、記憶を見、手を加えられるこの国の技術ならば、ゲーム性や物語性を高める為に、酒の耐性や心理的開示度についても関与している可能性は否めない。
人に見張られ操の管理される中で、物語の登場人物のごとき扱いを受けるのは、便利なようで不便だ。
そう考えると、彼と明日の朝に顔を合わせた時、いつも通りの2人に戻れる気がした。
ふと開けた場所に出て顔を上げる。
中央公園だ。
多くの桜が植えられた公園で、月光に照らされながら風に乗って花弁が舞っている。
本来春の花だが、きっとこの国では永久に桜が咲いているのだろう。
作られた世界だから。
桜の枝先から更に上を見上げる。
だからずっと満月なのだろうかーー
今日集まっていた草薙、譲刃、蘇摩、龍王は左手の甲に青く桜の模様が浮かんでいた。
つまり、このゲームは2回以上経験済みだ。
彼らならばこのゲームについてより深い事も知っている可能性もある。
俺たち以外の異世界から来た者について、彼らに話を聞くのも一つの手か。
園内には誰もいないようだ。
溜息をついて園内を進み、一番大きな桜の木の下までやってきた。
作り物だとわかってはいるが、美しい。
だがそれに触れても命は感じない。
やはり作り物で、芸術品のようなものだろう。
そっと背中を預ける。
武器がなければ鬼児は倒せない。
小僧の為にも早く手に入れるべきで、草薙が明日案内してくれることになっている。
俺が教えやすいのは剣だからそれを買い与えるつもりだが、足技が使いにくくなるのが難点だ。
靴に装着するような武器の方が賢いかもしれない。
彼の武術スタイルは独特だ。
確か数日前、昔戦い方を誰かに教えてもらったと言っていたから、途中からは我流のようなものだろう。
あの時話が途中になってしまったが、それがどんな師匠であったか興味はある。
ーーふと気配を感じて大きく左に飛ぶ。
鬼の鋭い爪が、俺がもたれていた桜の幹に深々と突き刺さり、それを引き抜こうと必死になっている。
鬼児が暴れる度、花が激しく散り、枝が折れた。
公園は鬼児の出没地域ではない。
逃げるが勝ちかと思ったが、また新たな気配に一旦跳び下がる。
俺に襲いかかった男は穏やかな笑みを浮かべて、まるで鬼の様な刀を握っていた。
否、右手が鬼児の様であった。
「こんばんは」
優しい声だが、その声に温度は感じない。
「随分な挨拶だな。
何の用だ」
「強い者には消えてもらおうと思って」
「何の為に」
「それは秘密」
楽しげに笑う様子に再び跳び下がり、マントで身体の正面を覆う。
男の鬼児の様な右手を受け流すことができたので、あの手の力は鬼児で間違いない。
「面白いものを持っているね。
誰から貰ったのかな」
耳元で囁かれ目を見開く。
刀が液体の様に形を変え、まるで網の様に広がり、俺を捉えようと覆い被さってくる。
空中で一瞬の隙をついて刀を蹴って地面に転がり落ちた。
「すごいな、これから逃げられたのは初めてだ」
どこかで切られたのだろう。
頬の出血を拭う。
他にもマントで覆いきれなかった足の傷も深く、致命的だ。
巨大な鬼児の上から俺を見下ろす男は眼鏡を取り出してかけたーー殺す者の目だ。
武器がない以上、鬼児も男も倒す術はない。
逃げるしかない。
鬼児に取り囲まれそうになり飛び上がると同時に左襟のボタンを押す。
「蒼石、見えてるか」
「はい」
始め俺に襲いかかった鬼が折った枝を拾い、逃げる。
「こいつに魔法をかけろ。
どうせ剣も枝も作りものなんだろ」
「そうですが物質属性が違います!」
「何とかしろ!
被害者を増やしたくないならな」
「無茶なことを言いますね。
10秒待ってください!
物質属性をすぐに変更しますから」
「ゲームとは便利だな」
「誰と話してるんだい?」
すぐ近くでした声に振り返る。
男の感情のない瞳が俺を映していた。
9 ーー
大きく飛び下がり、転がりながら鬼児の振り下ろされる爪を避ける。
8 ーー
体制を立て直し、近くにいる蜘蛛型鬼児の上に駆け上る。
振り落とされそうになるギリギリまで乗って大きく飛び上がる。
7 ーー
巨大な鬼児の光線がその鬼児を焼き切った。
煙に紛れて少しでも離れようとするも、複数いた蜘蛛型鬼が回り込んでおり飛びかかってくる。
6 ーー
思い切って鬼児に向かって飛び上がり、マントで攻撃を防ぎながら一体蹴り飛ばし、そのまま桜の上に飛び移る。
5 ーー
気配に間髪入れず飛び上がると、立っていた枝がすっぱりと切り落とされている。
迫ってくる男が楽しそうに笑った。
背筋が寒くなる。
4 ーー
「なかなか早い」
「お前もな」
3 ーー
男から逃げるべく巨大な鬼児に駆け上る。
大きい分愚鈍だ。
手にした桜の枝が光り、刀に姿を変えた。
青みがかった美しい長剣だ。
「できました!」
蒼石の焦った声がする。
「仕事が早いな!上等だッ!!」
逃げるのをやめ、大きく飛び上がる。
空中で男と対峙する。
男は俺の手にある剣に気付き目を見開いた。
容赦する気はない。
この男は、俺を狙っている。
つまり小僧達も狙われるに違いないのだ。
「閃竜・飛光撃ッ!!!」
激しい雷が男や鬼児に襲いかかる。
一撃で倒すことは難しいだろうが、すぐに襲っては来ないはずだ。
形勢が不利である以上、とにかく今は逃げるしかない。
振り返る時間さえ惜しく、兎に角一心不乱に走った。
破壊し尽くされた公園に残された男ーー星史郎は桜の幹にもたれかかるようにして腰を下ろした。
彼にしては珍しく呼吸は荒く、攻撃を受け止めた刀は一部破損し、その刀を持つ右腕は出血していた。
その傷を圧迫止血しながら、星史郎は空を見上げる。
「やはり消えてもらわねば」
微かに笑みを浮かべて。