阪神国
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降り立ったのは畳の上だった。
すぐ後に落ちてくる少年が見えたので抱き止めようとしたら、少女を離すまいとしっかり抱きしめていて、流石に2人の体重に耐えきれず尻もちをつく。
どうやら2人は気を失っているようだ。
あの白い男、次元の移動に慣れているなら助けてやればいいものを、見て見ぬ振りか、はたまた慣れていることを知られたくないのか。
雨にぬれていたためか二人の身体は冷たかった。
このままでは風邪をひいてしまうだろう。
「どこだろうねぇ、ここ。」
「ねーっ。」
飄々と辺りを見回す。
随分落ち着いている奴だ。
実に気に食わない。
不意に人の気配が近づき、銀龍に手を伸ばそうとしてないことに気づき、応戦出来るよう身を屈めるにとどめた。
殺気はない。
襖が開く。
「お?
もしかして兄ちゃんら、侑子さんとこからきたんか?」
ひょっこり顔を出したのは、スポーツ刈りの愛想のよい男だった。
「なんや物音したからまさかとは思ったけど、いやー久しぶりのお客さんやから嬉しいわ。
わいは、有栖川空汰」
「オレ、長いんでファイでお願いしますー」
白い男が名を名乗った。
有栖川は武器も持たず、一般人と見てまず間違いないだろう。
「モコナ=モドキ!」
しゅたっと手をあげるその珍妙な生き物に思わず目を瞬かせる。
異世界には不思議な生き物がいるものだ。
「黒鋼だ。
すまないが、この2人に何か身体を拭くものを貸してはもらえないか」
俺の言葉に有栖川も俺達が濡れていることに気づいたようだ。
「よっしゃ!
兄ちゃんみたいな人のために、
着替えもあるさかい、持ってくるな!」
そう言うと慌ただしく部屋から出て行った。
部屋の対角にいる白い男から視線を感じる。
無遠慮な奴だ。
「君、意外だね。
他人に興味なさそうなのに」
「お前は逆だな。
穏和な風を装う癖に他人に冷たい」
色も、性格も、生い立ちも、何もかもが対極な気がした。
白い男は貼り付けた笑みを一瞬強張らせた。
本人は気付かれていないと思っているであろう細やかな変化であったが、忍者に見抜かれない程では無い。
「そう?
ま、君と似ていてもやだけどねー」
表情を取り繕うのは何かを隠したい時だ。
この男の旅の目的は、おそらく元いた世界に戻らないということだけではない。
「持ってきたでー!
兄ちゃんらの分もあるからな」
何枚かのタオルと服を手渡される。
「ありがとうございますー」
ファイが有栖川から一式を受け取り彼の後ろを見て、おや、と首をかしげる。
「俺の奥さんや!」
「嵐です」
後ろから登場したのは、どこか魔女に雰囲気の似た女性だった。
強い力のある巫女独特の空気を纏っている。
2人の物音に気がついたのか、少年が眩しそうに目を開ける。
「さく……」
「ぷぅ、みたいなー」
少年の目の前でほっぺたをぷぅっとして見せているモコナに、もう驚くまいと心に誓う。
「ら……?」
少女の名前を呼ぶ彼に、有栖川が寄り添う。
「お、目ぇさめたか?
風邪ひく前に身体拭いて着替えとき。
そっちの女の子はマイハニーが着替えさせたるさかい、任しとき!」
「あ、ありがとうございます」
流されるがままに礼を言う少年に、かまへんかまへん、と和かに言うと有栖川と嵐が少女を連れて行き、それに白饅頭がぴょんと飛び跳ねてついて行った。
まだぼうっとしている少年に、男がタオルをかける。
「早く拭かないと、風邪ひいちゃうよ」
そう言われればはっと我に返ってごしごしと激しく拭きはじめる。
生真面目な性格なのだろう。
その真面目さと純真さが強さの要でもあるが、下手をすれば折れかねない。
この旅は長くなる気がする。
彼は力の抜き方を覚える必要があるだろう。
「黒りんも拭きなよ」
意外なことに白い男からタオルを投げて渡される。
誰が黒りんだ、という言葉は飲み込む。
ここで乗っては相手の思う壺である。
問題は着替えだ。
サラシまでは濡れていないが、胸まで巻いていれば女だと気づくやもしれない。
2人が着替えているうちに何食わぬ顔してさっさと着替えるに限る。
「あれぇ?」
脱ぎかけた所で急に白い男が声をあげたため、驚いて振返る。
「うわぁっ!」
「何してるんだ……?」
青年が少年に近づき、マントの中に手を突っ込んでいる。
「ほら」
マントから出てきた彼の手に握られているのは、複雑な模様の描かれた1枚の白い羽だった。
「羽根?」
「これ、記憶のかけらだねぇ。
さっきの女の子の。
君に引っかかってたんだよ、一つだけ」
「さくらのところに持って行ってきます!」
嬉しそうに駆けだそうとするから止める。
「まだ向こうも着替えているだろう」
少年もまだ濡れている。
先に白い男が言った通り、早く着替えねば風邪をひいてしまうだろう。
「そ……そうですね!」
浮かれたのを恥じているのか、顔を赤くして慌てて着替え始める。
男も着替えているのを確認し、俺も急いで服を着替えた。
「おれの服に偶然ついていたから……」
着替えながらもごもごと話す少年。
やはりその声は弾んでいる。
しかし、これは偶然ではない。
「この世に偶然なんてない」
そう言う男に、驚いた顔をする少年。
着替えて振り返れば、2人もちょうど着替え終わるところだ。
「魔女さん言ってたでしょ。
きっと、君が無意識に捕まえたんだよ。
あの子を助けるために」
違う。
俺はあの羽根を見たことがある。
それも、ついさっき、移動するときのことだ。
コートのポケットから出そうになるのを、白い男は押し戻していた。
つまり、あの羽根は、少年が捕まえたものではない。
あの男が持ってきたものだ。
「さ、そろそろ女の子のところに行こうか。
羽根を返しに」
嬉しそうに部屋から出て行く少年。
穏やかにその姿を見つめる白い男。
いったい彼はなにを企んでいるのか。
「すみません、着替え、終わりましたか?」
隣の部屋の前で声をかける。
「ええ、どうぞ」
襖を開ければ、布団に包まれて穏やかに眠る少女がいた。
少年が近くまで行くと、羽根は自然と少女にひきつけられ、胸の中に消えていった。
「……よかった」
「けど、これからはどうやって探そう?」
白いの男はわざとか、本当に策がないのか少年に問う。
「モコナ、わかる!
羽根の力を感じると、めきょ!ってなる!」
元気な白い生き物は、普段は線のように細い目をめいっぱい大きく開いて見せた。
目の前で行われたその行動に、俺の心臓は飛び上がる。
驚くまいと心に決めたはずなのに、なんだか悔しい。
「じゃあ、あの羽根が近くにあるとき、教えてくれるかな?」
「まかしとけ!」
とん、と胸を叩いて見せる。
意外と役に立ちそうな白饅頭だ。
「オレも手伝うよ。
元いた世界に帰らないことがオレの願いだからさ。
命にかかわらない程度にね」
青年の言葉に少年は嬉しそうに顔をあげた。
「ありがとうございます!」
「黒さまはどうする?」
振られた話に俺は少しだけ考える。
どうせ移動は彼らと続けねばならないだろう。
それならば、あの少年と少女を助けるのに手を貸すくらい、造作もない。
「構わない」
「黒鋼さんも……ありがとうございます。」
この素直な少年達に何かをしかけるかもしれないこの男が気になる。
偶然などこの世に存在しないのならば、この男がこの2人を手助けする流れになったことも、仕組まれたことかもしれない。
こんな子どもを手にかけようと言うならば、容赦する気はない。
すぐ後に落ちてくる少年が見えたので抱き止めようとしたら、少女を離すまいとしっかり抱きしめていて、流石に2人の体重に耐えきれず尻もちをつく。
どうやら2人は気を失っているようだ。
あの白い男、次元の移動に慣れているなら助けてやればいいものを、見て見ぬ振りか、はたまた慣れていることを知られたくないのか。
雨にぬれていたためか二人の身体は冷たかった。
このままでは風邪をひいてしまうだろう。
「どこだろうねぇ、ここ。」
「ねーっ。」
飄々と辺りを見回す。
随分落ち着いている奴だ。
実に気に食わない。
不意に人の気配が近づき、銀龍に手を伸ばそうとしてないことに気づき、応戦出来るよう身を屈めるにとどめた。
殺気はない。
襖が開く。
「お?
もしかして兄ちゃんら、侑子さんとこからきたんか?」
ひょっこり顔を出したのは、スポーツ刈りの愛想のよい男だった。
「なんや物音したからまさかとは思ったけど、いやー久しぶりのお客さんやから嬉しいわ。
わいは、有栖川空汰」
「オレ、長いんでファイでお願いしますー」
白い男が名を名乗った。
有栖川は武器も持たず、一般人と見てまず間違いないだろう。
「モコナ=モドキ!」
しゅたっと手をあげるその珍妙な生き物に思わず目を瞬かせる。
異世界には不思議な生き物がいるものだ。
「黒鋼だ。
すまないが、この2人に何か身体を拭くものを貸してはもらえないか」
俺の言葉に有栖川も俺達が濡れていることに気づいたようだ。
「よっしゃ!
兄ちゃんみたいな人のために、
着替えもあるさかい、持ってくるな!」
そう言うと慌ただしく部屋から出て行った。
部屋の対角にいる白い男から視線を感じる。
無遠慮な奴だ。
「君、意外だね。
他人に興味なさそうなのに」
「お前は逆だな。
穏和な風を装う癖に他人に冷たい」
色も、性格も、生い立ちも、何もかもが対極な気がした。
白い男は貼り付けた笑みを一瞬強張らせた。
本人は気付かれていないと思っているであろう細やかな変化であったが、忍者に見抜かれない程では無い。
「そう?
ま、君と似ていてもやだけどねー」
表情を取り繕うのは何かを隠したい時だ。
この男の旅の目的は、おそらく元いた世界に戻らないということだけではない。
「持ってきたでー!
兄ちゃんらの分もあるからな」
何枚かのタオルと服を手渡される。
「ありがとうございますー」
ファイが有栖川から一式を受け取り彼の後ろを見て、おや、と首をかしげる。
「俺の奥さんや!」
「嵐です」
後ろから登場したのは、どこか魔女に雰囲気の似た女性だった。
強い力のある巫女独特の空気を纏っている。
2人の物音に気がついたのか、少年が眩しそうに目を開ける。
「さく……」
「ぷぅ、みたいなー」
少年の目の前でほっぺたをぷぅっとして見せているモコナに、もう驚くまいと心に誓う。
「ら……?」
少女の名前を呼ぶ彼に、有栖川が寄り添う。
「お、目ぇさめたか?
風邪ひく前に身体拭いて着替えとき。
そっちの女の子はマイハニーが着替えさせたるさかい、任しとき!」
「あ、ありがとうございます」
流されるがままに礼を言う少年に、かまへんかまへん、と和かに言うと有栖川と嵐が少女を連れて行き、それに白饅頭がぴょんと飛び跳ねてついて行った。
まだぼうっとしている少年に、男がタオルをかける。
「早く拭かないと、風邪ひいちゃうよ」
そう言われればはっと我に返ってごしごしと激しく拭きはじめる。
生真面目な性格なのだろう。
その真面目さと純真さが強さの要でもあるが、下手をすれば折れかねない。
この旅は長くなる気がする。
彼は力の抜き方を覚える必要があるだろう。
「黒りんも拭きなよ」
意外なことに白い男からタオルを投げて渡される。
誰が黒りんだ、という言葉は飲み込む。
ここで乗っては相手の思う壺である。
問題は着替えだ。
サラシまでは濡れていないが、胸まで巻いていれば女だと気づくやもしれない。
2人が着替えているうちに何食わぬ顔してさっさと着替えるに限る。
「あれぇ?」
脱ぎかけた所で急に白い男が声をあげたため、驚いて振返る。
「うわぁっ!」
「何してるんだ……?」
青年が少年に近づき、マントの中に手を突っ込んでいる。
「ほら」
マントから出てきた彼の手に握られているのは、複雑な模様の描かれた1枚の白い羽だった。
「羽根?」
「これ、記憶のかけらだねぇ。
さっきの女の子の。
君に引っかかってたんだよ、一つだけ」
「さくらのところに持って行ってきます!」
嬉しそうに駆けだそうとするから止める。
「まだ向こうも着替えているだろう」
少年もまだ濡れている。
先に白い男が言った通り、早く着替えねば風邪をひいてしまうだろう。
「そ……そうですね!」
浮かれたのを恥じているのか、顔を赤くして慌てて着替え始める。
男も着替えているのを確認し、俺も急いで服を着替えた。
「おれの服に偶然ついていたから……」
着替えながらもごもごと話す少年。
やはりその声は弾んでいる。
しかし、これは偶然ではない。
「この世に偶然なんてない」
そう言う男に、驚いた顔をする少年。
着替えて振り返れば、2人もちょうど着替え終わるところだ。
「魔女さん言ってたでしょ。
きっと、君が無意識に捕まえたんだよ。
あの子を助けるために」
違う。
俺はあの羽根を見たことがある。
それも、ついさっき、移動するときのことだ。
コートのポケットから出そうになるのを、白い男は押し戻していた。
つまり、あの羽根は、少年が捕まえたものではない。
あの男が持ってきたものだ。
「さ、そろそろ女の子のところに行こうか。
羽根を返しに」
嬉しそうに部屋から出て行く少年。
穏やかにその姿を見つめる白い男。
いったい彼はなにを企んでいるのか。
「すみません、着替え、終わりましたか?」
隣の部屋の前で声をかける。
「ええ、どうぞ」
襖を開ければ、布団に包まれて穏やかに眠る少女がいた。
少年が近くまで行くと、羽根は自然と少女にひきつけられ、胸の中に消えていった。
「……よかった」
「けど、これからはどうやって探そう?」
白いの男はわざとか、本当に策がないのか少年に問う。
「モコナ、わかる!
羽根の力を感じると、めきょ!ってなる!」
元気な白い生き物は、普段は線のように細い目をめいっぱい大きく開いて見せた。
目の前で行われたその行動に、俺の心臓は飛び上がる。
驚くまいと心に決めたはずなのに、なんだか悔しい。
「じゃあ、あの羽根が近くにあるとき、教えてくれるかな?」
「まかしとけ!」
とん、と胸を叩いて見せる。
意外と役に立ちそうな白饅頭だ。
「オレも手伝うよ。
元いた世界に帰らないことがオレの願いだからさ。
命にかかわらない程度にね」
青年の言葉に少年は嬉しそうに顔をあげた。
「ありがとうございます!」
「黒さまはどうする?」
振られた話に俺は少しだけ考える。
どうせ移動は彼らと続けねばならないだろう。
それならば、あの少年と少女を助けるのに手を貸すくらい、造作もない。
「構わない」
「黒鋼さんも……ありがとうございます。」
この素直な少年達に何かをしかけるかもしれないこの男が気になる。
偶然などこの世に存在しないのならば、この男がこの2人を手助けする流れになったことも、仕組まれたことかもしれない。
こんな子どもを手にかけようと言うならば、容赦する気はない。
