番外編ーりこうなおきさきの国ー
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「次の世界に到着!」
モコナの声とともに珍しくまともな場所に降り立った。
「さーて、今度はどんな世界かなぁ。」
先の世界でご飯を食べ損ねてしまったので、どこかで食べられるといいんだけれど。
のんびり辺りを見回すと、ぱちりと一人の男性と目があった。
それなりに年を重ねて知的な目尻に、何か困っているように皺が寄っている。
だが困ったことに、オレ達もはじめての世界で困っているのだ。
「こんにちは!」
そんなことお構いなしのモコナがぴょこんと跳ねた。
「こ、こんにちは。」
男性は戸惑っているが、モコナのようなちょっと不思議な生き物はいる世界のようだ。
ちょうど頭の上を羽の生えた猫が飛んでいく。
彼が戸惑っているのは、見ず知らずにもかかわらず急に声をかけられたからだろう。
「この辺りで美味しいお店知ってたら教えて?」
「み、店?」
「そ、お腹すいちゃったの!」
「それはお困りだな。
すぐ近くだから、うちへ来るかい?」
「いいの!?」
いい人みたい。
モコナはそういうところは敏感だ。
いい人を見つけるセンサがついているんじゃないかな。
「モコナはモコナ!
あっちの黒いのが黒鋼で、ファイ、小狼、サクラだよ。
みんなで旅をしているの!」
「旅のお方と!
それは幸い!」
男性は目を輝かせた。
「是非知恵を貸していただきたい!
私はローゼという。
この国の大臣だ。」
なんだか偉い人のお世話になることになったみたいだ。
「あらお父様、おかえりなさい。」
顔を出したのは利発そうな娘さんだった。
目元がお父さんによく似ている。
「ただいまマリア。
客人がいるんだ、旅のお方だよ。
お腹がすいているそうでね。」
「すみません。」
頭を下げると、突然の迷惑な話なのにマリアさんは笑顔で首を振った。
「私、旅のお話を聞くのが大好きなの!
お食事はすぐに用意しますから、ゆっくりしていってくださいな。」
それに、とマリアさんはお父さんの顔をみた。
「何か困ったことがあったのね。」
とんとん、と目尻を叩いて見せる。
「お前にはなんでもお見通しだなぁ。」
ローゼさんは椅子に腰掛け、おれ達にも椅子を勧めてくれた。
「実は、王様が羊を2000頭売って、その羊と売ったお金を持って帰れとおっしゃるのだよ。」
「あら、いつもの事ね。」
「そうだ、いつもの事だ。」
ローゼさんは深い溜め息をつく。
「あの、いつもの事とは?」
おれが尋ねると、困った顔のローゼさんは口を開いた。
「王様はいつも無理難題をおっしゃるのだよ。
お若いのに賢い方なのだが、大層気難しい。」
「いい人なのよ、本当は。」
「よせ、昔の事だ。」
「なにも昔に限ったことじゃないわ。」
マリアさんはにっこりと笑う。
「ずっとずっと、いい人よ。」
その言葉は、どこか自分に言い聞かすようにも聞こえた。
「お知り合いなんですか?」
姫が問いかける。
「私よくお父さんの仕事について行って、一緒に遊んでいたの。
賢くて、とても優しい人なのよ。」
「だがもう変わってしまわれた。
あのお方の心には疑念しかない。
常に相手を疑っておられるからこそ、今回のように家臣を試されるのだ。」
ローゼさんは力なく頭を振る。
「根っこのところなんてそう変わらないわ。
今に見てらっしゃい。」
「何かあったんですか?」
ファイさんが首を傾げ尋ねる。
「もともとお兄様が3人おられたんだ。
仲が良い四兄弟でね。
賢いお方だが、国王になる事はないと言われていたのだよ。
そしてきっと王様もそれを望んでおられた。
だがそのお兄様3人が王座を争い、結果なんとも不運なことに3人とも亡くなってしまわれた。
王様も巻き込まれて殺されかけたが、庇ったお母様が代わりに亡くなられたのだ。」
言葉で短く説明できても、その実際はどれ程過酷で、残酷で、心の痛む事件だったかは想像できる。
どこの王族も後継問題は深刻なのかもしれない。
マリアさんも泣きそうに顔を歪めている。
親しくしていた人達の血を血で洗うような争いは、心が引き裂かれる思いだったことだろう。
その点、サクラ姫は女だから本当に良かったと思う。
ちらりと表情を伺うと、辛そうに俯いていて、その肩に黒鋼さんがそっと手を置いていた。
「それ以来、彼は王様になって、すっかり変わってしまわれた。
・・・そういうことよ。
さ、ご飯の作っちゃお!」
暗い空気を吹き飛ばすようにマリアさんが言ってキッチンへ入っていった。
