玖楼国
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「クロウ・リードの血をひくもの。
死してもその躯のみでも利用価値がある。
今度はその魂を本体の躯に移すとしよう。
そして我が願いのために、虚無となるまで。」
飛王が何をすることも、もうオレ達は許しはしない。
「もう繰り返させない。」
なんとか立ち上がる。
何度も繰り返され、消されてきた命のために、今を生きるオレ達が、未来を変えるのだ。
死んだファイのために。
生まれ出ることを許された、黒様のために。
一歩、また一歩と歩き始めた時だった。
「謀ったか、傀儡の分際で!!」」
飛王から絞り出すような悲鳴が聞こえた。
小狼君の躯が渡された時、死んでいたはずの彼の刃が飛王をつらぬいたのだ。
二人の小狼君の意志の強い瞳が、飛王を睨みつける。
「小狼っ!!」
黒りんが目を見開き、名を呼んだ。
オレ達は頷きあって、痛む身体に鞭うって走り出した。
飛王が小狼君に向かって刃を振り上げたからだ。
「危ないっ!」
叫ぶことしかできないオレ達の代わりに小狼君を守ったのは写し身で、死の一歩手前の彼は指先から魔法を放つと、力尽きたかのように小狼君の腕の中に倒れ込んだのだった。
強い風があたりに吹いているのに、不思議と、写し身の言葉だけはオレ達の耳に届いた。
「ごめんなさい・・・。」
隣の黒りんは唇をかみしめてうつむいている。
「・・・ありがと・・・・。」
そして砕けて消えた。
人のように躯が残るでもなく、ぬくもりが徐々に冷えていくのでもなく、ただ、鏡が砕けたように。
懐かしい蒼がオレの目の前にやってくる。
「・・・オレに魔力を返すために使い続けてくれたんだね。
でも、君が帰ってきてくれる方がずっと良かった。」
失っていたはずの左目に、ぬくもりを感じる。
オレは眼帯を外した。
見える。
そして身体に魔力が満ち渡るのが分かる。
オレはすぐに写し身が放った魔法を更に強化するためにスピアを唱える。
これで、終わりにするために。
空間がつながった先で、小狼君の傷により膝をついていた飛王が見えた。
黒りんが真っ先に飛び込み、そして彼を斬り殺す。
しかしその斬り殺したために現れたのは、躯となったカイルだった。
死んだ躯は跡形もなく消えていく。
つまりは彼も、創られたものだったということだ。
そしてオレ達の目の前に、サクラちゃんの躯を持つ、飛王が映る。
「やはり作りモノはこの程度か。」
にやりと笑う彼に、小狼君の怒りは頂点に達した。
「飛王っ!!!」
あたりを激震が襲った。
何か大きな力が動いていることが、俺にもわかった。
水中から羽根が浮かび上がり、それが姫の躯に取りこまれていく。
「その時が来た!
それぞれの次元を繋ぐ鎖が千切れ、世界の最も強固な理が崩れる。
・・・死者は生き返らないという理が!」
身体が金縛りにあったように動かなくなる。
ファイも、そして小狼も同じようだった。
それはこの大き過ぎる力に俺達が耐えきれないからなのか、予測不可能な事態に対する恐怖か。
焦りと恐怖で気がおかしくなりそうだ。
それでも必死に動こうとする二人が視界に入る。
「こんなところでっ!!!」
必死な小狼に、俺はふとあることを思い出す。
目を閉じた。
こんな時こそ気を落ち着けねばならないと、遠い昔母が言っていた。
銀龍を握り、心を落ち着ければ、ゆっくりと震えが収まっていく。
空気を肺にため込むかのように深く吸い込む。
そして、技を発する代わりに、母に教えられたとおり、空気に力を伝えることをイメージする。
額が焼けるように熱くなった。
力がみなぎるのが分かる。
俺は一瞬で、空間に力を解放した。
ふわりと身体が軽くなった。
俺の周りに渦巻くのは、亀神の息吹だ。
その向こうに、少年が見える。
「行け、小狼!!!」
彼は力強く頷いた。
金縛りは解けたらしい。
俺も抜刀し刀を構える。
「破魔・龍王陣!!!」
放った剣戟を追いかけるように飛王へと襲いかかる。
俺の前に防護壁が現れる。
術者はもちろん、ファイだ。
何でもいい。
この力の圧力の中、小狼が一歩を踏み出せるだけの隙が作れさえすれば。
飛王がにやりと笑ったのが見え、次の瞬間、激痛が体中を襲った。
堅い岩に身体を打ちつけられる。
今ここで変えねば、自分達は、自分達のつながりは、消えてしまうと。
必死につなぎとめるために、俺達は血を流す。
くらくらと揺れる視界の端で、小狼は跳んだ。
大きく飛び上がり、そしてついに、時間を止めた瞬間のままの幼い姫の手を握ったのだった。
「おまえのその選択で、最後の鎖が切れた。
死の間際の者を取り戻そうとしたおまえの想いが、最後の選択が同じように死の淵へと歩を進め、その刹那時を止められた者を・・・呼び戻す!」
あたりに世界が映し出され、そしてそれが粉々に砕けていく。
世界が、壊れていくのだ。
強く抱きしめていたように見えたのに、姫が小狼の手から奪われる。
俺達は慌てて姫へと手を伸ばす。
「逝くなっ!!!」
日本国の時と同じだ。
必ず戻って来いと言ったのに、少女は死んだ。
俺は、俺はまた失うのか。
身体に激痛が走る。
飛王からの攻撃をまともに受けてしまったことに気づくまで時間がかかった。
ファイも倒れこんでいる。
白い服は薄汚れ、赤黒く染まっている場所もある。
彼はよろめきながらも立ち上がる。
その蒼い目に励まされるように、俺も立ち上がる。
今ここで、倒れるわけにはいかないのだ。
上を見上げて、思わず目を見開いた。
そこには、小狼と姫が二人ずついた。
つまり、写し身の二人もそこにいるのだ。
「一緒に旅した、サクラと小狼!?」
モコナの叫びに、二人は柔らかく微笑む。
「約束したから。」
写し身の小狼が言った。
「私も。
必ず戻ると。」
言葉をつづけたのは写し身の姫だった。
その二人の照れたような微笑みに、俺は拳を握った。
「馬鹿野郎!
一度死んだ奴らが何を言うんだッ!!」
声の震えをとどめようと唇をかむ。
それでも言いたい言葉があった。
「二度と消えるな・・・。」
写し身達はひとつ、頷いた。
ファイが近くに寄ってきて俺の周りに球状の防護壁を作る。
そして彼の手が頬を滑った。
驚いてファイを見上げる。
「・・・泣いてる暇なんてないよ。」
蒼い目が優しく微笑む。
俺もまたひとつ、頷いた。
死してもその躯のみでも利用価値がある。
今度はその魂を本体の躯に移すとしよう。
そして我が願いのために、虚無となるまで。」
飛王が何をすることも、もうオレ達は許しはしない。
「もう繰り返させない。」
なんとか立ち上がる。
何度も繰り返され、消されてきた命のために、今を生きるオレ達が、未来を変えるのだ。
死んだファイのために。
生まれ出ることを許された、黒様のために。
一歩、また一歩と歩き始めた時だった。
「謀ったか、傀儡の分際で!!」」
飛王から絞り出すような悲鳴が聞こえた。
小狼君の躯が渡された時、死んでいたはずの彼の刃が飛王をつらぬいたのだ。
二人の小狼君の意志の強い瞳が、飛王を睨みつける。
「小狼っ!!」
黒りんが目を見開き、名を呼んだ。
オレ達は頷きあって、痛む身体に鞭うって走り出した。
飛王が小狼君に向かって刃を振り上げたからだ。
「危ないっ!」
叫ぶことしかできないオレ達の代わりに小狼君を守ったのは写し身で、死の一歩手前の彼は指先から魔法を放つと、力尽きたかのように小狼君の腕の中に倒れ込んだのだった。
強い風があたりに吹いているのに、不思議と、写し身の言葉だけはオレ達の耳に届いた。
「ごめんなさい・・・。」
隣の黒りんは唇をかみしめてうつむいている。
「・・・ありがと・・・・。」
そして砕けて消えた。
人のように躯が残るでもなく、ぬくもりが徐々に冷えていくのでもなく、ただ、鏡が砕けたように。
懐かしい蒼がオレの目の前にやってくる。
「・・・オレに魔力を返すために使い続けてくれたんだね。
でも、君が帰ってきてくれる方がずっと良かった。」
失っていたはずの左目に、ぬくもりを感じる。
オレは眼帯を外した。
見える。
そして身体に魔力が満ち渡るのが分かる。
オレはすぐに写し身が放った魔法を更に強化するためにスピアを唱える。
これで、終わりにするために。
空間がつながった先で、小狼君の傷により膝をついていた飛王が見えた。
黒りんが真っ先に飛び込み、そして彼を斬り殺す。
しかしその斬り殺したために現れたのは、躯となったカイルだった。
死んだ躯は跡形もなく消えていく。
つまりは彼も、創られたものだったということだ。
そしてオレ達の目の前に、サクラちゃんの躯を持つ、飛王が映る。
「やはり作りモノはこの程度か。」
にやりと笑う彼に、小狼君の怒りは頂点に達した。
「飛王っ!!!」
あたりを激震が襲った。
何か大きな力が動いていることが、俺にもわかった。
水中から羽根が浮かび上がり、それが姫の躯に取りこまれていく。
「その時が来た!
それぞれの次元を繋ぐ鎖が千切れ、世界の最も強固な理が崩れる。
・・・死者は生き返らないという理が!」
身体が金縛りにあったように動かなくなる。
ファイも、そして小狼も同じようだった。
それはこの大き過ぎる力に俺達が耐えきれないからなのか、予測不可能な事態に対する恐怖か。
焦りと恐怖で気がおかしくなりそうだ。
それでも必死に動こうとする二人が視界に入る。
「こんなところでっ!!!」
必死な小狼に、俺はふとあることを思い出す。
目を閉じた。
こんな時こそ気を落ち着けねばならないと、遠い昔母が言っていた。
銀龍を握り、心を落ち着ければ、ゆっくりと震えが収まっていく。
空気を肺にため込むかのように深く吸い込む。
そして、技を発する代わりに、母に教えられたとおり、空気に力を伝えることをイメージする。
額が焼けるように熱くなった。
力がみなぎるのが分かる。
俺は一瞬で、空間に力を解放した。
ふわりと身体が軽くなった。
俺の周りに渦巻くのは、亀神の息吹だ。
その向こうに、少年が見える。
「行け、小狼!!!」
彼は力強く頷いた。
金縛りは解けたらしい。
俺も抜刀し刀を構える。
「破魔・龍王陣!!!」
放った剣戟を追いかけるように飛王へと襲いかかる。
俺の前に防護壁が現れる。
術者はもちろん、ファイだ。
何でもいい。
この力の圧力の中、小狼が一歩を踏み出せるだけの隙が作れさえすれば。
飛王がにやりと笑ったのが見え、次の瞬間、激痛が体中を襲った。
堅い岩に身体を打ちつけられる。
今ここで変えねば、自分達は、自分達のつながりは、消えてしまうと。
必死につなぎとめるために、俺達は血を流す。
くらくらと揺れる視界の端で、小狼は跳んだ。
大きく飛び上がり、そしてついに、時間を止めた瞬間のままの幼い姫の手を握ったのだった。
「おまえのその選択で、最後の鎖が切れた。
死の間際の者を取り戻そうとしたおまえの想いが、最後の選択が同じように死の淵へと歩を進め、その刹那時を止められた者を・・・呼び戻す!」
あたりに世界が映し出され、そしてそれが粉々に砕けていく。
世界が、壊れていくのだ。
強く抱きしめていたように見えたのに、姫が小狼の手から奪われる。
俺達は慌てて姫へと手を伸ばす。
「逝くなっ!!!」
日本国の時と同じだ。
必ず戻って来いと言ったのに、少女は死んだ。
俺は、俺はまた失うのか。
身体に激痛が走る。
飛王からの攻撃をまともに受けてしまったことに気づくまで時間がかかった。
ファイも倒れこんでいる。
白い服は薄汚れ、赤黒く染まっている場所もある。
彼はよろめきながらも立ち上がる。
その蒼い目に励まされるように、俺も立ち上がる。
今ここで、倒れるわけにはいかないのだ。
上を見上げて、思わず目を見開いた。
そこには、小狼と姫が二人ずついた。
つまり、写し身の二人もそこにいるのだ。
「一緒に旅した、サクラと小狼!?」
モコナの叫びに、二人は柔らかく微笑む。
「約束したから。」
写し身の小狼が言った。
「私も。
必ず戻ると。」
言葉をつづけたのは写し身の姫だった。
その二人の照れたような微笑みに、俺は拳を握った。
「馬鹿野郎!
一度死んだ奴らが何を言うんだッ!!」
声の震えをとどめようと唇をかむ。
それでも言いたい言葉があった。
「二度と消えるな・・・。」
写し身達はひとつ、頷いた。
ファイが近くに寄ってきて俺の周りに球状の防護壁を作る。
そして彼の手が頬を滑った。
驚いてファイを見上げる。
「・・・泣いてる暇なんてないよ。」
蒼い目が優しく微笑む。
俺もまたひとつ、頷いた。