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「ファイさん。」
小狼君が心配そうな顔でオレを見た。
「大丈夫、ファイ・・・?」
モコナもそのとなりで不安そうにしている。
「大丈夫だよー
ごめんね、ぼーっとしちゃって。」
朝食の席だ。
日本国の料理はおいしい。
箸を使うのもだんだんとなれてきた。
でも魚料理はやっぱり苦手だ。
取ってくれる誰かがいなければ食べられない。
飲み物もいろいろある。
お茶の種類は紅茶みたいにたくさんあって、飲み比べても面白い。
でも。
(飲んでも、食べても癒されない渇きがある。)
そして渇けば渇くほど、体力が落ちていっているのが分かる。
オレの傷の回復は遅れていた。
傷の治りも遅い。
魔力を使ったせいで死に近づいたという性もあるけれど、一番の理由は分かっている。
そして、モコナも小狼君も分かっているけれど言わないでいてくれる。
綺麗な食器に映ったオレの顔に血の気はなく、隈もひどい。
オレは食事を採ることに疲れ、箸を置いた。
「ごちそうさま・・・。
部屋に戻るね。」
「ファイ・・・。」
二人は不安げに見ているけれど、疲れてしまったのだ。
寝ようとしても眠れないけれど、座っているよりも体力は使わなくて済む。
「いけませんわ。」
鈴の鳴るような声がした。
「知世姫。
・・・ごめんなさい。」
オレは答えを持たなくて、ふらふらと部屋から出る。
「後で黒鋼の病室にきてくださいな。」
そんな声が追いかけてきた。
「黒鋼が倒れてから1週間。」
知世ちゃんが静かに彼女の枕元で口を開いた。
「・・・そろそろ限界でしょう。」
彼女が言うことは間違っていない。
小狼君達に心配されるほど、オレは弱ってきていた。
理由はただ一つ。
「・・・たとえ己の限界が目の前でも、飲めるわけないじゃないですか。」
そっと黒鋼の額を撫で、髪を掻き上げる。
まだ赤い顔で熱に浮かされるそれ。
傷から菌が入ったのだろう。
ここ数日はこうして熱と戦っている。
「でも、貴方が死んでしまっては、私は黒鋼に顔向けできませんわ。」
困ったような顔で知世ちゃんは言った。
「黒鋼は必ず回復します。
その時に貴方が笑っていて下さらねば。」
「笑いますよ。」
不思議と笑顔になるのは簡単だった。
体は苦しいけれど、肩の荷が下りたオレは、自由だった。
彼女が解き放ってくれた。
彼女がオレに渡してくれた、自由のおかげで。
だから今度は、苦しそうに眉をひそめている彼女に向かって言う。
「笑う。」
知世ちゃんは心配そうに目を細めた。
「ねぇ咲。
君が元気にならないと、オレ死にそうなんだ。
解る?
君がオレの命をもらったんでしょ?
責任取りなよ。」
その声が震えていたのに、きっと知世ちゃんも気づいている。
だから、そっと部屋を出ていったんだろう。
「ねぇ咲、オレは待っているんだよ。」
真赤な唇の向こうに、紅い血が見える。
たまらなく飲みたい。
ごくり
無意識に唾を飲み込んだ。
喉が渇いて死にそうなのだ。
夜も眠れないほど。
「ねぇ。」
気づけばその唇にひたり、と唇を乗せていた。
甘い香りが鼻につく。
彼女の唇は熱のせいかひどく熱く、やわらかい。
でも乾燥していて、オレは思わずぺろりと舐めた。
ひび割れたそこから血の味が混じる。
それを無意識に何度も舐めた。
「ん・・・あ・・・。」
微かな声が漏れる。
「咲・・・?」
薄目を開けた彼女はオレを見て、微かに笑った。
「飲・・・め・・・。」
ここがどこかも分かっていないだろうに。
「生き・・・。」
その先の言葉は続かなかった。
オレにその先を紡がせる余裕がなかったから。
やわらかい唇から滴る血はあまりに美味くて、我を忘れそうになる。
唇に薄く歯を立てた。
口に流れる血の量が増え、体が震えた。
(この食感は初めてじゃない。)
喉をうるおしながら思い出した。
初めて血を飲んだ、東京だ。
彼女が再び深い眠りについたことにも気付かず、オレは彼女の唇をむさぼり続けた。
血を求めているのか、彼女を求めているのか、もはや分からなくなっていた。
「・・・はっ・・・。」
唇を離す。
彼女の唇にはオレの歯型が傷になっていて、強く吸ったせいで赤くなっていた。
それが妙に艶めかしく、オレを誘う。
「早く・・・。」
口から出たのは、情けない声。
「早く目を覚ましてくれ。」
再び流れ始めた血に吸い寄せられるように、オレは咲の上に覆いかぶさった。
「こんなオレにした責任をとってくれ・・・咲。」
腕の中の熱い彼女は身じろぎすらすることない。
軽くなったその体を強く抱くことすらできず、オレはその頭を胸に掻き抱いた。
小狼君が心配そうな顔でオレを見た。
「大丈夫、ファイ・・・?」
モコナもそのとなりで不安そうにしている。
「大丈夫だよー
ごめんね、ぼーっとしちゃって。」
朝食の席だ。
日本国の料理はおいしい。
箸を使うのもだんだんとなれてきた。
でも魚料理はやっぱり苦手だ。
取ってくれる誰かがいなければ食べられない。
飲み物もいろいろある。
お茶の種類は紅茶みたいにたくさんあって、飲み比べても面白い。
でも。
(飲んでも、食べても癒されない渇きがある。)
そして渇けば渇くほど、体力が落ちていっているのが分かる。
オレの傷の回復は遅れていた。
傷の治りも遅い。
魔力を使ったせいで死に近づいたという性もあるけれど、一番の理由は分かっている。
そして、モコナも小狼君も分かっているけれど言わないでいてくれる。
綺麗な食器に映ったオレの顔に血の気はなく、隈もひどい。
オレは食事を採ることに疲れ、箸を置いた。
「ごちそうさま・・・。
部屋に戻るね。」
「ファイ・・・。」
二人は不安げに見ているけれど、疲れてしまったのだ。
寝ようとしても眠れないけれど、座っているよりも体力は使わなくて済む。
「いけませんわ。」
鈴の鳴るような声がした。
「知世姫。
・・・ごめんなさい。」
オレは答えを持たなくて、ふらふらと部屋から出る。
「後で黒鋼の病室にきてくださいな。」
そんな声が追いかけてきた。
「黒鋼が倒れてから1週間。」
知世ちゃんが静かに彼女の枕元で口を開いた。
「・・・そろそろ限界でしょう。」
彼女が言うことは間違っていない。
小狼君達に心配されるほど、オレは弱ってきていた。
理由はただ一つ。
「・・・たとえ己の限界が目の前でも、飲めるわけないじゃないですか。」
そっと黒鋼の額を撫で、髪を掻き上げる。
まだ赤い顔で熱に浮かされるそれ。
傷から菌が入ったのだろう。
ここ数日はこうして熱と戦っている。
「でも、貴方が死んでしまっては、私は黒鋼に顔向けできませんわ。」
困ったような顔で知世ちゃんは言った。
「黒鋼は必ず回復します。
その時に貴方が笑っていて下さらねば。」
「笑いますよ。」
不思議と笑顔になるのは簡単だった。
体は苦しいけれど、肩の荷が下りたオレは、自由だった。
彼女が解き放ってくれた。
彼女がオレに渡してくれた、自由のおかげで。
だから今度は、苦しそうに眉をひそめている彼女に向かって言う。
「笑う。」
知世ちゃんは心配そうに目を細めた。
「ねぇ咲。
君が元気にならないと、オレ死にそうなんだ。
解る?
君がオレの命をもらったんでしょ?
責任取りなよ。」
その声が震えていたのに、きっと知世ちゃんも気づいている。
だから、そっと部屋を出ていったんだろう。
「ねぇ咲、オレは待っているんだよ。」
真赤な唇の向こうに、紅い血が見える。
たまらなく飲みたい。
ごくり
無意識に唾を飲み込んだ。
喉が渇いて死にそうなのだ。
夜も眠れないほど。
「ねぇ。」
気づけばその唇にひたり、と唇を乗せていた。
甘い香りが鼻につく。
彼女の唇は熱のせいかひどく熱く、やわらかい。
でも乾燥していて、オレは思わずぺろりと舐めた。
ひび割れたそこから血の味が混じる。
それを無意識に何度も舐めた。
「ん・・・あ・・・。」
微かな声が漏れる。
「咲・・・?」
薄目を開けた彼女はオレを見て、微かに笑った。
「飲・・・め・・・。」
ここがどこかも分かっていないだろうに。
「生き・・・。」
その先の言葉は続かなかった。
オレにその先を紡がせる余裕がなかったから。
やわらかい唇から滴る血はあまりに美味くて、我を忘れそうになる。
唇に薄く歯を立てた。
口に流れる血の量が増え、体が震えた。
(この食感は初めてじゃない。)
喉をうるおしながら思い出した。
初めて血を飲んだ、東京だ。
彼女が再び深い眠りについたことにも気付かず、オレは彼女の唇をむさぼり続けた。
血を求めているのか、彼女を求めているのか、もはや分からなくなっていた。
「・・・はっ・・・。」
唇を離す。
彼女の唇にはオレの歯型が傷になっていて、強く吸ったせいで赤くなっていた。
それが妙に艶めかしく、オレを誘う。
「早く・・・。」
口から出たのは、情けない声。
「早く目を覚ましてくれ。」
再び流れ始めた血に吸い寄せられるように、オレは咲の上に覆いかぶさった。
「こんなオレにした責任をとってくれ・・・咲。」
腕の中の熱い彼女は身じろぎすらすることない。
軽くなったその体を強く抱くことすらできず、オレはその頭を胸に掻き抱いた。