セレス
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突然青年を中心に光が溢れ、蔦模様があたりに這う。
世界を絡め取る様に。
「おい!」
焦って彼を見れば、絶望的な表情を浮かべていた。
「世界が・・・閉じる・・・。
オレの魔法で・・・。」
「そんなことっ!!」
いったいどれほどの魔力をこの魔術師は持っているというのだろう。
片目を失ってなお、世界を閉じるほどの力なんて。
(これほど強い力を持ちながら、大切な物を次々と失っている・・・。)
その事実が苦しい。
「このままだとここから出られなくなる。」
必死に生きようとしている小狼も、躯だけになってしまった姫も、ふぁいも、皆が死ぬ。
「出るぞ!」
俺は青年の手を引くのに、彼は立とうとしない。
ひどく苦しげだ。
「みんなは無理だ。
オレは魔法を使うほど死に近づいている。」
そして身体をびくつかせて俯き、血を吐く。
「な、に・・・?」
背筋が凍る。
(この戦いで、彼はどれほど魔法を遣った?
どれほど命を削った・・・!?)
「けれどまだ魔力は残っている。」
「何をする気だ!」
その魔力を遣ってしまうとどうなるのか、俺には想像もつかない。
今ですらこんなにぼろぼろなのに。
「ここから・・・出る。」
でも、彼の瞳は今迄に見たことがないほど、気に満ちていた。
「小狼君、サクラちゃんとモコナを離さないで。」
輝くスピアが小狼のあたりを渦巻く。
そしてそれは俺の周りにもやってきた。
だが、彼の周りにはそれはない。
なぜか。
その理由に思い当たった俺は、ぐっと彼の手を握り締めた。
その瞬間、スピアがバチリと斬れた。
衝撃が俺の身体を駆ける。
それは青年にも伝わったらしい。
ゴフッ
激しく血を吐いている。
その姿が痛々しい。
俺が拒んだせいで彼は傷ついた。
でも、俺が拒まなければ、彼は独り、死ぬ。
(俺は、守れないのか・・・?)
激しく咽る青年の肩を抱く。
氷に赤が飛び散るのは、見ているだけで苦しく、唇をかみしめた。
「足りない・・・魔力が・・・」
こんなにも身を削って俺たちを助けようとしているのに、俺は。
「ファイさんっ黒鋼さんっ!」
外で俺たちを必死に小狼が呼ぶ。
生きろと、呼ぶ。
あんなにも生きようとした彼を、俺は。
こんなにも生きろという仲間がいるのに、俺は。
(助け・・・られないっ・・・!!!!)
黒鋼も助けたかった。
こんな寒い世界とともに死なせたくなどないのに、彼はオレの魔法に逆らってしまった。
少ない魔力での魔法だったけれど、彼に外に出ようと言う強い気持ちがあれば、きっと外に出れたのだ。
(なのに、オレの手なんかを強く握るから。)
紅い目は必死に、オレの魔力が作った世界を閉じる魔法に対抗しようと押し返している。
そんなものでどうこうなるものじゃない。
噎せ返るような血の匂い。
こんなときにも、喉がごくりとなった。
(どうしたら彼女は死なずに済むんだ・・・?
どうしたら・・・オレ達は生きられる・・・?)
こんなときに、魔法で起きた風圧のせいかさっきは見当たらなかった記憶のカケラが、オレの目の前に落ちた。
幼いオレは、他の世界に行く魔法を身につけようと練習していた。
そして、行き先をうまく指定することができなかった。
いや、指定したはずだったのだ。
何者かがその軌道に少しだけ触れたせいで道筋が微妙にずれてしまったのだ。
でも初めて術を遣うオレは、そのずれを直す力はまだなかった。
(今思えば、もしかしてこれは・・・。)
どんな恐ろしいことが待っているだろう。
死ねない、ファイにこの名を、命を返すまでは、死ねないと念じていたら、落ちたのは真っ青な湖のほとりで、優しいそよ風が吹いていた。
雪と氷に覆われたセレスからは想像もつかない、豊かな土地だった。
そこで出会った一人の子ども。
男の子のように活発な女の子。
真っ黒の髪はさらさらで、真っ赤な瞳は炎のようにきれいで、見とれてしまった。
ーこの国はなんと言う名前なの?ー
幼いオレが尋ねる。
ーここは日本国の諏訪だ。ー
眩しい笑顔が、そう答えた。
日本国はたしか、黒鋼のいた国。
そして、あの男、飛王が言っていた。
ー共に旅をする日本国の若造が邪魔をするなら、殺せ。ー
赤い瞳、黒い髪、日本国・・・・
オレが戸惑っている間にも記憶は進んでいく。
思い出がよみがえってくる。
生まれて初めて肩車をしてくれたのは、若姫の父である諏訪の領主だった。
抱きついた頭と支えてくれる肩や腕から、力強さと温もりが伝わってきた。
優しく頭を撫でてくれた奥方様。
早くに亡くした母を思わせる温もりに眠りに落ちた。
ー俺、ふぁいがふぁいにひどいことしたとしても、ふぁいが大好きだっ!!
俺はふぁいにもスイカを食べてほしいし、一緒に雪で遊びたいし、湖でも泳ぎたいし、いろんなところに一緒に行きたいって、
ふぁいと会ってからいつも思ってるんだ!!ー
生まれて初めてオレのせいで泣いたのではなく、オレのために泣いてくれたのは、若姫様だった。
ぎゅうぎゅうだきしめてくる小さな腕が、ひどく愛おしかった。
あれから何百年もして、ともに旅に出ることで、皮肉なことに彼女の願いは叶えられたわけだけれど。
ーふぁいのことだって、守ってやる!ー
そういって笑う勝気な笑顔も。
ー待っていてくれる人のところに、帰ろう。ー
差し出す手は小さいのに、頼もしく見えた赤い瞳も。
ーありがとう、ふぁい!ー
諏訪を守る彼女を助けると申し出た時の嬉しそうな顔も。
ーふぁい、おれ、ふぁいのこと、だいすきだよ!ー
小さい手がぎゅうっとオレの手を握り、オレも自分よりも小さい手をぎゅっと握り返したことも。
(覚えて、いる・・・。)
その手は温かくて柔らかくて。
ー若姫様、オレもだよ。ー
初めて言った。
いろんな女性と付き合ったけれど、初めて想いを伝えたのは彼女だった。
まだ友情と愛情の違いもつかないうちだったけれど、彼女は間違いなく誰よりも大切な人だった。
ーファイにはとても素敵なお友達が出来たようだ。
全ては必然だと、言っていた人がいたけれど、もしそれが本当なら、君たちが生涯大切な人であり続けるように私は願おう。ー
今は亡き、そう祈ってくれた人。
そしてその人は城につくと言ったのだ。
ーこの記憶は、封印しておこうね。ー
アシュラ王は目を細めて言った。
ーなぜですか?ー
こんなにアシュラ王の言うことに反発したのはこの時だけだった。
ー君たちの未来のために。ー
ーどういうことですか?ー
ー君たちは辛い道を歩むだろう。
一度出会ってしまった人と、新たな関係を築くのは難しい。
己の立場に苦しみながらの再会よりも、真新しい出会いの方が、きっと新たな未来を作れるはずだから。ー
ー待ってください!
それはいったいー
ー大丈夫。
彼女とならば、乗り越えられる。ー
オレの制止を聞くことなく、王は記憶を封印した。
そのかけらはふっとオレの胸の中に入っていく。
そこだけが妙に暖かかった。
身体の震えが止まらない。
やっと思い出した。
彼女との記憶。
大切な、大切な、人。
(こんな、こんなときにっ!!!)
世界を絡め取る様に。
「おい!」
焦って彼を見れば、絶望的な表情を浮かべていた。
「世界が・・・閉じる・・・。
オレの魔法で・・・。」
「そんなことっ!!」
いったいどれほどの魔力をこの魔術師は持っているというのだろう。
片目を失ってなお、世界を閉じるほどの力なんて。
(これほど強い力を持ちながら、大切な物を次々と失っている・・・。)
その事実が苦しい。
「このままだとここから出られなくなる。」
必死に生きようとしている小狼も、躯だけになってしまった姫も、ふぁいも、皆が死ぬ。
「出るぞ!」
俺は青年の手を引くのに、彼は立とうとしない。
ひどく苦しげだ。
「みんなは無理だ。
オレは魔法を使うほど死に近づいている。」
そして身体をびくつかせて俯き、血を吐く。
「な、に・・・?」
背筋が凍る。
(この戦いで、彼はどれほど魔法を遣った?
どれほど命を削った・・・!?)
「けれどまだ魔力は残っている。」
「何をする気だ!」
その魔力を遣ってしまうとどうなるのか、俺には想像もつかない。
今ですらこんなにぼろぼろなのに。
「ここから・・・出る。」
でも、彼の瞳は今迄に見たことがないほど、気に満ちていた。
「小狼君、サクラちゃんとモコナを離さないで。」
輝くスピアが小狼のあたりを渦巻く。
そしてそれは俺の周りにもやってきた。
だが、彼の周りにはそれはない。
なぜか。
その理由に思い当たった俺は、ぐっと彼の手を握り締めた。
その瞬間、スピアがバチリと斬れた。
衝撃が俺の身体を駆ける。
それは青年にも伝わったらしい。
ゴフッ
激しく血を吐いている。
その姿が痛々しい。
俺が拒んだせいで彼は傷ついた。
でも、俺が拒まなければ、彼は独り、死ぬ。
(俺は、守れないのか・・・?)
激しく咽る青年の肩を抱く。
氷に赤が飛び散るのは、見ているだけで苦しく、唇をかみしめた。
「足りない・・・魔力が・・・」
こんなにも身を削って俺たちを助けようとしているのに、俺は。
「ファイさんっ黒鋼さんっ!」
外で俺たちを必死に小狼が呼ぶ。
生きろと、呼ぶ。
あんなにも生きようとした彼を、俺は。
こんなにも生きろという仲間がいるのに、俺は。
(助け・・・られないっ・・・!!!!)
黒鋼も助けたかった。
こんな寒い世界とともに死なせたくなどないのに、彼はオレの魔法に逆らってしまった。
少ない魔力での魔法だったけれど、彼に外に出ようと言う強い気持ちがあれば、きっと外に出れたのだ。
(なのに、オレの手なんかを強く握るから。)
紅い目は必死に、オレの魔力が作った世界を閉じる魔法に対抗しようと押し返している。
そんなものでどうこうなるものじゃない。
噎せ返るような血の匂い。
こんなときにも、喉がごくりとなった。
(どうしたら彼女は死なずに済むんだ・・・?
どうしたら・・・オレ達は生きられる・・・?)
こんなときに、魔法で起きた風圧のせいかさっきは見当たらなかった記憶のカケラが、オレの目の前に落ちた。
幼いオレは、他の世界に行く魔法を身につけようと練習していた。
そして、行き先をうまく指定することができなかった。
いや、指定したはずだったのだ。
何者かがその軌道に少しだけ触れたせいで道筋が微妙にずれてしまったのだ。
でも初めて術を遣うオレは、そのずれを直す力はまだなかった。
(今思えば、もしかしてこれは・・・。)
どんな恐ろしいことが待っているだろう。
死ねない、ファイにこの名を、命を返すまでは、死ねないと念じていたら、落ちたのは真っ青な湖のほとりで、優しいそよ風が吹いていた。
雪と氷に覆われたセレスからは想像もつかない、豊かな土地だった。
そこで出会った一人の子ども。
男の子のように活発な女の子。
真っ黒の髪はさらさらで、真っ赤な瞳は炎のようにきれいで、見とれてしまった。
ーこの国はなんと言う名前なの?ー
幼いオレが尋ねる。
ーここは日本国の諏訪だ。ー
眩しい笑顔が、そう答えた。
日本国はたしか、黒鋼のいた国。
そして、あの男、飛王が言っていた。
ー共に旅をする日本国の若造が邪魔をするなら、殺せ。ー
赤い瞳、黒い髪、日本国・・・・
オレが戸惑っている間にも記憶は進んでいく。
思い出がよみがえってくる。
生まれて初めて肩車をしてくれたのは、若姫の父である諏訪の領主だった。
抱きついた頭と支えてくれる肩や腕から、力強さと温もりが伝わってきた。
優しく頭を撫でてくれた奥方様。
早くに亡くした母を思わせる温もりに眠りに落ちた。
ー俺、ふぁいがふぁいにひどいことしたとしても、ふぁいが大好きだっ!!
俺はふぁいにもスイカを食べてほしいし、一緒に雪で遊びたいし、湖でも泳ぎたいし、いろんなところに一緒に行きたいって、
ふぁいと会ってからいつも思ってるんだ!!ー
生まれて初めてオレのせいで泣いたのではなく、オレのために泣いてくれたのは、若姫様だった。
ぎゅうぎゅうだきしめてくる小さな腕が、ひどく愛おしかった。
あれから何百年もして、ともに旅に出ることで、皮肉なことに彼女の願いは叶えられたわけだけれど。
ーふぁいのことだって、守ってやる!ー
そういって笑う勝気な笑顔も。
ー待っていてくれる人のところに、帰ろう。ー
差し出す手は小さいのに、頼もしく見えた赤い瞳も。
ーありがとう、ふぁい!ー
諏訪を守る彼女を助けると申し出た時の嬉しそうな顔も。
ーふぁい、おれ、ふぁいのこと、だいすきだよ!ー
小さい手がぎゅうっとオレの手を握り、オレも自分よりも小さい手をぎゅっと握り返したことも。
(覚えて、いる・・・。)
その手は温かくて柔らかくて。
ー若姫様、オレもだよ。ー
初めて言った。
いろんな女性と付き合ったけれど、初めて想いを伝えたのは彼女だった。
まだ友情と愛情の違いもつかないうちだったけれど、彼女は間違いなく誰よりも大切な人だった。
ーファイにはとても素敵なお友達が出来たようだ。
全ては必然だと、言っていた人がいたけれど、もしそれが本当なら、君たちが生涯大切な人であり続けるように私は願おう。ー
今は亡き、そう祈ってくれた人。
そしてその人は城につくと言ったのだ。
ーこの記憶は、封印しておこうね。ー
アシュラ王は目を細めて言った。
ーなぜですか?ー
こんなにアシュラ王の言うことに反発したのはこの時だけだった。
ー君たちの未来のために。ー
ーどういうことですか?ー
ー君たちは辛い道を歩むだろう。
一度出会ってしまった人と、新たな関係を築くのは難しい。
己の立場に苦しみながらの再会よりも、真新しい出会いの方が、きっと新たな未来を作れるはずだから。ー
ー待ってください!
それはいったいー
ー大丈夫。
彼女とならば、乗り越えられる。ー
オレの制止を聞くことなく、王は記憶を封印した。
そのかけらはふっとオレの胸の中に入っていく。
そこだけが妙に暖かかった。
身体の震えが止まらない。
やっと思い出した。
彼女との記憶。
大切な、大切な、人。
(こんな、こんなときにっ!!!)
