インフィニティ
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……ねぇ、君はどんな旅をしていたの?」
なかなか眠れないらしい青年は、ずいぶん長い沈黙の後、話しかけてきた。
「聞いてどうする」
「んー、興味があるだけだから。
君の旅でも、小狼君は君の過去を見たのかな?」
ずいぶんと微妙なことを聞くものだ。
「ああ」
懐かしい話だと思う。
まだ誰も欠けていなかったころだ。
不穏な空気はあったけれど、それでもまだ、日のあたる場所に俺たちはいた。
「その時何か言ってた?」
「蝙蝠の紋の話か?」
「違う。
……オレのところの黒鋼は、小狼君が記憶を見て何かが変わった。
気づいたのは二度目のツァラストラ国の時だ。
記憶の中で何か思い出したのかと思ったのだけれど」
俺は首をかしげる。
「俺たちはそんな国に行っていない」
ファイは目を見開いた。
「じゃあ、オレ達の旅は違う道筋をたどっているっていうこと?」
「部分的に、というのが正しいかもしれん。
俺達もここインフィニティに訪れた」
となると、もしかしたら俺の望みはかなえられているのかもしれない。
「……姫には、夢見の力はあるのか?」
ファイは少し驚いた顔をしてから、うなずいた。
「完全に制御はできないみたいだけれど、一応あるみたい」
その言葉に俺は思わずソファに持たれて天井を見た。
(流石に完璧に願いをかなえるのは難しい、か)
それでも力があるだけで、かなり変わってくるはずだ。
自分と同じ願いを魔女に頼んだ人は誰だか知らないが、そいつもこの気持ちを味わえたらいい。
「なんでそんなことを聞くの?」
「それが俺の望みだったからだ。
その望みのために、俺は記憶を持って生まれ、再び旅には参加しなかった」
怪訝そうな顔に思わず笑みがこぼれた。
これで彼らが助かると決まったわけではない。
それでも、これで助かるための一歩は踏み出せたのだ。
「俺が歩めなかった未来をお前達は歩んでいける」
蒼い瞳は、戸惑ったように揺れた。
「……生きろ」
彼は顔に笑みを張り付けた。
「……やっぱり、魂が一緒なんだね」
ファイは感情を隠すのが下手だった。
忍には向かないだろう。
彼は、笑っているのがよく似合うのだ。
姫や、少年や、白饅頭と一緒に。
だから、そんな日が、また来ればいいと思う。
俺がこの世界で、居場所を得たように。
「死にたがりのお前も、いつかともに生きたいと願える者の存在に気づけるといいと思う」
そう言うと、虚を突かれたかのような顔をして、青年は下手に笑った。
「……ご自慢をどうも」
「世話になった」
隣で頭を下げる黒鋼の顔色は、ずいぶんいいように思う。
やはり相当疲れていたのだろう。
彼女が倒れてはサクラちゃんの願いはかなえられない。
知世ちゃんには感謝せざるを得ないだろう。
「ありがとう、知世ちゃん」
「いいえ」
ふわりと微笑む彼女は、きっと全てを知っている。
「とっても楽しかったよ」
サクラちゃんも楽しげに微笑んだ。
「ぜひまた、いらしてくださいね」
知世ちゃんにそう返されて、一瞬の間ができた後、彼女は綺麗に笑った。
「うん」
その一瞬の間を見過ごすオレや黒鋼ではない。
事実、赤い瞳はちらりとサクラちゃんの表情を確認していた。
握りしめられた小さな手にも気づいていたことだろう。
「じゃあねー!」
モコナが手を振り、オレたちもホテルへと向かう。
大きな門が閉ざされ、つかの間の休息は終わりを告げた。
また今日から、試合が始まる。
「黒鋼」
お嬢が俺を呼んだ。
「ああ?」
見下ろせば嬉しそうに見上げてくる。
「願いはかなったようでしたか?」
俺はにやりと口の端を上げた。
「ああ。
俺が頼んだ願いはかなっていた。
問題はその願いが、本当の願いを叶えてくれるか、だ。
あいつは俺より未熟者だから不安は不安だが」
消えていった黒い背中。
俺よりもずっと小さく、細く、未熟なそれ。
「……かけるしかねぇ。
俺の旅は、もう終わったんだ」
不意に俺の右手がぬくもりに包まれる。
「違うよ。
くろりんの旅は、私たちとの旅」
ユゥイの蒼い瞳がきらりと見上げてくる。
「そうそう!」
お嬢の向こうから、ファイが笑顔を向けた。
「湿っぽい黒鋼なんて、黒鋼ではありませんものね」
ホホホ、と笑われ、俺はそっぽを向く。
「これだから女が3人集まると姦しい」
「何か言いました?」
「なんでもねぇ」
あいつたちの隣も、自分の居場所だった。
守れなかったけれど、それでも、そこに俺の居場所はあった。
だが今はここが、俺の居場所だ。
(……お前は、守れよ)
なかなか眠れないらしい青年は、ずいぶん長い沈黙の後、話しかけてきた。
「聞いてどうする」
「んー、興味があるだけだから。
君の旅でも、小狼君は君の過去を見たのかな?」
ずいぶんと微妙なことを聞くものだ。
「ああ」
懐かしい話だと思う。
まだ誰も欠けていなかったころだ。
不穏な空気はあったけれど、それでもまだ、日のあたる場所に俺たちはいた。
「その時何か言ってた?」
「蝙蝠の紋の話か?」
「違う。
……オレのところの黒鋼は、小狼君が記憶を見て何かが変わった。
気づいたのは二度目のツァラストラ国の時だ。
記憶の中で何か思い出したのかと思ったのだけれど」
俺は首をかしげる。
「俺たちはそんな国に行っていない」
ファイは目を見開いた。
「じゃあ、オレ達の旅は違う道筋をたどっているっていうこと?」
「部分的に、というのが正しいかもしれん。
俺達もここインフィニティに訪れた」
となると、もしかしたら俺の望みはかなえられているのかもしれない。
「……姫には、夢見の力はあるのか?」
ファイは少し驚いた顔をしてから、うなずいた。
「完全に制御はできないみたいだけれど、一応あるみたい」
その言葉に俺は思わずソファに持たれて天井を見た。
(流石に完璧に願いをかなえるのは難しい、か)
それでも力があるだけで、かなり変わってくるはずだ。
自分と同じ願いを魔女に頼んだ人は誰だか知らないが、そいつもこの気持ちを味わえたらいい。
「なんでそんなことを聞くの?」
「それが俺の望みだったからだ。
その望みのために、俺は記憶を持って生まれ、再び旅には参加しなかった」
怪訝そうな顔に思わず笑みがこぼれた。
これで彼らが助かると決まったわけではない。
それでも、これで助かるための一歩は踏み出せたのだ。
「俺が歩めなかった未来をお前達は歩んでいける」
蒼い瞳は、戸惑ったように揺れた。
「……生きろ」
彼は顔に笑みを張り付けた。
「……やっぱり、魂が一緒なんだね」
ファイは感情を隠すのが下手だった。
忍には向かないだろう。
彼は、笑っているのがよく似合うのだ。
姫や、少年や、白饅頭と一緒に。
だから、そんな日が、また来ればいいと思う。
俺がこの世界で、居場所を得たように。
「死にたがりのお前も、いつかともに生きたいと願える者の存在に気づけるといいと思う」
そう言うと、虚を突かれたかのような顔をして、青年は下手に笑った。
「……ご自慢をどうも」
「世話になった」
隣で頭を下げる黒鋼の顔色は、ずいぶんいいように思う。
やはり相当疲れていたのだろう。
彼女が倒れてはサクラちゃんの願いはかなえられない。
知世ちゃんには感謝せざるを得ないだろう。
「ありがとう、知世ちゃん」
「いいえ」
ふわりと微笑む彼女は、きっと全てを知っている。
「とっても楽しかったよ」
サクラちゃんも楽しげに微笑んだ。
「ぜひまた、いらしてくださいね」
知世ちゃんにそう返されて、一瞬の間ができた後、彼女は綺麗に笑った。
「うん」
その一瞬の間を見過ごすオレや黒鋼ではない。
事実、赤い瞳はちらりとサクラちゃんの表情を確認していた。
握りしめられた小さな手にも気づいていたことだろう。
「じゃあねー!」
モコナが手を振り、オレたちもホテルへと向かう。
大きな門が閉ざされ、つかの間の休息は終わりを告げた。
また今日から、試合が始まる。
「黒鋼」
お嬢が俺を呼んだ。
「ああ?」
見下ろせば嬉しそうに見上げてくる。
「願いはかなったようでしたか?」
俺はにやりと口の端を上げた。
「ああ。
俺が頼んだ願いはかなっていた。
問題はその願いが、本当の願いを叶えてくれるか、だ。
あいつは俺より未熟者だから不安は不安だが」
消えていった黒い背中。
俺よりもずっと小さく、細く、未熟なそれ。
「……かけるしかねぇ。
俺の旅は、もう終わったんだ」
不意に俺の右手がぬくもりに包まれる。
「違うよ。
くろりんの旅は、私たちとの旅」
ユゥイの蒼い瞳がきらりと見上げてくる。
「そうそう!」
お嬢の向こうから、ファイが笑顔を向けた。
「湿っぽい黒鋼なんて、黒鋼ではありませんものね」
ホホホ、と笑われ、俺はそっぽを向く。
「これだから女が3人集まると姦しい」
「何か言いました?」
「なんでもねぇ」
あいつたちの隣も、自分の居場所だった。
守れなかったけれど、それでも、そこに俺の居場所はあった。
だが今はここが、俺の居場所だ。
(……お前は、守れよ)
