インフィニティ
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「・・・ねぇ、君はどんな旅をしていたの?」
なかなか眠れないらしい少年は、ずいぶん長い沈黙の後、話しかけてきた。
「聞いてどうする。」
「んー、興味があるだけだから。
君の旅でも、小狼君は君の過去を見たのかな?」
ずいぶんと微妙なことを聞くものだ。
「ああ。」
懐かしい話だと思う。
まだ誰も欠けていなかったころだ。
不穏な空気はあったけれど、それでもまだ、日のあたる場所に俺たちはいた。
「その時何か言ってた?」
「蝙蝠の紋の話か?」
「違う。
・・・オレのところの黒鋼は、小狼君が記憶を見て何かが変わった。
気づいたのは二度目のツァラストラ国の時だ。
記憶の中で何か思い出したのかと思ったのだけれど。」
俺は首をかしげる。
「俺たちはそんな国に行っていない。」
ファイは目を見開いた。
「じゃあ、オレ達の旅は違う道筋をたどっているっていうこと?」
「部分的に、というのが正しいかもしれん。
俺達もここインフィニティに訪れた。」
となると、もしかしたら俺の望みはかなえられているのかもしれない。
「・・・姫には、夢見の力はあるのか?」
ファイは少し驚いた顔をしてから、うなずいた。
「完全に制御はできないみたいだけれど、一応あるみたい。」
その言葉に俺は思わずソファに持たれて天井を見た。
(流石に完璧に願いをかなえるのは難しい、か。)
それでも力があるだけで、かなり変わってくるはずだ。
自分と同じ願いを魔女に頼んだ人は誰だか知らないが、そいつもこの気持ちを味わえたらいい。
「なんでそんなことを聞くの?」
「それが俺の望みだったからだ。
その望みのために、俺は記憶を持って生まれ、再び旅には参加しなかった。」
怪訝そうな顔に思わず笑みがこぼれた。
これで彼らが助かると決まったわけではない。
それでも、これで助かるための一歩は踏み出せたのだ。
「俺が歩めなかった未来をお前達は歩んでいける。」
蒼い瞳は、戸惑ったように揺れた。
「・・・生きろ。」
彼は顔に笑みを張り付けた。
「・・・やっぱり、魂が一緒なんだね。」
ファイは感情を隠すのが下手だった。
忍には向かないだろう。
彼は、笑っているのがよく似合うのだ。
姫や、少年や、白饅頭と一緒に。
だから、そんな日が、また来ればいいと思う。
俺がこの世界で、居場所を得たように。
「死にたがりのお前も、いつかともに生きたいと願える者の存在に気づけるといいと思う。」
そう言うと、虚を突かれたかのような顔をして、ファイは下手に笑った。
「・・・ご自慢をどうも。」
「世話になった。」
隣で頭を下げる黒鋼の顔色は、ずいぶんいいように思う。
やはり相当疲れていたのだろう。
彼女が倒れてはサクラちゃんの願いはかなえられない。
知世ちゃんには感謝せざるを得ないだろう。
「ありがとう、知世ちゃん。」
「いいえ。」
ふわりと微笑む彼女は、きっと全てを知っている。
「とっても楽しかったよ。」
サクラちゃんも楽しげに微笑んだ。
「ぜひまた、いらしてくださいね。」
知世ちゃんにそう返されて、一瞬の間ができた後、彼女は綺麗に笑った。
「うん。」
その一瞬の間を見過ごすオレや黒鋼ではない。
事実、赤い瞳はちらりとサクラちゃんの表情を確認していた。
握りしめられた小さな手にも気づいていたことだろう。
「じゃあねー!」
モコナが手を振り、オレたちもホテルへと向かう。
大きな門が閉ざされ、つかの間の休息は終わりを告げた。
また今日から、試合が始まる。
「黒鋼。」
お嬢が俺を呼んだ。
「ああ?」
見下ろせば嬉しそうに見上げてくる。
「願いはかなったようでしたか?」
俺はにやりと口の端を上げた。
「ああ。
俺が頼んだ願いはかなっていた。
問題はその願いが、本当の願いを叶えてくれるか、だ。
あいつは俺より未熟者だから不安は不安だが。」
消えていった黒い背中。
俺よりもずっと小さく、細く、未熟なそれ。
「・・・かけるしかねぇ。
俺の旅は終わったんだ。」
不意に俺の右手がぬくもりに包まれる。
「違うよ。
くろりんの旅は、私たちとの旅。」
ユゥイの蒼い瞳がきらりと見上げてくる。
「そうそう!」
お嬢の向こうから、ファイが笑顔を向けた。
「湿っぽい黒鋼なんて、黒鋼ではありませんものね。」
ホホホ、と笑われ、俺はそっぽを向く。
「これだから女が3人集まると姦しい。」
「何か言いました?」
「なんでもねぇ。」
あいつたちの隣も、自分の居場所だった。
守れなかったけれど、それでも、そこに俺の居場所はあった。
だが今はここが、俺の居場所だ。
(・・・お前は、守れよ。)
なかなか眠れないらしい少年は、ずいぶん長い沈黙の後、話しかけてきた。
「聞いてどうする。」
「んー、興味があるだけだから。
君の旅でも、小狼君は君の過去を見たのかな?」
ずいぶんと微妙なことを聞くものだ。
「ああ。」
懐かしい話だと思う。
まだ誰も欠けていなかったころだ。
不穏な空気はあったけれど、それでもまだ、日のあたる場所に俺たちはいた。
「その時何か言ってた?」
「蝙蝠の紋の話か?」
「違う。
・・・オレのところの黒鋼は、小狼君が記憶を見て何かが変わった。
気づいたのは二度目のツァラストラ国の時だ。
記憶の中で何か思い出したのかと思ったのだけれど。」
俺は首をかしげる。
「俺たちはそんな国に行っていない。」
ファイは目を見開いた。
「じゃあ、オレ達の旅は違う道筋をたどっているっていうこと?」
「部分的に、というのが正しいかもしれん。
俺達もここインフィニティに訪れた。」
となると、もしかしたら俺の望みはかなえられているのかもしれない。
「・・・姫には、夢見の力はあるのか?」
ファイは少し驚いた顔をしてから、うなずいた。
「完全に制御はできないみたいだけれど、一応あるみたい。」
その言葉に俺は思わずソファに持たれて天井を見た。
(流石に完璧に願いをかなえるのは難しい、か。)
それでも力があるだけで、かなり変わってくるはずだ。
自分と同じ願いを魔女に頼んだ人は誰だか知らないが、そいつもこの気持ちを味わえたらいい。
「なんでそんなことを聞くの?」
「それが俺の望みだったからだ。
その望みのために、俺は記憶を持って生まれ、再び旅には参加しなかった。」
怪訝そうな顔に思わず笑みがこぼれた。
これで彼らが助かると決まったわけではない。
それでも、これで助かるための一歩は踏み出せたのだ。
「俺が歩めなかった未来をお前達は歩んでいける。」
蒼い瞳は、戸惑ったように揺れた。
「・・・生きろ。」
彼は顔に笑みを張り付けた。
「・・・やっぱり、魂が一緒なんだね。」
ファイは感情を隠すのが下手だった。
忍には向かないだろう。
彼は、笑っているのがよく似合うのだ。
姫や、少年や、白饅頭と一緒に。
だから、そんな日が、また来ればいいと思う。
俺がこの世界で、居場所を得たように。
「死にたがりのお前も、いつかともに生きたいと願える者の存在に気づけるといいと思う。」
そう言うと、虚を突かれたかのような顔をして、ファイは下手に笑った。
「・・・ご自慢をどうも。」
「世話になった。」
隣で頭を下げる黒鋼の顔色は、ずいぶんいいように思う。
やはり相当疲れていたのだろう。
彼女が倒れてはサクラちゃんの願いはかなえられない。
知世ちゃんには感謝せざるを得ないだろう。
「ありがとう、知世ちゃん。」
「いいえ。」
ふわりと微笑む彼女は、きっと全てを知っている。
「とっても楽しかったよ。」
サクラちゃんも楽しげに微笑んだ。
「ぜひまた、いらしてくださいね。」
知世ちゃんにそう返されて、一瞬の間ができた後、彼女は綺麗に笑った。
「うん。」
その一瞬の間を見過ごすオレや黒鋼ではない。
事実、赤い瞳はちらりとサクラちゃんの表情を確認していた。
握りしめられた小さな手にも気づいていたことだろう。
「じゃあねー!」
モコナが手を振り、オレたちもホテルへと向かう。
大きな門が閉ざされ、つかの間の休息は終わりを告げた。
また今日から、試合が始まる。
「黒鋼。」
お嬢が俺を呼んだ。
「ああ?」
見下ろせば嬉しそうに見上げてくる。
「願いはかなったようでしたか?」
俺はにやりと口の端を上げた。
「ああ。
俺が頼んだ願いはかなっていた。
問題はその願いが、本当の願いを叶えてくれるか、だ。
あいつは俺より未熟者だから不安は不安だが。」
消えていった黒い背中。
俺よりもずっと小さく、細く、未熟なそれ。
「・・・かけるしかねぇ。
俺の旅は終わったんだ。」
不意に俺の右手がぬくもりに包まれる。
「違うよ。
くろりんの旅は、私たちとの旅。」
ユゥイの蒼い瞳がきらりと見上げてくる。
「そうそう!」
お嬢の向こうから、ファイが笑顔を向けた。
「湿っぽい黒鋼なんて、黒鋼ではありませんものね。」
ホホホ、と笑われ、俺はそっぽを向く。
「これだから女が3人集まると姦しい。」
「何か言いました?」
「なんでもねぇ。」
あいつたちの隣も、自分の居場所だった。
守れなかったけれど、それでも、そこに俺の居場所はあった。
だが今はここが、俺の居場所だ。
(・・・お前は、守れよ。)
