インフィニティ
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
男性のファイは、ユゥイと死別したと聞いた。
今までの旅で黒ちゃんがどのくらいファイの過去を知ったのか、私たちにはわからない。
だから曖昧に流すしかない。
何よりも、今日の目的は黒ちゃんにリラックスして、ゆっくり休んでもらうこと。
これから彼女は、今まで以上に大変だと、お嬢様が言っていたから。
「そんなことより!
今日は黒ちゃん女の子の日だよー」
その言葉にぎくりと黒ちゃんの肩が上がった。
「そう!
3人で仲良く楽しく女子会だよー」
「ちょ、ちょっと待てっ!」
戸惑う紅い瞳はそう見れるものじゃない。
なんだか楽しくなってきた。
「「待たなーい!」」
そう言って真っ黒の服を脱がせにかかる。
服の下は包帯と傷跡だらけだ。
これがなければ、引きしまったスタイルの良い綺麗な体だっただろう。
なるべく触れないようにしてひらひらのパジャマに着替えさせる。
「たまにはね!」
「そうそう、たまにはね!」
達成感溢れる笑顔に、黒ちゃんは疲れているようだ。
「「えいやっ」」
いつも二人で寝ているベッドに、黒ちゃんを押し倒す。
そして両側に私とユゥイが寝転んだ。
「ねぇ、黒ちゃん。
私たちが双子であることは知っていたの?」
「あいつも双子だったと聞いたからな」
「そっかぁ」
「逆に聞くが、なぜお前たちはあいつの双子が死んでいることを知っているんだ?」
私たちは言葉を探すように黙った。
「世の中って、必然しかないんだって、ある人が言っていたんだけど」
「本当にそうなんだろうなって思う」
「たくさんのことがあったんだって」
「黒様が言っていたの」
「私と同じ魂をもつファイと名乗る青年と、」
「旅に出ていた世界(とき)もあった、って」
黒ちゃんは目を見開いた。
「記憶を持ってもう一度生まれることと、再び旅に出ないことが、最後に望んだ願いの対価だったんだって」
「私たちもあまり教えてもらってはいないんだけど……
ほら、もともと黒たんって口数多い方じゃないから」
でも、黒ちゃんはきっとこの言葉だけでいくつかのことを知るだろう。
たとえば、この旅が繰り返されたものであること。
たとえば、繰返しを望まれなければ、自分が存在しないこと。
たとえば、この先に、これまでの人生を覆してでもやり直したい何かが、待っていること。
「……ああ」
黒ちゃんは、静かにそううなずいた。
それ以上、何も聞かなかった。
「だからさ、今日はゆっくり休んで?」
ファイがそう言うと、黒ちゃんはようやく淡く微笑んだ。
私たちの知る黒たんよりも固いけれど、それでも、きっとそれが黒ちゃんの精いっぱいの笑顔なんだと思う。
赤い瞳は、薄い瞼に覆われていった。
左手の傷を抱きしめるように、右手が重なっている。
痛々しい傷だけれど、彼女には大事な物なのかもしれない。
静かな寝息が聞こえてきた。
黒たんは寝たふりも得意だけれど、これはちゃんと寝ているんだと思う。
今日は誰の視線も感じずに、皆が安全に寝られるから。
私とファイは目を合わせた。
ファイはどこか悲しそうな顔をしていて、それはきっと自分もなんだろうと思う。
(黒ちゃんの未来が、どうか明るくありますように)
「奇妙な晩餐会だったねぇ」
飄々とした風を装ってはいるが、疑問は抱いているだろう。
こんな大豪邸なのだ、客間ぐらいあるだろに、なぜ自分が、よりにもよってこの男と同じ部屋なのかと。
俺はどかりとソファに座った。
ファイはベッドに腰かける。
「……俺が望んだ」
静かにそう言うと、彼は俺を見て目を細めた。
「教えてもらえるのかな、その理由」
片目だけの蒼。
それは、昔、オレも見た苦痛の後だ。
それすらも懐かしいと思える俺は、ずいぶんと重症かもしれない。
「人の生き方は様々だ。
俺たちは不思議な運命のもと、願いに突き動かされ、幸にも不幸にもなる」
蒼い瞳はそらされることはない。
「……俺はここに生命を受ける前、俺と同じ魂を持つ女の代わりに、お前達とともに旅していた」
この国に生を受ける昔、俺は目の前のファイと、旅をしていた。
彼だけではない。
小僧と、姫と、それから白饅頭と旅をした。
羽を探しながら、日本国に帰るための旅を。
いろんな世界に行って、危険な目にも遭い、どんちゃん騒ぎもし、旨い酒も飲んだ。
あいつが片目を失い、小僧が消えてもう一人の小僧が現れた。
そして、あいつは殺したのだ。
小僧と、彼を庇おうとした姫を。
その挙句、自ら命を絶った。
俺と白饅頭を残して。
ーごめん……な…さい……ー
今でも時々夢に見る。
3人の屍と、青年の涙と、白饅頭の悲鳴。
全ては飛王の策略のうちだったが、姫が小僧を庇って死ぬのは予定外だったらしい。
その場で飛王は、時間を巻き戻した。
巻き戻される時間の中で、俺は願った。
青年が小僧と姫を殺さぬ未来を。
自ら命を絶つことのない未来を。
ーそれは対価が重すぎるわー
魔女の声がした。
ー代わりに願いなさい。
サクラ姫に、夢見の力が備わるようにと。
それでも、貴方の願いが確実に叶うとは約束はできない。
でも、これが今のあなたにできる精一杯よー
姫に夢見の力が備わることで何が変わるのか、俺にはわからなかった。
それでも、白饅頭が信じる魔女が言うのだ。
俺は、この女を信じる。
ー願おう。
姫にどうか夢見の力を。
……その対価はなんだ?ー
ー対価は二つ。
一つ目は、貴方が再び生命を受けるのは、日本国ではなく、また、再び繰り返される旅には加わらないということ。
二つ目は、この記憶を持って、2度目の命を生きてゆくこと。
これで足りない分はもうもらっているわー
足りない分を払ったのは誰だろうか。
アシュラ王かもしれないし、知世かもしれない。
小僧や姫の周辺の人かもしれない。
俺以外にも未来を変える罪を背負ってでも、彼らに生きてほしいと思う人がいることが、嬉しかった。
俺の望みが叶えられるかどうか、見届けることも、知ることもできないだろう。
それでも俺は、この悪夢を抱いて次の生を受ける。
この咎を背負い続ける。
未来を捻じ曲げることは、飛王の期待に添うことになるだろう。
それでも、たとえそうなることになっても、俺はあきらめられなかった。
ー分かったー
魔女は悲しげに目を細めた。
ー全ては必然。
貴方の願いも、そして貴方の命も。
これから先に出会うたくさんの人たちが、貴方を待っているー
片目を失っているのだ。
ここまでの彼が歩んできた道筋は、俺が知ったものと大差はなかったに違いない。
それが願いがかなったことになるのかも、俺には分からない。
「お前達を守れなかった。
だから、飛王は時間を巻き戻してお前たちを再び旅に出した。
そして、もう一度、きっと同じ苦しみを味あわせている。
……悪かった」
過去を知る俺としては、もう二度と味あわせたいものではなかったし、本人もそう思っていただろう。
なのに、自分の意思に関係なく再び味わわされたのだ。
しかし蒼い瞳は冷静に俺を見つめた。
「貴方が何かを願ってくれているならば、オレの過去は貴方のせいではないはずだ。
いずれにせよ、オレにはこの人生が初めてだから」
淡々とそう告げる瞳は、俺とそれ以上近づかないために、“黒鋼”と呼んでいたころとよく似ている。
(そう言えばさっき、女のことを黒鋼と呼んでいたか)
流石に同じ魂だけあって、あの女も同じ選択をしたらしい。
それがなんだか嬉しくて、口の端が上がった。
「で、オレをここに呼んだのは、謝るだけが理由?」
蒼い目は冷たく俺を見つめる。
いつまでたっても生意気な奴だ。
「てめぇらのおかげで休めねぇもう一人の俺を休ませるためだ。
そのくらい察しろ」
あの女の疲労度は、同じ魂の俺だからこそわかるかもしれない。
精神的にもかなり来ている。
何より、睡眠時間が取れないのが痛い。
一緒に旅をしていた時の俺は、気配に敏感で、異変があれば起きることができたから、眠れる時にはしっかりと寝ていた。
あの女も気配に敏感で起きれるだろうに、まるで眠れていないような顔をしていた。
もしかしたらその事に彼女自身気づいていないかもしれない。
精神的に疲弊している中、折れずに立ち続けるため、己をも無意識に騙している可能性がある。
青年は少し目を見開いてからうつむいた。
気づいていなかったのだろう。
「お前はそこで寝ろ」
俺はごろんとソファに寝転んだ。
「流石にそれは悪いよ」
「構わん」
そう言って背を向ければ、しばらくして青年がもぞもぞと動く気配があった。
「じゃあお言葉に甘えて」
うつ伏せに寝るその姿は、俺の傍にいるユゥイとは違う。
昔旅をしていたときに見たそれだった。
俺は目を閉じた。
今までの旅で黒ちゃんがどのくらいファイの過去を知ったのか、私たちにはわからない。
だから曖昧に流すしかない。
何よりも、今日の目的は黒ちゃんにリラックスして、ゆっくり休んでもらうこと。
これから彼女は、今まで以上に大変だと、お嬢様が言っていたから。
「そんなことより!
今日は黒ちゃん女の子の日だよー」
その言葉にぎくりと黒ちゃんの肩が上がった。
「そう!
3人で仲良く楽しく女子会だよー」
「ちょ、ちょっと待てっ!」
戸惑う紅い瞳はそう見れるものじゃない。
なんだか楽しくなってきた。
「「待たなーい!」」
そう言って真っ黒の服を脱がせにかかる。
服の下は包帯と傷跡だらけだ。
これがなければ、引きしまったスタイルの良い綺麗な体だっただろう。
なるべく触れないようにしてひらひらのパジャマに着替えさせる。
「たまにはね!」
「そうそう、たまにはね!」
達成感溢れる笑顔に、黒ちゃんは疲れているようだ。
「「えいやっ」」
いつも二人で寝ているベッドに、黒ちゃんを押し倒す。
そして両側に私とユゥイが寝転んだ。
「ねぇ、黒ちゃん。
私たちが双子であることは知っていたの?」
「あいつも双子だったと聞いたからな」
「そっかぁ」
「逆に聞くが、なぜお前たちはあいつの双子が死んでいることを知っているんだ?」
私たちは言葉を探すように黙った。
「世の中って、必然しかないんだって、ある人が言っていたんだけど」
「本当にそうなんだろうなって思う」
「たくさんのことがあったんだって」
「黒様が言っていたの」
「私と同じ魂をもつファイと名乗る青年と、」
「旅に出ていた世界(とき)もあった、って」
黒ちゃんは目を見開いた。
「記憶を持ってもう一度生まれることと、再び旅に出ないことが、最後に望んだ願いの対価だったんだって」
「私たちもあまり教えてもらってはいないんだけど……
ほら、もともと黒たんって口数多い方じゃないから」
でも、黒ちゃんはきっとこの言葉だけでいくつかのことを知るだろう。
たとえば、この旅が繰り返されたものであること。
たとえば、繰返しを望まれなければ、自分が存在しないこと。
たとえば、この先に、これまでの人生を覆してでもやり直したい何かが、待っていること。
「……ああ」
黒ちゃんは、静かにそううなずいた。
それ以上、何も聞かなかった。
「だからさ、今日はゆっくり休んで?」
ファイがそう言うと、黒ちゃんはようやく淡く微笑んだ。
私たちの知る黒たんよりも固いけれど、それでも、きっとそれが黒ちゃんの精いっぱいの笑顔なんだと思う。
赤い瞳は、薄い瞼に覆われていった。
左手の傷を抱きしめるように、右手が重なっている。
痛々しい傷だけれど、彼女には大事な物なのかもしれない。
静かな寝息が聞こえてきた。
黒たんは寝たふりも得意だけれど、これはちゃんと寝ているんだと思う。
今日は誰の視線も感じずに、皆が安全に寝られるから。
私とファイは目を合わせた。
ファイはどこか悲しそうな顔をしていて、それはきっと自分もなんだろうと思う。
(黒ちゃんの未来が、どうか明るくありますように)
「奇妙な晩餐会だったねぇ」
飄々とした風を装ってはいるが、疑問は抱いているだろう。
こんな大豪邸なのだ、客間ぐらいあるだろに、なぜ自分が、よりにもよってこの男と同じ部屋なのかと。
俺はどかりとソファに座った。
ファイはベッドに腰かける。
「……俺が望んだ」
静かにそう言うと、彼は俺を見て目を細めた。
「教えてもらえるのかな、その理由」
片目だけの蒼。
それは、昔、オレも見た苦痛の後だ。
それすらも懐かしいと思える俺は、ずいぶんと重症かもしれない。
「人の生き方は様々だ。
俺たちは不思議な運命のもと、願いに突き動かされ、幸にも不幸にもなる」
蒼い瞳はそらされることはない。
「……俺はここに生命を受ける前、俺と同じ魂を持つ女の代わりに、お前達とともに旅していた」
この国に生を受ける昔、俺は目の前のファイと、旅をしていた。
彼だけではない。
小僧と、姫と、それから白饅頭と旅をした。
羽を探しながら、日本国に帰るための旅を。
いろんな世界に行って、危険な目にも遭い、どんちゃん騒ぎもし、旨い酒も飲んだ。
あいつが片目を失い、小僧が消えてもう一人の小僧が現れた。
そして、あいつは殺したのだ。
小僧と、彼を庇おうとした姫を。
その挙句、自ら命を絶った。
俺と白饅頭を残して。
ーごめん……な…さい……ー
今でも時々夢に見る。
3人の屍と、青年の涙と、白饅頭の悲鳴。
全ては飛王の策略のうちだったが、姫が小僧を庇って死ぬのは予定外だったらしい。
その場で飛王は、時間を巻き戻した。
巻き戻される時間の中で、俺は願った。
青年が小僧と姫を殺さぬ未来を。
自ら命を絶つことのない未来を。
ーそれは対価が重すぎるわー
魔女の声がした。
ー代わりに願いなさい。
サクラ姫に、夢見の力が備わるようにと。
それでも、貴方の願いが確実に叶うとは約束はできない。
でも、これが今のあなたにできる精一杯よー
姫に夢見の力が備わることで何が変わるのか、俺にはわからなかった。
それでも、白饅頭が信じる魔女が言うのだ。
俺は、この女を信じる。
ー願おう。
姫にどうか夢見の力を。
……その対価はなんだ?ー
ー対価は二つ。
一つ目は、貴方が再び生命を受けるのは、日本国ではなく、また、再び繰り返される旅には加わらないということ。
二つ目は、この記憶を持って、2度目の命を生きてゆくこと。
これで足りない分はもうもらっているわー
足りない分を払ったのは誰だろうか。
アシュラ王かもしれないし、知世かもしれない。
小僧や姫の周辺の人かもしれない。
俺以外にも未来を変える罪を背負ってでも、彼らに生きてほしいと思う人がいることが、嬉しかった。
俺の望みが叶えられるかどうか、見届けることも、知ることもできないだろう。
それでも俺は、この悪夢を抱いて次の生を受ける。
この咎を背負い続ける。
未来を捻じ曲げることは、飛王の期待に添うことになるだろう。
それでも、たとえそうなることになっても、俺はあきらめられなかった。
ー分かったー
魔女は悲しげに目を細めた。
ー全ては必然。
貴方の願いも、そして貴方の命も。
これから先に出会うたくさんの人たちが、貴方を待っているー
片目を失っているのだ。
ここまでの彼が歩んできた道筋は、俺が知ったものと大差はなかったに違いない。
それが願いがかなったことになるのかも、俺には分からない。
「お前達を守れなかった。
だから、飛王は時間を巻き戻してお前たちを再び旅に出した。
そして、もう一度、きっと同じ苦しみを味あわせている。
……悪かった」
過去を知る俺としては、もう二度と味あわせたいものではなかったし、本人もそう思っていただろう。
なのに、自分の意思に関係なく再び味わわされたのだ。
しかし蒼い瞳は冷静に俺を見つめた。
「貴方が何かを願ってくれているならば、オレの過去は貴方のせいではないはずだ。
いずれにせよ、オレにはこの人生が初めてだから」
淡々とそう告げる瞳は、俺とそれ以上近づかないために、“黒鋼”と呼んでいたころとよく似ている。
(そう言えばさっき、女のことを黒鋼と呼んでいたか)
流石に同じ魂だけあって、あの女も同じ選択をしたらしい。
それがなんだか嬉しくて、口の端が上がった。
「で、オレをここに呼んだのは、謝るだけが理由?」
蒼い目は冷たく俺を見つめる。
いつまでたっても生意気な奴だ。
「てめぇらのおかげで休めねぇもう一人の俺を休ませるためだ。
そのくらい察しろ」
あの女の疲労度は、同じ魂の俺だからこそわかるかもしれない。
精神的にもかなり来ている。
何より、睡眠時間が取れないのが痛い。
一緒に旅をしていた時の俺は、気配に敏感で、異変があれば起きることができたから、眠れる時にはしっかりと寝ていた。
あの女も気配に敏感で起きれるだろうに、まるで眠れていないような顔をしていた。
もしかしたらその事に彼女自身気づいていないかもしれない。
精神的に疲弊している中、折れずに立ち続けるため、己をも無意識に騙している可能性がある。
青年は少し目を見開いてからうつむいた。
気づいていなかったのだろう。
「お前はそこで寝ろ」
俺はごろんとソファに寝転んだ。
「流石にそれは悪いよ」
「構わん」
そう言って背を向ければ、しばらくして青年がもぞもぞと動く気配があった。
「じゃあお言葉に甘えて」
うつ伏せに寝るその姿は、俺の傍にいるユゥイとは違う。
昔旅をしていたときに見たそれだった。
俺は目を閉じた。
