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男性のファイは、ユゥイと死別したと聞いた。
今までの旅で黒ちゃんがどのくらいファイの過去を知ったのか、私たちにはわからない。
だから曖昧に流すしかない。
何よりも、今日の目的は黒ちゃんにリラックスして、ゆっくり休んでもらうこと。
これから彼女は、今まで以上に大変だと、お嬢様が言っていたから。
「そんなことより!
今日は黒ちゃん女の子の日だよー。」
その言葉にぎくりと黒ちゃんの肩が上がった。
「そう!
3人で仲良く楽しく女子会だよー。」
「ちょ、ちょっと待てっ!」
戸惑う紅い瞳はそう見れるものじゃない。
なんだか楽しくなってきた。
「「待たないよー!」」
そう言って真っ黒の服を脱がせにかかる。
服の下は包帯と傷跡だらけだ。
これがなければ、引きしまったスタイルの良い綺麗な体だっただろう。
なるべく触れないようにしてひらひらのパジャマに着替えさせる。
「たまにはね!」
「そうそう、たまにはね!」
達成感溢れる笑顔に、黒ちゃんは疲れているようだ。
「「えいやっ」」
いつも二人で寝ているベッドに、黒ちゃんを押し倒す。
そして両側に私とユゥイが寝転んだ。
「ねぇ、黒ちゃん。
私たちが双子であることは知っていたの?」
「青年も双子だったと聞いたからな。」
「そっかぁ。」
「逆に聞くが、なぜお前たちは青年が双子が死んでいることを知っているんだ?」
私たちは言葉を探すように黙った。
「世の中って、必然しかないんだって、ある人が言っていたんだけど。」
「本当にそうなんだろうなって思う。」
「たくさんのことがあったんだって。」
「黒様が言っていたの。」
「私と同じ魂をもつファイと名乗る青年と、」
「旅に出ていた時代(とき)もあった、って。」
黒ちゃんは目を見開いた。
「記憶を持ってもう一度生まれることと、再び旅に出ないことが、最後に望んだ願いの対価だったんだって。」
「私たちもあまり教えてもらってはいないんだけど・・・。
ほら、もともと黒たんって口数多い方じゃないから。」
でも、黒ちゃんはきっとこの言葉だけでいくつかのことを知るだろう。
たとえば、この旅が繰り返されたものであること。
たとえば、繰返しを望まれなければ、自分が存在しないこと。
たとえば、この先に、これまでの人生を覆してでもやり直したい何かが、待っていること。
「・・・ああ。」
黒ちゃんは、静かにそううなずいた。
それ以上、何も聞かなかった。
「だからさ、今日はゆっくり休んで?」
ファイがそう言うと、黒ちゃんはようやく淡く微笑んだ。
私たちの知る黒たんよりも固いけれど、それでも、きっとそれが黒ちゃんの精いっぱいの笑顔なんだと思う。
紅い瞳は、薄い瞼に覆われていった。
左手の傷を抱きしめるように、右手が重なっている。
痛々しい傷だけれど、彼女には大事な物なのかもしれない。
静かな寝息が聞こえてきた。
黒たんは寝たふりも得意だけれど、これはちゃんと寝ているんだと思う。
今日は誰の視線も感じずに、皆が安全に寝られるから。
私とファイは目を合わせた。
ファイはどこか悲しそうな顔をしていて、それはきっと自分もなんだろうと思う。
(黒ちゃんの未来が、どうか明るくありますように。)
「奇妙な晩餐会だったねぇ。」
飄々とした風を装ってはいるが、疑問は抱いているだろう。
こんな大豪邸なのだ、客間ぐらいあるだろに、なぜ自分が、よりにも寄ってこの男と同じ部屋なのかと。
俺はどかりとソファに座った。
ファイはベッドに腰かける。
「・・・俺が望んだ。」
静かにそう言うと、彼は俺を見て目を細めた。
「教えてもらえるのかな、その理由。」
片目だけの蒼。
それは、昔、オレも見た苦痛の後だ。
それすらも懐かしいと思える俺は、ずいぶんと重症かもしれない。
「人の生き方は様々だ。
俺たちは不思議な運命のもと、願いに突き動かされ、幸にも不幸にもなる。」
蒼い瞳はそらされることはない。
「・・・俺はここに生命を受ける前、俺と同じ魂を持つ女の代わりに、お前達とともに旅していた。」
この国に生を受ける昔、俺は目の前のファイと、旅をしていた。
彼だけではない。
小僧と、姫と、それから白饅頭と旅をした。
羽を探しながら、日本国に帰るための旅を。
いろんな世界に行って、危険な目にも遭い、どんちゃん騒ぎもし、旨い酒も飲んだ。
あいつが片目を失い、小僧が消えてもう一人の小僧が現れた。
そして、あいつは殺したのだ。
小僧と、彼を庇おうとした姫を。
その挙句、自ら命を絶った。
俺と白饅頭を残して。
ーごめん・・・な・・さい・・・。ー
今でも時々夢に見る。
3人の屍と、青年の涙と、白饅頭の悲鳴。
全ては飛王の策略のうちだったが、姫が小僧を庇って死ぬのは予定外だったらしい。
その場で飛王は、時間を巻き戻した。
巻き戻される時間の中で、俺は願った。
青年が小僧と姫を殺さぬ未来を。
自ら命を絶つことのない未来を。
ーそれは対価が重すぎるわ。ー
魔女の声がした。
ー代わりに願いなさい。
サクラ姫に、夢見の力が備わるようにと。
それでも、貴方の願いが確実に叶うとは約束はできない。
でも、これが今のあなたにできる精一杯よ。ー
姫に夢見の力が備わることで何が変わるのか、俺にはわからなかった。
それでも、白饅頭が信じる魔女が言うのだ。
俺は、この女を信じる。
ー願おう。
姫にどうか夢見の力を。
・・・その対価はなんだ?ー
ー対価は二つ。
一つ目は、貴方が再び生命を受けるのは、日本国ではなく、また、再び繰り返される旅には加わらないということ。
二つ目は、この記憶を持って、2度目の命を生きてゆくこと。
これで足りない分はもうもらっているわ。ー
足りない分を払ったのは誰だろうか。
アシュラ王かもしれないし、知世かもしれない。
小僧や姫の周辺の人かもしれない。
俺以外にも未来を変える罪を背負ってでも、彼らに生きてほしいと思う人がいることが、嬉しかった。
俺の望みが叶えられるかどうか、見届けることも、知ることもできないだろう。
それでも俺は、この悪夢を抱いて次の生を受ける。
この咎を背負い続ける。
未来を捻じ曲げることは、飛王の期待に添うことになるだろう。
それでも、たとえそうなることになっても、俺はあきらめられなかった。
ー分かった。ー
魔女は悲しげに目を細めた。
ー全ては必然。
貴方の願いも、そして貴方の命も。
これから先に出会うたくさんの人たちが、貴方を待っている。ー
片目を失っているのだ。
ここまでの彼が歩んできた道筋は、俺が知ったものと大差はなかったに違いない。
それが願いがかなったことになるのかも、俺には分からない。
「お前達を守れなかった。
だから、飛王は時間を巻き戻してお前たちを再び旅に出した。
そして、もう一度、きっと同じ苦しみを味あわせている。
・・・悪かった。」
過去を知る俺としては、もう二度と味あわせたいものではなかったし、本人もそう思っていただろう。
なのに、自分の意思に関係なく再び味わわされたのだ。
しかし蒼い瞳は冷静に俺を見つめた。
「貴方が何かを願ってくれているならば、オレの過去は貴方のせいではないはずだ。
いずれにせよ、オレにはこの人生が初めてだから。」
淡々とそう告げる瞳は、俺とそれ以上近づかないために、“黒鋼”と呼んでいたころとよく似ている。
(そう言えばさっき、女のことを黒鋼と呼んでいたか。)
流石に同じ魂だけあって、あの女も同じ選択をしたらしい。
それがなんだか嬉しくて、口の端が上がった。
「で、オレをここに呼んだのは、謝るだけが理由?」
蒼い目は冷たく俺を見つめる。
いつまでたっても生意気な奴だ。
「てめぇらのおかげで休めねぇもう一人の俺を休ませるためだ。
そのくらい察しろ。」
あの女の疲労度は、同じ魂の俺だからこそわかるかもしれない。
精神的にもかなり来ている。
何より、睡眠時間が取れないのが痛い。
一緒に旅をしていた時の俺は、気配に敏感で、異変があれば起きることができたから、眠れる時にはしっかりと寝ていた。
あの女も気配に敏感で起きれるだろうに、眠れていない。
旅が過酷なのか、それとも彼女が未熟なのか。
青年は少し目を見開いてからうつむいた。
気づいていなかったのだろう。
「お前はそこで寝ろ。」
俺はごろんとソファに寝転んだ。
「流石にそれは悪いよ。」
「構わん。」
そう言って背を向ければ、しばらくして青年がもぞもぞと動く気配があった。
「じゃあお言葉に甘えて。」
うつ伏せに寝るその姿は、俺の傍にいるユゥイとは違う。
昔旅をしていたときに見たそれだった。
俺は目を閉じた。
今までの旅で黒ちゃんがどのくらいファイの過去を知ったのか、私たちにはわからない。
だから曖昧に流すしかない。
何よりも、今日の目的は黒ちゃんにリラックスして、ゆっくり休んでもらうこと。
これから彼女は、今まで以上に大変だと、お嬢様が言っていたから。
「そんなことより!
今日は黒ちゃん女の子の日だよー。」
その言葉にぎくりと黒ちゃんの肩が上がった。
「そう!
3人で仲良く楽しく女子会だよー。」
「ちょ、ちょっと待てっ!」
戸惑う紅い瞳はそう見れるものじゃない。
なんだか楽しくなってきた。
「「待たないよー!」」
そう言って真っ黒の服を脱がせにかかる。
服の下は包帯と傷跡だらけだ。
これがなければ、引きしまったスタイルの良い綺麗な体だっただろう。
なるべく触れないようにしてひらひらのパジャマに着替えさせる。
「たまにはね!」
「そうそう、たまにはね!」
達成感溢れる笑顔に、黒ちゃんは疲れているようだ。
「「えいやっ」」
いつも二人で寝ているベッドに、黒ちゃんを押し倒す。
そして両側に私とユゥイが寝転んだ。
「ねぇ、黒ちゃん。
私たちが双子であることは知っていたの?」
「青年も双子だったと聞いたからな。」
「そっかぁ。」
「逆に聞くが、なぜお前たちは青年が双子が死んでいることを知っているんだ?」
私たちは言葉を探すように黙った。
「世の中って、必然しかないんだって、ある人が言っていたんだけど。」
「本当にそうなんだろうなって思う。」
「たくさんのことがあったんだって。」
「黒様が言っていたの。」
「私と同じ魂をもつファイと名乗る青年と、」
「旅に出ていた時代(とき)もあった、って。」
黒ちゃんは目を見開いた。
「記憶を持ってもう一度生まれることと、再び旅に出ないことが、最後に望んだ願いの対価だったんだって。」
「私たちもあまり教えてもらってはいないんだけど・・・。
ほら、もともと黒たんって口数多い方じゃないから。」
でも、黒ちゃんはきっとこの言葉だけでいくつかのことを知るだろう。
たとえば、この旅が繰り返されたものであること。
たとえば、繰返しを望まれなければ、自分が存在しないこと。
たとえば、この先に、これまでの人生を覆してでもやり直したい何かが、待っていること。
「・・・ああ。」
黒ちゃんは、静かにそううなずいた。
それ以上、何も聞かなかった。
「だからさ、今日はゆっくり休んで?」
ファイがそう言うと、黒ちゃんはようやく淡く微笑んだ。
私たちの知る黒たんよりも固いけれど、それでも、きっとそれが黒ちゃんの精いっぱいの笑顔なんだと思う。
紅い瞳は、薄い瞼に覆われていった。
左手の傷を抱きしめるように、右手が重なっている。
痛々しい傷だけれど、彼女には大事な物なのかもしれない。
静かな寝息が聞こえてきた。
黒たんは寝たふりも得意だけれど、これはちゃんと寝ているんだと思う。
今日は誰の視線も感じずに、皆が安全に寝られるから。
私とファイは目を合わせた。
ファイはどこか悲しそうな顔をしていて、それはきっと自分もなんだろうと思う。
(黒ちゃんの未来が、どうか明るくありますように。)
「奇妙な晩餐会だったねぇ。」
飄々とした風を装ってはいるが、疑問は抱いているだろう。
こんな大豪邸なのだ、客間ぐらいあるだろに、なぜ自分が、よりにも寄ってこの男と同じ部屋なのかと。
俺はどかりとソファに座った。
ファイはベッドに腰かける。
「・・・俺が望んだ。」
静かにそう言うと、彼は俺を見て目を細めた。
「教えてもらえるのかな、その理由。」
片目だけの蒼。
それは、昔、オレも見た苦痛の後だ。
それすらも懐かしいと思える俺は、ずいぶんと重症かもしれない。
「人の生き方は様々だ。
俺たちは不思議な運命のもと、願いに突き動かされ、幸にも不幸にもなる。」
蒼い瞳はそらされることはない。
「・・・俺はここに生命を受ける前、俺と同じ魂を持つ女の代わりに、お前達とともに旅していた。」
この国に生を受ける昔、俺は目の前のファイと、旅をしていた。
彼だけではない。
小僧と、姫と、それから白饅頭と旅をした。
羽を探しながら、日本国に帰るための旅を。
いろんな世界に行って、危険な目にも遭い、どんちゃん騒ぎもし、旨い酒も飲んだ。
あいつが片目を失い、小僧が消えてもう一人の小僧が現れた。
そして、あいつは殺したのだ。
小僧と、彼を庇おうとした姫を。
その挙句、自ら命を絶った。
俺と白饅頭を残して。
ーごめん・・・な・・さい・・・。ー
今でも時々夢に見る。
3人の屍と、青年の涙と、白饅頭の悲鳴。
全ては飛王の策略のうちだったが、姫が小僧を庇って死ぬのは予定外だったらしい。
その場で飛王は、時間を巻き戻した。
巻き戻される時間の中で、俺は願った。
青年が小僧と姫を殺さぬ未来を。
自ら命を絶つことのない未来を。
ーそれは対価が重すぎるわ。ー
魔女の声がした。
ー代わりに願いなさい。
サクラ姫に、夢見の力が備わるようにと。
それでも、貴方の願いが確実に叶うとは約束はできない。
でも、これが今のあなたにできる精一杯よ。ー
姫に夢見の力が備わることで何が変わるのか、俺にはわからなかった。
それでも、白饅頭が信じる魔女が言うのだ。
俺は、この女を信じる。
ー願おう。
姫にどうか夢見の力を。
・・・その対価はなんだ?ー
ー対価は二つ。
一つ目は、貴方が再び生命を受けるのは、日本国ではなく、また、再び繰り返される旅には加わらないということ。
二つ目は、この記憶を持って、2度目の命を生きてゆくこと。
これで足りない分はもうもらっているわ。ー
足りない分を払ったのは誰だろうか。
アシュラ王かもしれないし、知世かもしれない。
小僧や姫の周辺の人かもしれない。
俺以外にも未来を変える罪を背負ってでも、彼らに生きてほしいと思う人がいることが、嬉しかった。
俺の望みが叶えられるかどうか、見届けることも、知ることもできないだろう。
それでも俺は、この悪夢を抱いて次の生を受ける。
この咎を背負い続ける。
未来を捻じ曲げることは、飛王の期待に添うことになるだろう。
それでも、たとえそうなることになっても、俺はあきらめられなかった。
ー分かった。ー
魔女は悲しげに目を細めた。
ー全ては必然。
貴方の願いも、そして貴方の命も。
これから先に出会うたくさんの人たちが、貴方を待っている。ー
片目を失っているのだ。
ここまでの彼が歩んできた道筋は、俺が知ったものと大差はなかったに違いない。
それが願いがかなったことになるのかも、俺には分からない。
「お前達を守れなかった。
だから、飛王は時間を巻き戻してお前たちを再び旅に出した。
そして、もう一度、きっと同じ苦しみを味あわせている。
・・・悪かった。」
過去を知る俺としては、もう二度と味あわせたいものではなかったし、本人もそう思っていただろう。
なのに、自分の意思に関係なく再び味わわされたのだ。
しかし蒼い瞳は冷静に俺を見つめた。
「貴方が何かを願ってくれているならば、オレの過去は貴方のせいではないはずだ。
いずれにせよ、オレにはこの人生が初めてだから。」
淡々とそう告げる瞳は、俺とそれ以上近づかないために、“黒鋼”と呼んでいたころとよく似ている。
(そう言えばさっき、女のことを黒鋼と呼んでいたか。)
流石に同じ魂だけあって、あの女も同じ選択をしたらしい。
それがなんだか嬉しくて、口の端が上がった。
「で、オレをここに呼んだのは、謝るだけが理由?」
蒼い目は冷たく俺を見つめる。
いつまでたっても生意気な奴だ。
「てめぇらのおかげで休めねぇもう一人の俺を休ませるためだ。
そのくらい察しろ。」
あの女の疲労度は、同じ魂の俺だからこそわかるかもしれない。
精神的にもかなり来ている。
何より、睡眠時間が取れないのが痛い。
一緒に旅をしていた時の俺は、気配に敏感で、異変があれば起きることができたから、眠れる時にはしっかりと寝ていた。
あの女も気配に敏感で起きれるだろうに、眠れていない。
旅が過酷なのか、それとも彼女が未熟なのか。
青年は少し目を見開いてからうつむいた。
気づいていなかったのだろう。
「お前はそこで寝ろ。」
俺はごろんとソファに寝転んだ。
「流石にそれは悪いよ。」
「構わん。」
そう言って背を向ければ、しばらくして青年がもぞもぞと動く気配があった。
「じゃあお言葉に甘えて。」
うつ伏せに寝るその姿は、俺の傍にいるユゥイとは違う。
昔旅をしていたときに見たそれだった。
俺は目を閉じた。
