僕らの季節
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ー清明ー
4月5日頃。万物が清々しく明るく美しいころ。ーーWikipedia
秋が過ぎれば冬が来る。そして冬を耐えればまた春が。
頻繁に合戦場になるそこにも、やはり春が訪れていた。だがやはり惨殺の跡は変わらない。季節が巡るのと同じくらい、人が争うのも摂理なのだと諦めながら、揺れる綿毛に似た頭を探す。
(やっぱり来た)
手を振ろうとして、その隣に立つ大人に固まる。2人は気にせず私の前までやってきた。そして少年はひったくるように私の頭巾を取る。
「なにするの!!」
「兄妹ですか?2人とも綺麗な銀髪ですね」
「違うと思うぜ。おい、行くぞ」
繰り広げられる会話についていけない。
「行くって……?」
掠れた声は酷く心許ない。私と同じ銀髪の少年が眠そうな目を向けた。
「こいつが養ってくれるって」
「嘘よ、私は」
「びびってんのか」
「こんな時代に孤児を養うなんて馬鹿か悪人よ」
「馬鹿がつく程のお人好しなんだよ」
「裕福にも見えないのに子どもを助ける?そんなことありえない」
「だから馬鹿なんだって」
「聞いていれば人のことを馬鹿馬鹿と、君達とは」
降ってきた溜息に身体を固くして、すぐに逃げられるように片足を引いた。
「私は寺子屋で子ども達に手習いを教えています。君をただで養うつもりは勿論ありませんよ。炊事洗濯、畑の管理も頼みたいし野菜の販売も。使いも頼みますし教室の掃除だって。
ね、お互い悪い話じゃない」
「でも」
孤児の暮らしは楽じゃない。町で身を寄せ合って暮らしており、頼ってくれる幼子もいる。彼らを置いては。
「行けないよ」
「町の孤児は忘れろ」
「無理よ、私の帰りを待っているのに」
「すぐ忘れるさ。お前だって仲間が消えた時はそうしてきたはずだ。消息を辿る程の余裕は奴等にない」
「だからって私1人楽をするのは」
「楽をするわけじゃない」
再び降ってきた声に、その人を見上げる。
「君は責任を負うのです。彼らのような孤児を救う未来を作る重荷を。私と共に」
春の暖かい日差しの中で見るその人は、あまりに眩しい。
私は少しだけ考えてから、いいわ、と言った。
「吉田松陽です。君は?」
「咲。……貴方は?」
「おや、名前を知らないんですか」
私と松陽二人の視線を受けて、少年は少し気まずそうに言った。
「……銀時だ」
4月5日頃。万物が清々しく明るく美しいころ。ーーWikipedia
秋が過ぎれば冬が来る。そして冬を耐えればまた春が。
頻繁に合戦場になるそこにも、やはり春が訪れていた。だがやはり惨殺の跡は変わらない。季節が巡るのと同じくらい、人が争うのも摂理なのだと諦めながら、揺れる綿毛に似た頭を探す。
(やっぱり来た)
手を振ろうとして、その隣に立つ大人に固まる。2人は気にせず私の前までやってきた。そして少年はひったくるように私の頭巾を取る。
「なにするの!!」
「兄妹ですか?2人とも綺麗な銀髪ですね」
「違うと思うぜ。おい、行くぞ」
繰り広げられる会話についていけない。
「行くって……?」
掠れた声は酷く心許ない。私と同じ銀髪の少年が眠そうな目を向けた。
「こいつが養ってくれるって」
「嘘よ、私は」
「びびってんのか」
「こんな時代に孤児を養うなんて馬鹿か悪人よ」
「馬鹿がつく程のお人好しなんだよ」
「裕福にも見えないのに子どもを助ける?そんなことありえない」
「だから馬鹿なんだって」
「聞いていれば人のことを馬鹿馬鹿と、君達とは」
降ってきた溜息に身体を固くして、すぐに逃げられるように片足を引いた。
「私は寺子屋で子ども達に手習いを教えています。君をただで養うつもりは勿論ありませんよ。炊事洗濯、畑の管理も頼みたいし野菜の販売も。使いも頼みますし教室の掃除だって。
ね、お互い悪い話じゃない」
「でも」
孤児の暮らしは楽じゃない。町で身を寄せ合って暮らしており、頼ってくれる幼子もいる。彼らを置いては。
「行けないよ」
「町の孤児は忘れろ」
「無理よ、私の帰りを待っているのに」
「すぐ忘れるさ。お前だって仲間が消えた時はそうしてきたはずだ。消息を辿る程の余裕は奴等にない」
「だからって私1人楽をするのは」
「楽をするわけじゃない」
再び降ってきた声に、その人を見上げる。
「君は責任を負うのです。彼らのような孤児を救う未来を作る重荷を。私と共に」
春の暖かい日差しの中で見るその人は、あまりに眩しい。
私は少しだけ考えてから、いいわ、と言った。
「吉田松陽です。君は?」
「咲。……貴方は?」
「おや、名前を知らないんですか」
私と松陽二人の視線を受けて、少年は少し気まずそうに言った。
「……銀時だ」