企画 ー節分ー
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近くで戦があったと噂を聞いて、咲は町から続く一本道を進んでいた。
頻繁に合戦場となるそこに行くのは初めてではない。
戦時中の貧しい町の孤児は盗みだけでは食べていけない時もある。
屍を漁る事もないわけではなかったが、避けたい事ではあった。
だが今日の目的は別だ。
季節は2月。
寒さが身に堪える。
咲の鼻も頬も指先も、真っ赤だ。
着いた合戦場は寒さ故、見た目ほど臭いは酷くない。
降り始めた雪に、空を見上げる。
そして少しだけ勇気を出して、白髪の後ろ姿に声をかけた。
見かけるのは3度目だ。
「何してるの?」
「・・・食い物さがしてる。」
鳥の巣頭は振り返る事なく、ボサッとした声で答えた。
(なんだ、ただの子どもじゃない。
誰よ、屍を食う鬼だなんて言ったの。)
ほっと息を吐き出す。
白いそれは冷たい風に乗って消えた。
「今日は節分よ、町にくればいいのに。」
少年は要領を得ないというような顔をして振り返った。
「知らないの?今日が節分だって。」
「・・・てめぇ馬鹿にしてんのか。」
「ええ。損してるわよ。」
「どういうことだよ。」
「今日は『鬼は外、福は内』って煎り大豆を撒いて、厄除けを行うの。
柊鰯も飾るから、ここを漁るよりよっぽど効率よく食べ物が手に入るわ。」
偉そうに言ってから手に抱えていた風呂敷を少し上げて見せる。
「分けてあげる。」
近くの草の上に腰を下ろす。
のそりと横に座る少年の手に、拾い集めた大豆や盗んだ鰯の頭を目一杯持たせてやると、初めて表情が変わった。
「おいこれ」
「鰯の頭は固くて苦いけど食べられないことはないわ。」
おまけに口に鰯を突っ込んでやる。
「町はここより楽よ。他にも孤児もいる。」
「いらねーよ、餓鬼なんかただのお荷物じゃねーか。」
彼は渋い顔をして言った。
「荷物でもほら」
距離を詰めて肩をくっつける。
「温かいのよ。」
驚いた顔がおもしろくて声を上げて笑う。
「明日は立春。寒い冬が終わる。」
「一日で何も変わらねェよ。」
やはりただの馬鹿な子どもだと思う。
「気持ちよ。死にたくないでしょ。」
彼は黙って大豆を口一杯頬張った。
*創作時の決まり事
テーマは節分/1,000文字以内
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
テーマは【節分】。
実は【 whimsy room 】(閉鎖されました)の銀木セイ様との『創作力を上げよう企画』の第一弾です。
(銀木さまの企画ページは こちら )
今後はこのお話に条件を付けて交換し、お互いが自分なりに相手の作品を書き換えていく予定です。
企画自体が手探りの上、どこまで出来るかは分かりませんが、とにかく楽しみながらと思っております。
宜しければお付き合いくださいませ。
頻繁に合戦場となるそこに行くのは初めてではない。
戦時中の貧しい町の孤児は盗みだけでは食べていけない時もある。
屍を漁る事もないわけではなかったが、避けたい事ではあった。
だが今日の目的は別だ。
季節は2月。
寒さが身に堪える。
咲の鼻も頬も指先も、真っ赤だ。
着いた合戦場は寒さ故、見た目ほど臭いは酷くない。
降り始めた雪に、空を見上げる。
そして少しだけ勇気を出して、白髪の後ろ姿に声をかけた。
見かけるのは3度目だ。
「何してるの?」
「・・・食い物さがしてる。」
鳥の巣頭は振り返る事なく、ボサッとした声で答えた。
(なんだ、ただの子どもじゃない。
誰よ、屍を食う鬼だなんて言ったの。)
ほっと息を吐き出す。
白いそれは冷たい風に乗って消えた。
「今日は節分よ、町にくればいいのに。」
少年は要領を得ないというような顔をして振り返った。
「知らないの?今日が節分だって。」
「・・・てめぇ馬鹿にしてんのか。」
「ええ。損してるわよ。」
「どういうことだよ。」
「今日は『鬼は外、福は内』って煎り大豆を撒いて、厄除けを行うの。
柊鰯も飾るから、ここを漁るよりよっぽど効率よく食べ物が手に入るわ。」
偉そうに言ってから手に抱えていた風呂敷を少し上げて見せる。
「分けてあげる。」
近くの草の上に腰を下ろす。
のそりと横に座る少年の手に、拾い集めた大豆や盗んだ鰯の頭を目一杯持たせてやると、初めて表情が変わった。
「おいこれ」
「鰯の頭は固くて苦いけど食べられないことはないわ。」
おまけに口に鰯を突っ込んでやる。
「町はここより楽よ。他にも孤児もいる。」
「いらねーよ、餓鬼なんかただのお荷物じゃねーか。」
彼は渋い顔をして言った。
「荷物でもほら」
距離を詰めて肩をくっつける。
「温かいのよ。」
驚いた顔がおもしろくて声を上げて笑う。
「明日は立春。寒い冬が終わる。」
「一日で何も変わらねェよ。」
やはりただの馬鹿な子どもだと思う。
「気持ちよ。死にたくないでしょ。」
彼は黙って大豆を口一杯頬張った。
*創作時の決まり事
テーマは節分/1,000文字以内
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テーマは【節分】。
実は【 whimsy room 】(閉鎖されました)の銀木セイ様との『創作力を上げよう企画』の第一弾です。
(銀木さまの企画ページは こちら )
今後はこのお話に条件を付けて交換し、お互いが自分なりに相手の作品を書き換えていく予定です。
企画自体が手探りの上、どこまで出来るかは分かりませんが、とにかく楽しみながらと思っております。
宜しければお付き合いくださいませ。
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