隠れ家
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食事を持って部屋を訪れる。
中でその人は本を読み漁っていた。
「面白いですか?」
声をかけられるまで気づかなかったのだろう。
驚いた顔をして振り返る。
傷は水樹が治療したから確かだ。
あの子は決意も硬く、努力を怠らない。
良い医者になるだろう。
「どうやってこれだけの本を?
国学、詩歌、地理、医学書だけに留まらない。
天人の本まで。」
早口でそう問いかける彼は、その蔵書に相当興奮しているらしい。
足を引きずりながら書棚の間を進む様子に思わず苦笑が漏れる。
学問に強い興味があるらしい。
(そうだ、私の知る桂 もそんな男だった。
才に溢れ、努力を怠ることなく、多くに興味を示し、また吸収した。)
懐かしい弟分に思いを馳せる。
雰囲気は私の知る人とは少し異なるようだ。
歳も私と同じか、やや上ではないかと感じる。
だが、心根というか、根本的なところは何1つ変わらないのではないだろうか。
(きっと目の前のこの男が、この世界の桂 に違いない。)
「何事にも自然と集まる場所がある。
繁盛する店然り、人望を得る英雄然り。
ここもまた、本が集まる場所だったのでしょう。」
「お前は変わっているな。」
「真選組に追われるような貴方ほどではありません。」
「そんなお尋ね者を匿うのだ、お前も大概だ。」
「気の済むまでお読みなさい。
傷が治らねば出て行けないでしょう。」
「何を企んでいる。」
不意に声のトーンが下がった。
その様子に、自分が疑われているにも関わらず懐かしさを覚え、思わず微笑む。
「抜け出してくださっても結構ですよ。
こちらは人の命を救いたかっただけです。」
「何を善人ぶっている。」
こうして時折刃物のような鋭さを見せるところも、似ているのだ。
私の知る桂ーー桂小次郎 に。
「ここは学び舎。
人間がいかに生きていくかを学ぶところです。
私は先生と呼ばれる以上、子どもらの模範とならねばなりません。」
相手はかすかに目を見開いた。
私は部屋の片隅に置かれた机に持ってきた食事を置いた。
「毒かと心配なさるなら食べなくて結構。
ここに住み込んでいる子らと作った食事です。」
男はちらとそれを見てからすぐにまたじっと私を見つめた。
「貴様は何者だ。」
「人に名を尋ねるときは自分を名を名乗るものと、教えられませんでしたか。」
「・・・桂だ。
桂小太郎。」
やはり弟分とはと少しだけ名前が違うらしい。
この世界は私が生きてきた世界と似ているように見えて、少しだけ違う。
「吉田松影 です。」
桂は目を見開いた。
理由にはもちろん心当たりがある。
(彼はおそらく、あの人に師事していた。)
この部屋の片隅にある本、「留魂録」。
それは私が獄中で死を覚悟した際に書き記したものと、酷似していた。
中でその人は本を読み漁っていた。
「面白いですか?」
声をかけられるまで気づかなかったのだろう。
驚いた顔をして振り返る。
傷は水樹が治療したから確かだ。
あの子は決意も硬く、努力を怠らない。
良い医者になるだろう。
「どうやってこれだけの本を?
国学、詩歌、地理、医学書だけに留まらない。
天人の本まで。」
早口でそう問いかける彼は、その蔵書に相当興奮しているらしい。
足を引きずりながら書棚の間を進む様子に思わず苦笑が漏れる。
学問に強い興味があるらしい。
(そうだ、私の知る
才に溢れ、努力を怠ることなく、多くに興味を示し、また吸収した。)
懐かしい弟分に思いを馳せる。
雰囲気は私の知る人とは少し異なるようだ。
歳も私と同じか、やや上ではないかと感じる。
だが、心根というか、根本的なところは何1つ変わらないのではないだろうか。
(きっと目の前のこの男が、この世界の
「何事にも自然と集まる場所がある。
繁盛する店然り、人望を得る英雄然り。
ここもまた、本が集まる場所だったのでしょう。」
「お前は変わっているな。」
「真選組に追われるような貴方ほどではありません。」
「そんなお尋ね者を匿うのだ、お前も大概だ。」
「気の済むまでお読みなさい。
傷が治らねば出て行けないでしょう。」
「何を企んでいる。」
不意に声のトーンが下がった。
その様子に、自分が疑われているにも関わらず懐かしさを覚え、思わず微笑む。
「抜け出してくださっても結構ですよ。
こちらは人の命を救いたかっただけです。」
「何を善人ぶっている。」
こうして時折刃物のような鋭さを見せるところも、似ているのだ。
私の知る桂ーー
「ここは学び舎。
人間がいかに生きていくかを学ぶところです。
私は先生と呼ばれる以上、子どもらの模範とならねばなりません。」
相手はかすかに目を見開いた。
私は部屋の片隅に置かれた机に持ってきた食事を置いた。
「毒かと心配なさるなら食べなくて結構。
ここに住み込んでいる子らと作った食事です。」
男はちらとそれを見てからすぐにまたじっと私を見つめた。
「貴様は何者だ。」
「人に名を尋ねるときは自分を名を名乗るものと、教えられませんでしたか。」
「・・・桂だ。
桂小太郎。」
やはり弟分とはと少しだけ名前が違うらしい。
この世界は私が生きてきた世界と似ているように見えて、少しだけ違う。
「吉田
桂は目を見開いた。
理由にはもちろん心当たりがある。
(彼はおそらく、あの人に師事していた。)
この部屋の片隅にある本、「留魂録」。
それは私が獄中で死を覚悟した際に書き記したものと、酷似していた。