黒紅
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
戸が開く音がして目を覚ました。
一瞬ここがどこだかわからなくなったが、すぐに昨日のことを思い出す。
「お加減はいかがです?」
入ってきた人ーー松影が問いかける。
「ありがとうございます。
だいぶ良いです。」
体を起こしてそう答えると、昨日と同じく穏やかに微笑まれた。
助けられて松影の家にやってきたが、傷のせいで昨晩発熱してしまったのだ。
ー部屋は余っていますから、ゆっくり休んで行きなさい。ー
松影の有難い言葉に頷くしかなかった。
「それは良かった。
食べられそうですか?」
彼の手にあった盆にはお粥が湯気を立てている。
それを見た途端、空腹を感じるから不思議だ。
表情からそれを悟ったのであろう、松影はその盆を布団のそばに下ろし、器と匙を渡した。
「かたじけない。」
それを受け取る際に手が触れ合う。
その時ようやく気づいた。
昨日も熱を診る為、治療の為、松陰は自分に幾度も触れた。
だが自分はどうだ。
男に触れられたと言うのに、何も感じない。
思案気な僕に、松影は首を傾げる。
「いかがなさいました?
お粥はお嫌いですか?」
ほっそりとした手は剣を握るのが意外なくらいだ。
整ったその骨格は、自分と同じ。
はっと顔を上げる。
「まさか、女・・・っ!」
溢れんばかりに見開いた瞳に、松影は特に困る風でもなく、微笑む。
「そうですね。
・・・貴女も。」
初めて顔を見合わせた時に感じた親近感の正体を知り、思わず椀を強く握る。
「どうして、どうして男の姿を!?」
思わず食いつくように問いかければ、松影はくすりと笑った。
「落ち着きなさい、傷が開いては元も子もありません。」
諭されて慌てて居直る。
「お話は貴方の身体が回復してからでも遅くはない。
まずはゆっくりやすみなさい。」
慈しみを込めて頭を撫でられ、思わず俯く。
祖母以外女っ気のない家で育ったためか、穏やかな彼女の存在はあまりにくすぐったい。
「は、い。」
小さく返事をしてから、慌てて手の中の粥を食べ始める。
その様子に松影は声を押し殺して笑う。
「何も急ぐ必要はありませんよ、ゆっくりなさい。」
一瞬ここがどこだかわからなくなったが、すぐに昨日のことを思い出す。
「お加減はいかがです?」
入ってきた人ーー松影が問いかける。
「ありがとうございます。
だいぶ良いです。」
体を起こしてそう答えると、昨日と同じく穏やかに微笑まれた。
助けられて松影の家にやってきたが、傷のせいで昨晩発熱してしまったのだ。
ー部屋は余っていますから、ゆっくり休んで行きなさい。ー
松影の有難い言葉に頷くしかなかった。
「それは良かった。
食べられそうですか?」
彼の手にあった盆にはお粥が湯気を立てている。
それを見た途端、空腹を感じるから不思議だ。
表情からそれを悟ったのであろう、松影はその盆を布団のそばに下ろし、器と匙を渡した。
「かたじけない。」
それを受け取る際に手が触れ合う。
その時ようやく気づいた。
昨日も熱を診る為、治療の為、松陰は自分に幾度も触れた。
だが自分はどうだ。
男に触れられたと言うのに、何も感じない。
思案気な僕に、松影は首を傾げる。
「いかがなさいました?
お粥はお嫌いですか?」
ほっそりとした手は剣を握るのが意外なくらいだ。
整ったその骨格は、自分と同じ。
はっと顔を上げる。
「まさか、女・・・っ!」
溢れんばかりに見開いた瞳に、松影は特に困る風でもなく、微笑む。
「そうですね。
・・・貴女も。」
初めて顔を見合わせた時に感じた親近感の正体を知り、思わず椀を強く握る。
「どうして、どうして男の姿を!?」
思わず食いつくように問いかければ、松影はくすりと笑った。
「落ち着きなさい、傷が開いては元も子もありません。」
諭されて慌てて居直る。
「お話は貴方の身体が回復してからでも遅くはない。
まずはゆっくりやすみなさい。」
慈しみを込めて頭を撫でられ、思わず俯く。
祖母以外女っ気のない家で育ったためか、穏やかな彼女の存在はあまりにくすぐったい。
「は、い。」
小さく返事をしてから、慌てて手の中の粥を食べ始める。
その様子に松影は声を押し殺して笑う。
「何も急ぐ必要はありませんよ、ゆっくりなさい。」