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(まずいな。)
気配にできる限りの気を配り、残された片目に入る血を拭おうと片手を剣から離す。
すると予想通りそのタイミングを狙って剣戟に襲われ、咄嗟に受け止める。
その結果、血が目に入って視界が効かない。
(諦めてはいけない、戦わねば・・・)
敵の数はあと3人だ。
他にいた男達は全て切り捨てた。
「ここまでだ、柳生の坊主。
残念だったな。」
小馬鹿にしたような声が鍔迫り合いをする男から聞こえた。
(僕は、誰よりも強くなって帰ると決めた。
ーー二言はない。)
先日別の場所で足に受けた傷が思いの外深く、いつものような速さが出せないところを狙われたのが悪かった。
だがそんな言い訳をしたところで、現状が変わるわけでもないし、いつどんな時であろうと強くあろうと思う己の目標に反する。
(負けない!)
神経を集中させ、男を突き放そうと力を入れた時だった。
急に手が軽くなる。
同時に鍔迫り合いをしていた男が悲鳴をあげて倒れた。
「子ども相手に大人が寄ってたかってなにをしているのです。」
静かな、だがひどく威圧感のある声だと思った。
その一瞬で目を拭うと、こちらに背を向ける形で着物姿の黒い長髪の男がいた。
すらりとした背で、右手には刀を握っている。
「なんだてめぇ。」
別の男が凄みを聞かせて問う。
「ただの通行人、と言ったところでしょうか。」
次の瞬間、2つの悲鳴がした。
(僕と変わらないくらい・・・速い。)
3人の男は気を失い、ここにいる話のできるものは他にいなくなった。
「大丈夫ですか?」
助けてくれた男が振り返る。
整った顔立ちに、漆黒の瞳が真っ直ぐで、何処か親近感を覚える。
何かが、似ている気がした。
「ありがとうございます。」
男は近づいてきて手拭いを懐から取り出す。
「額の傷を取りあえず見ましょう。」
そっと前髪をかきあげ、傷に触れないよう血を拭き取ったようだ。
「深くはありませんが、手当がいりますね。
化膿するとよくありません。
家はすぐそこです、いらっしゃい。」
「ですが、」
「利き足である右足の傷の治療も不完全なようだ。
傷が開いたかも知れません。」
そこまで気づかれているとは思っておらず、思わず目を見開く。
「僕は柳生九兵衛です。
・・・あなたは?」
「成る程、あなたが・・・」
男は少し驚いたような顔をしてから穏やかに微笑んだ。
「私は吉田松影。
寺子屋で子どもに手習いを教えています。」
気配にできる限りの気を配り、残された片目に入る血を拭おうと片手を剣から離す。
すると予想通りそのタイミングを狙って剣戟に襲われ、咄嗟に受け止める。
その結果、血が目に入って視界が効かない。
(諦めてはいけない、戦わねば・・・)
敵の数はあと3人だ。
他にいた男達は全て切り捨てた。
「ここまでだ、柳生の坊主。
残念だったな。」
小馬鹿にしたような声が鍔迫り合いをする男から聞こえた。
(僕は、誰よりも強くなって帰ると決めた。
ーー二言はない。)
先日別の場所で足に受けた傷が思いの外深く、いつものような速さが出せないところを狙われたのが悪かった。
だがそんな言い訳をしたところで、現状が変わるわけでもないし、いつどんな時であろうと強くあろうと思う己の目標に反する。
(負けない!)
神経を集中させ、男を突き放そうと力を入れた時だった。
急に手が軽くなる。
同時に鍔迫り合いをしていた男が悲鳴をあげて倒れた。
「子ども相手に大人が寄ってたかってなにをしているのです。」
静かな、だがひどく威圧感のある声だと思った。
その一瞬で目を拭うと、こちらに背を向ける形で着物姿の黒い長髪の男がいた。
すらりとした背で、右手には刀を握っている。
「なんだてめぇ。」
別の男が凄みを聞かせて問う。
「ただの通行人、と言ったところでしょうか。」
次の瞬間、2つの悲鳴がした。
(僕と変わらないくらい・・・速い。)
3人の男は気を失い、ここにいる話のできるものは他にいなくなった。
「大丈夫ですか?」
助けてくれた男が振り返る。
整った顔立ちに、漆黒の瞳が真っ直ぐで、何処か親近感を覚える。
何かが、似ている気がした。
「ありがとうございます。」
男は近づいてきて手拭いを懐から取り出す。
「額の傷を取りあえず見ましょう。」
そっと前髪をかきあげ、傷に触れないよう血を拭き取ったようだ。
「深くはありませんが、手当がいりますね。
化膿するとよくありません。
家はすぐそこです、いらっしゃい。」
「ですが、」
「利き足である右足の傷の治療も不完全なようだ。
傷が開いたかも知れません。」
そこまで気づかれているとは思っておらず、思わず目を見開く。
「僕は柳生九兵衛です。
・・・あなたは?」
「成る程、あなたが・・・」
男は少し驚いたような顔をしてから穏やかに微笑んだ。
「私は吉田松影。
寺子屋で子どもに手習いを教えています。」