隠れ家
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松影や子ども達と共に夕食をとり、部屋に戻る。
誰もいない空間が妙に寒々しく感じる。
(不思議なものだ)
机の前に腰を下ろし、墨を磨る。
その音は昔から、己を律し、心に使命を引き起こす。
微かな物音が戸の向こうでした。
「桂さん」
「どうぞ」
俺の返事に戸が静かに開き、松影が入ってきた。
片手に薬箱と風呂敷を持っている。
「先程はありがとうございました。
子ども達も楽しかったようです」
「世話になっているのはこちらだ。
礼を言わねばならんのも、俺の方だ」
そう言えば松影は微笑み頭を横に振った。
「全ては私の我儘ですから。
動かれたので、傷が心配になって参りました。
包帯はずれませんでしたか?」
始めの一言が少し気にはなったが、深入りはしない。
「何心配はいらん。
小さいのに良い医者だ」
「その言葉がまた、水樹を育てるでしょう」
松影は風呂敷を解いた。
中には俺が逃げ込んだときに着ていた着物と刀が入っている。
「洗濯をしておきました」
「かたじけない。
実に世話になった」
不自然なほどであると、言外に匂わせてちらりと松影の表情を伺う。
それがわからぬ相手ではない。
「申した通り、ここは学び舎。
私は先生と呼ばれる以上、模範とならねばなりません。
子ども達が後悔しないような、模範に。」
「まるで随分と後悔を抱えているような言い様だな」
松影は小さく笑った。
「貴方も後悔のひとつやふたつ、あることでしょう」
思わず視線を落とす。
思い出すのは目の前で吹き出す鮮血。
ーー彼の言う通りだ。
参戦した者は誰しも、後悔と懺悔を抱えて生きている。
ふと頬に温かいものが触れ、視線を上げると松影がいた。
そのどこか苦しげで、切ない瞳が妙に心を揺さ振る。
「松影……」
思わず彼の名 を呟いた。
「お前はそう見えて神経をすり減らしているところがある。
あまり無理をしてはいけませんよ」
その言葉に動揺して、うっかり頷いてしまった。
誰一人、あの銀時達でさえ気付いていないであろう私の心の内を、なぜこの人は知っているのだろうかと。
この人の前ではこんな事ばかりだ。
触れた手の温もりまでもが、懐かしい人と同じ様な錯覚を抱く。
それでいてその柔らかさは、記憶にある先生とは少し違うと、思った。
まるで、女のようだ、と。
誰もいない空間が妙に寒々しく感じる。
(不思議なものだ)
机の前に腰を下ろし、墨を磨る。
その音は昔から、己を律し、心に使命を引き起こす。
微かな物音が戸の向こうでした。
「桂さん」
「どうぞ」
俺の返事に戸が静かに開き、松影が入ってきた。
片手に薬箱と風呂敷を持っている。
「先程はありがとうございました。
子ども達も楽しかったようです」
「世話になっているのはこちらだ。
礼を言わねばならんのも、俺の方だ」
そう言えば松影は微笑み頭を横に振った。
「全ては私の我儘ですから。
動かれたので、傷が心配になって参りました。
包帯はずれませんでしたか?」
始めの一言が少し気にはなったが、深入りはしない。
「何心配はいらん。
小さいのに良い医者だ」
「その言葉がまた、水樹を育てるでしょう」
松影は風呂敷を解いた。
中には俺が逃げ込んだときに着ていた着物と刀が入っている。
「洗濯をしておきました」
「かたじけない。
実に世話になった」
不自然なほどであると、言外に匂わせてちらりと松影の表情を伺う。
それがわからぬ相手ではない。
「申した通り、ここは学び舎。
私は先生と呼ばれる以上、模範とならねばなりません。
子ども達が後悔しないような、模範に。」
「まるで随分と後悔を抱えているような言い様だな」
松影は小さく笑った。
「貴方も後悔のひとつやふたつ、あることでしょう」
思わず視線を落とす。
思い出すのは目の前で吹き出す鮮血。
ーー彼の言う通りだ。
参戦した者は誰しも、後悔と懺悔を抱えて生きている。
ふと頬に温かいものが触れ、視線を上げると松影がいた。
そのどこか苦しげで、切ない瞳が妙に心を揺さ振る。
「松影……」
思わず
「お前はそう見えて神経をすり減らしているところがある。
あまり無理をしてはいけませんよ」
その言葉に動揺して、うっかり頷いてしまった。
誰一人、あの銀時達でさえ気付いていないであろう私の心の内を、なぜこの人は知っているのだろうかと。
この人の前ではこんな事ばかりだ。
触れた手の温もりまでもが、懐かしい人と同じ様な錯覚を抱く。
それでいてその柔らかさは、記憶にある先生とは少し違うと、思った。
まるで、女のようだ、と。