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包帯を変える間にどこからともなく聞こえてくる子供達の声に、ふと顔を上げた。
「私の家は寺子屋を兼ねていますから、騒がしくてすみません。」
「いや、賑やかでいいですね。
僕も実家が道場で賑やかだったので。」
そういうと、なるほど、と松影は頷いた。
「柳生の道場ですか?」
「はい、うちを知っているんですか?」
松影は少し考えてから、首を横に振った。
「・・・聞いたことがあるだけです。
とてもお強いそうですね。」
「祖父や父は本当にお強いが、僕はまだまだ。
修行の旅に出ているのだが、こうしてあなたに助けられてしまいました。
・・・そうだ、なにか助けてもらったお礼がしたいのですが、何かできることは?」
「ではせっかく柳生の道場の方が来られたのです。
傷が治ったら子どもに手解きをお願いしたいですね。
よろしいでしょうか?」
松影の言葉に、思わず微笑んで頷いた。
「もちろん。」
「くっそ!!」
吹き飛ばされた少年が僕を睨む。
継当てだらけの着物は貧しさを感じさせるが、彼の剣の腕に正直驚いていた。
「いや、その歳でそれだけ剣を使えれば充分だ。
よく鍛練を積んでいるな。」
「褒められても嬉しかねぇ!
もう一本!」
「代われ龍之介!
順番だろう。」
髪に緩く癖のある少年が竹刀を持ってやって来てその肩を叩く。
「チッ!」
少年は舌打ちをして交代した。
「水樹じゃ無理だぜ!」
「僕は勝ちたいというより強くなりたいんだ。」
水樹と呼ばれた少年は深く頭を下げた。
「よろしくお願いします。」
(まだ幼いのに芯のある子だ)
好感の持てる子だと一つ頷く。
「うん。
何処からでもかかっておいで。」
「では。」
水樹は構えを取ると駆け出す。
その速いこと。
あっという間に竹刀がぶつかり合い、音が響く。
その一撃も、さる事ながら防がれたと知ってすぐに引き、また新たな一撃を打ち込むスピードもこの歳の子とは思い難い。
この寺子屋の子は皆、年の割に強いと感じていた。
悔しいが自分の道場に通う子らとは比べ物にならない。
本人らの素質ももちろんあるだろう。
(だがまず、師が良いのだろう。)
木陰の人影をちらりと見る。
(不思議な人だ。)
腕を組みながら穏やかに教え子らを眺める様子からは、剣を握るとは思い難い温和な空気がにじみ出ている。
彼女の存在が、この明るい寺子屋を作り出しているのだろう。
彼女の過去を知りたいと、純粋に思った。
「私の家は寺子屋を兼ねていますから、騒がしくてすみません。」
「いや、賑やかでいいですね。
僕も実家が道場で賑やかだったので。」
そういうと、なるほど、と松影は頷いた。
「柳生の道場ですか?」
「はい、うちを知っているんですか?」
松影は少し考えてから、首を横に振った。
「・・・聞いたことがあるだけです。
とてもお強いそうですね。」
「祖父や父は本当にお強いが、僕はまだまだ。
修行の旅に出ているのだが、こうしてあなたに助けられてしまいました。
・・・そうだ、なにか助けてもらったお礼がしたいのですが、何かできることは?」
「ではせっかく柳生の道場の方が来られたのです。
傷が治ったら子どもに手解きをお願いしたいですね。
よろしいでしょうか?」
松影の言葉に、思わず微笑んで頷いた。
「もちろん。」
「くっそ!!」
吹き飛ばされた少年が僕を睨む。
継当てだらけの着物は貧しさを感じさせるが、彼の剣の腕に正直驚いていた。
「いや、その歳でそれだけ剣を使えれば充分だ。
よく鍛練を積んでいるな。」
「褒められても嬉しかねぇ!
もう一本!」
「代われ龍之介!
順番だろう。」
髪に緩く癖のある少年が竹刀を持ってやって来てその肩を叩く。
「チッ!」
少年は舌打ちをして交代した。
「水樹じゃ無理だぜ!」
「僕は勝ちたいというより強くなりたいんだ。」
水樹と呼ばれた少年は深く頭を下げた。
「よろしくお願いします。」
(まだ幼いのに芯のある子だ)
好感の持てる子だと一つ頷く。
「うん。
何処からでもかかっておいで。」
「では。」
水樹は構えを取ると駆け出す。
その速いこと。
あっという間に竹刀がぶつかり合い、音が響く。
その一撃も、さる事ながら防がれたと知ってすぐに引き、また新たな一撃を打ち込むスピードもこの歳の子とは思い難い。
この寺子屋の子は皆、年の割に強いと感じていた。
悔しいが自分の道場に通う子らとは比べ物にならない。
本人らの素質ももちろんあるだろう。
(だがまず、師が良いのだろう。)
木陰の人影をちらりと見る。
(不思議な人だ。)
腕を組みながら穏やかに教え子らを眺める様子からは、剣を握るとは思い難い温和な空気がにじみ出ている。
彼女の存在が、この明るい寺子屋を作り出しているのだろう。
彼女の過去を知りたいと、純粋に思った。