斬魄刀異聞過去編
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
敵は確かに強かった。
3人の息は荒く、傷も多い。
そこここで火の手が上がっており、建物もかなり崩れている。
下手に体重をかけると足場になっている建物もすぐに崩れそうだ。
結界を張っているせいで熱気がこもっている。
肉が焦げた匂いや血の匂いも混じり、噎せ返るようだ。
京楽が背後を振り返り懐に一気に入りこんで脇差を敵の腹に入れようと突き出す。
相手がなんとかそれをかわす程度後退したところを、肩から太刀で袈裟がけに切り裂いた。
浅くしか斬りつけられなかったので通常ならば到底即死には至らないはずだが。
「
振り返り、汗をぬぐう浮竹がぽつりとつぶやいた。
斬られた男が気を失い、屋根の上から落ちていったからだ。
絶命したに違いない。
結界内は艶鬼の範囲になっており、色は両者とも黒を選んでいるのだ。
佇む浮竹の背後に敵が迫る。
「散在する獣の骨 尖塔・紅晶・鋼鉄の車輪 動けば風 止まれば空 槍打つ音色が虚城に満ちる破道の六十三 雷吼炮!」
咲の雷吼炮がその敵に向かって発されるが、ギリギリでかわされてしまう。
巨大な雷吼炮はそのまま浮竹に迫る。
しかし次の瞬間、逃げたはずの男の背後にその電撃が迫っていた。
そして悲鳴を上げる間も無くのみ込まれていく。
「君のもなかなかだと思うけど」
京楽も汗をぬぐいながらぽつりとこぼす。
浮竹が咲の雷吼炮を吸収し、即刻敵に向かって発したのだ。
3人はかすり傷以外は受けていない。
とはいえ京楽の艶鬼の範囲にいる以上、死覇装をまとっている範囲の傷は、たとえかすり傷でも致命傷となりうる。
「もうひと踏ん張りだ」
咲は目に入りかけた血を拭う。
眉から額にかけてうっすらと切り裂かれただけなのに、艶鬼の効果で出血は一向に止まらず、痛みもひどい。
だが刀を持った以上、どちらも悪であることに変わりはないのだ。
それを友が許すというのだから、自分達は戦える。
敵の数は少しずつ減り、疲弊しているらしく攻撃の激しさもやや落ちてきた。
結界の外には十三番隊隊士の姿が見える。
どうやら咲達が襲われていることに気づいてくれたらしい。
それが心にいくらかの余裕を与えてくれる。
咲は咄嗟に剣を構え、重い一撃を受け止めた。
外を見ているのに気付いたのだろう。
鍔迫り合いをしていると、男がにやりと笑った。
「残念ながらこの結界はそう簡単には解けん」
「……なぜ」
男は楽しげに声をあげた。
「どうせ最期だ、教えてやろう。
鬼道衆総帥・大鬼道長である
「なんだって!?」
3人の顔が青ざめ、京楽は思わず声をあげた。
飛王は鬼道の達人。
隊長格でさえ彼の鬼道を破るのには骨が折れる。
その上、鬼道衆総帥・大鬼道長という要職の人物が反乱因子に加担していること自体、深刻な問題なのだ。
「護挺は終わり。
そして、この腐った世界も!」
どぉん
地響きがした。
明かるい方を向けば、火柱が空に向かって立ちあがっている。
「……山じぃ」
京楽がぽつりと名を呼んだ。
今までにない大きな戦いの陽動に自分たちが使われていたことに気づいたのだ。
「言っただろう。
終わりだ、今日で!」
一瞬の隙が生まれた。
背後からの敵の刀を避けきれず、咲の左肩を敵の刃が切り裂いた。
その激痛に咲は目を見開く。
身体が言うことを聞かない。
悲鳴さえあげられない。
肺が締め上げられるようで呼吸ができない。
「咲ッ!!!」
「しっかりしろ!!!」
身体の自由を失い、落ちていく咲を助けようとするも、浮竹も京楽も敵に阻まれてしまう。
(だめだ……)
重力と薄れゆく意識に必死で抗おうとするのに、指一本動かすことができない。
(ここで、負けるわけには……)
咲は激しい衝撃を受けるとともに気を失った。
「一匹ぶっ殺したぞ!!」
そう言って笑う男は一瞬で消え去った。
浮竹が放った爆発的な双蓮蒼火墜が男を襲ったのだ。
怒りのあまり、霊圧をうまくコントロールできていないことは一目でわかったが、それにしても巨大な爆発だった。
彼の霊圧は他の隊士を圧倒して高い。
早くも隊長格にも匹敵すると囁かれている。
普段は肺に影響が出ないように攻撃力を落としているのだが、どうやらその箍が外れてしまったらしい。
爆音のあまり結界が今にも割れそうなくらい激しく震えた。
瞬時に霊圧を高めた京楽は被害に遭っていないが、数名の敵は耳や目をやられ戦闘不能になっている。
京楽は浮竹を振り返った。
「あまり無茶をすると、君の身体にもよくないし……咲にも良くないよ」
とはいえ、彼の目も敵を射殺さんばかりだ。
「……許さん」
ぽつりとこぼれる浮竹の言葉に、京楽は頷くと背を向けた。
咲はぼんやりと寝転んで空を見上げていた。
真っ暗なそこは、見覚えがある。
(精神世界、だ)
のそっと身体を起こすと、鏡が2枚、目に入った。
一枚は山上の姿をした
もう一枚の方にも、見知った姿がある。
咲は驚いて駆け寄った。
「日野七席!
一体どうしてここに!?」
鏡の中で日野が片手をあげた。
しかしその目は金色だ。
「破涙贄遠?」
ーどちらでもある、と答えておくかなー
「どういうことです?」
ーオレの斬魂刀の解号は知っているなー
「はい。
ですが……なぜ?」
混乱する咲に、日野は頭を振る。
ー時間がない。
使え、役に立つはずだー
鏡の中から斬魂刀が差しだされた。
何度もみた緑の柄が鏡から現れて咲に差し出されている。
ー強くなれー
戸惑いながらも咲はそれを受け取る。
ー頼むぞー
身体がふっと宙に浮いた気がした。
真っ暗な空に、星が二つ、瞬いていた。
